退職金2000万円、一括投資は危険! 銀行員に勧められても即決NGな理由
「長い間、お仕事お疲れ様でした」 その言葉とともに振り込まれた、退職金2,000万円。
通帳に記帳された桁違いの数字を見て、安堵すると同時に、こんな不安が頭をよぎりませんか? 「このまま普通預金に置いておくだけでいいのだろうか?」 「物価も上がっているし、少しは運用して増やさないと、老後資金が足りなくなるのでは?」
そんなあなたの心の隙間に入り込むのが、長年付き合いのある銀行からの「甘い誘い」です。
「退職金を受け取られた方限定の、特別なプランがございます」 「定期預金の金利を年5%に優遇しますよ」
もし、この言葉に心が動いてしまったのなら、一度立ち止まって深呼吸をしてください。 その判子を押してしまった瞬間、あなたの虎の子の退職金は、数十万円の手数料として消えてしまう可能性があるからです。
この記事では、退職金を受け取った直後の「魔の期間」に陥りやすい罠と、なぜ一括投資が危険なのか、その理由を元銀行員の視点も交えて解説します。
![]()
1. 銀行員が笑顔で近づいてくる「本当の理由」
まず、残酷な現実をお伝えしなければなりません。 銀行の窓口に座っている担当者は、あなたの資産を守るアドバイザーである前に、「金融商品を売る営業マン」です。
彼らにとって、退職金が入ったばかりのあなたは、まさに「千載一遇のチャンス」。 なぜなら、銀行のビジネスモデルは、投資信託や保険を販売した際の「販売手数料」で利益を得る構造になっているからです。
ターゲットにされる「退職金デビュー」層
今まで投資経験がほとんどなく、退職金で初めてまとまったお金を手にした人は、銀行にとって最高のお客様(カモ)になり得ます。 「銀行さんが勧めるものなら安心だろう」という信頼感を逆手に取り、銀行にとって利益率の高い(=あなたにとって手数料が高い)商品を勧めてくる構造的な問題があるのです。
2. 絶対に契約してはいけない「退職金専用プラン」のからくり
銀行が最も熱心に勧めてくるのが、「退職金専用! 特別金利キャンペーン」といったセット商品です。
【よくあるプランの例】
-
退職金を預けてくれれば、定期預金の金利を「年5.0%」にします!
-
条件: 預け入れ金額の50%で「投資信託(または外貨建て保険)」を購入してください。
「今の時代に金利5%なんて夢みたいだ!」と飛びついてはいけません。ここには数字のトリックがあります。
トリック①:高金利は「最初の3ヶ月」だけ
「年5%」と大きく書いてありますが、適用されるのは「最初の3ヶ月のみ」というケースがほとんどです。 その後は、スズメの涙ほどの通常金利(0.002%など)に戻ります。
トリック②:投資信託の「手数料」で大赤字
セットで購入させられる投資信託には、往々にして「購入時手数料(3.3%程度)」がかかります。
【1,000万円を預けた場合のシミュレーション】
-
定期預金(500万円): 年5%で3ヶ月運用
-
利息受取額:約6.2万円(税引前)
-
-
投資信託(500万円): 手数料3.3%の商品を購入
-
支払う手数料:約16.5万円(税込)
-
【結果】 利息(6.2万円) - 手数料(16.5万円) = マイナス10.3万円
なんと、契約した瞬間に約10万円の損が確定します。 銀行は「高い金利」を餌に、「高い手数料」の商品を売ることで、確実に儲かる仕組みを作っているのです。これが「セット販売」の正体です。
3. なぜ「一括投資」は危険なのか?
「手数料の安いネット証券を使うから大丈夫」という方でも、退職金2,000万円をいきなり「一括投資」するのは危険すぎます。
理由①:退職金は「リカバリー」が効かない
現役時代なら、投資で失敗しても「働いて稼いで取り戻す」ことができました。 しかし、退職金はあなたの労働人生の結晶であり、今後二度と手に入らないお金です。これを大きく減らしてしまうと、老後の生活設計そのものが崩壊し、精神的なダメージも計り知れません。
理由②:「まさかの暴落」は明日来るかもしれない
もし、2,000万円を一括で株式ファンドに投資した翌月に、「リーマンショック級の暴落(マイナス50%)」が起きたらどうなるでしょうか? あなたの資産は一瞬で1,000万円になります。
「長期で見れば戻る」と頭では分かっていても、老後資金が半分になる恐怖に耐えられる人は稀です。狼狽して底値で売却してしまい、大切な資産を失う……これが投資初心者が陥る最悪のシナリオです。
4. 退職金を守りながら増やす「3つの鉄則」
では、退職金はどう扱えば正解なのでしょうか。 銀行の窓口には行かず、以下の3つのステップで「守り」を固めてください。
鉄則①:まずは「半年間」何もしない
退職直後は、生活リズムが変わり、金銭感覚もフワフワしています。 まずは退職金を「流動性の高い普通預金(または個人向け国債)」に入れて、半年〜1年は手を付けないでください。これを「冷却期間」と呼びます。 この間に、年金生活の収支を把握し、「本当に運用に回していいお金はいくらか」を見極めることが最優先です。
鉄則②:生活防衛資金は「現金」で確保する
2,000万円全額を運用してはいけません。
-
当面の生活費(5年分程度)
-
医療・介護への備え
-
家の修繕費
これらは「絶対に減らしてはいけないお金」です。最低でも1,000万円程度は、元本保証の定期預金や個人向け国債(変動10)で確保しましょう。
鉄則③:運用するなら「新NISA」で「時間分散」
残りの余裕資金(例えば500万〜1,000万円)を運用する場合でも、一括購入はNGです。 「新NISA(つみたて投資枠)」を活用し、月10万円〜30万円ずつ、5年〜10年かけてゆっくり投資信託を買っていきましょう。
時間を分散することで、「高値掴み」のリスクを平準化できます(ドル・コスト平均法)。 商品は、銀行が勧める手数料の高いファンドではなく、ネット証券で買える「低コストなインデックスファンド(全世界株式など)」一択です。
まとめ:退職金は「増やそう」とせず「守りながら長く使う」
退職金を手にした時、多くの人が「これを元手に増やさなきゃ」と意気込みます。 しかし、老後資産運用の正解は、「大きく勝つこと」ではなく「大きく負けないこと」です。
銀行員は「インフレ対策をしないと資産が目減りしますよ」と不安を煽ってきます。 確かにその通りですが、「高コストな商品を買って資産を減らす」方が、インフレよりもよっぽど確実で早い「資産の目減り」です。
【結論】
-
銀行からの「退職金プラン」の電話は、丁重にお断りする。
-
退職金が入っても、半年間は定期預金か国債に入れて寝かせておく。
-
運用するなら、ネット証券の新NISAで、少額からコツコツ積立を始める。
焦る必要はありません。 あなたの40年間の汗と涙の結晶である退職金。 他人(銀行)のためではなく、あなた自身の豊かな老後のために、慎重に守り抜いてください。
