タンス預金は資産目減りの原因に。インフレ時代に持つべき「守りの資産」とは
「銀行に預けても金利はつかないし、手数料を取られるだけ」 「何かあった時にすぐ使えるように、手元に現金を置いておきたい」
そう考えて、自宅の金庫やタンスの奥に、まとまった現金を保管している「タンス預金」派の方は、日本に非常に多いと言われています。 その総額は、なんと数十兆円とも言われるほどです。
これまでは、日本の物価が変わらなかった(デフレだった)ため、タンス預金は「最も安全な資産管理」の一つでした。100万円は、10年後も100万円の価値を持っていたからです。
しかし、時代は劇的に変わりました。 食料品、ガソリン、電気代……あらゆるものの値段が上がる「インフレ時代」の到来です。
インフレ下において、タンス預金は「安全資産」ではありません。 「持っているだけで、毎日少しずつ溶けていく資産」なのです。
この記事では、なぜ現金を持ち続けることがリスクになるのか、そのメカニズムを解説し、インフレ時代にあなたの資産を守るための「守りの資産運用」について提案します。
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1. 衝撃の事実:あなたの100万円は、もう100万円ではない
まず、インフレが資産に与える影響を、少し怖いですが直視してみましょう。
インフレ(インフレーション)とは、「モノの値段が上がること」です。 これを逆の視点から見ると、「お金の価値が下がること」を意味します。
「実質価値」の目減りとは?
例えば、あなたのタンスに100万円があるとします。 今、1個100円のりんごなら、1万個買えますね。
しかし、物価が上がり、りんごが1個120円になったらどうでしょうか? タンスの中の100万円という「額面」は変わりません。泥棒に入られない限り、お札は減りません。 ですが、買えるりんごの数は、約8,333個に減ってしまいます。
これが「資産の目減り」です。 何も使っていないのに、ただ置いておいただけで、実質的に1,700個分のりんご(約17万円分の価値)を失ったのと同じことなのです。
【氷の彫刻をイメージしてください】 インフレ時代の現金は、暖かい部屋に置いた「氷の彫刻」のようなものです。 見た目の形(1万円札)は保っていても、中身(買える力)はジワジワと溶け出し、小さくなっています。
2. タンス預金が抱える「インフレ以外」の3大リスク
「価値が下がるのは仕方ない。それでも銀行より手元が安心だ」 そう思われるかもしれませんが、タンス預金にはインフレ以外にも致命的なリスクがあります。
リスク①:災害で「物理的」に消滅する
日本は災害大国です。火災、洪水、地震による家屋倒壊。 銀行に預けていれば、通帳やハンコをなくしても、データが残っている限りお金は戻ってきます(ペイオフ制度で1,000万円まで保証)。 しかし、自宅の現金が燃えたり流されたりしたら、その瞬間に全財産がゼロになります。保証してくれる機関はどこにもありません。
リスク②:新紙幣発行による「あぶり出し」
2024年7月から新紙幣が発行されました。 今後、旧紙幣を大量に使い始めたり、銀行に入金しようとしたりすると、「なぜこんなに旧札があるのですか?」と不審がられ、税務署のチェック(あぶり出し)が厳しくなる可能性があります。 「隠しておきたいお金」だったとしても、結局は表に出さざるをえなくなるのです。
リスク③:相続時の「紛失・トラブル」
「家族に内緒のへそくり」が、そのまま発見されずに処分されてしまうケースが後を絶ちません。 また、遺品整理で大量の現金が出てきた場合、「誰かがこっそりポケットに入れたんじゃないか?」と遺族間の争い(争族)の火種になることもあります。
3. 目指すべきは「増やす」ではなく「守る」
では、どうすれば良いのでしょうか。 「投資をしろと言うのか? 暴落して損をするのは絶対に嫌だ」 そう思うのは当然です。
ここで提案したいのは、お金を積極的に増やす「攻めの投資」ではなく、インフレの波に合わせて資産の価値を維持する「守りの運用」です。
目標は「大儲け」ではありません。 「モノの値段が上がった分だけ、自分の資産も同じくらい増やす(購買力を維持する)」。これだけで十分なのです。
4. インフレ時代に持つべき「3つの守りの資産」
タンス預金の一部を移し替えるべき、低リスクでインフレに強い資産を3つ紹介します。
① 個人向け国債(変動10年)
これが最も安全で、タンス預金の移行先として最強の候補です。
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仕組み: 国にお金を貸して、利息をもらう。
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安全性: 元本割れなし。 国が破綻しない限り、0.05%の最低金利も保証されています。
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インフレ対応: ここが重要です。「変動10年」タイプは、世の中の金利が上がれば、もらえる利息も自動的に増えます。インフレ時には金利が上がる傾向にあるため、物価上昇についていくことができます。
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流動性: 1年経てばいつでも換金可能です。
「銀行預金より金利が良く、元本保証で、インフレにも強い」。 まさに、守りの資産の王様です。
② 金(ゴールド)
古来より「有事の金」と言われる実物資産です。
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仕組み: 金そのものの価値。
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インフレ対応: お金(紙幣)は政府がいくらでも刷れますが、金の埋蔵量は決まっています。そのため、貨幣の価値が下がる(インフレ)と、相対的に金の価格は上がる傾向にあります。
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注意点: 金自体は利息を生みません。また、価格変動があります。全財産を替えるのではなく、資産の5%〜10%程度を「保険」として金貨や純金積立で持っておくのがおすすめです。
③ 全世界株式(新NISA)
「株は怖い」と思われるかもしれませんが、長期で見れば、株式こそが最強のインフレ対策です。
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仕組み: 企業のオーナーになる。
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インフレ対応: インフレになると、企業は商品価格を値上げします。すると売上が上がり、利益が増え、株価も上がります。つまり、株式を持っていることは、値上げをする側(企業側)に回ることを意味します。
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買い方: 新NISAの「つみたて投資枠」で、「全世界株式(オール・カントリー)」などの投資信託を少しずつ買います。世界中の優良企業の成長を味方につけることで、現金の価値下落をカバーします。
5. 結論:タンス預金を「半分」移動させよう
いきなり全ての現金を投資に回す必要はありません。 まずは、タンス預金や普通預金の「半分」、あるいは「当面5年は使わないお金」を、守りの資産に移してみませんか?
例えば、1,000万円のタンス預金があるなら:
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300万円: そのままタンス預金・普通預金(緊急時の備え)
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500万円: 「個人向け国債(変動10)」へ(元本保証でインフレ対策)
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100万円: 「金(ゴールド)」へ(通貨暴落への保険)
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100万円: 「新NISA(世界株)」へ(長期的なインフレヘッジ)
このように分散させるだけで、資産の安全性は劇的に高まります。 「元本保証の国債」がメインなので、ハラハラすることもありません。
まとめ:何もしないことが、最大のリスクになる
「投資はリスクがある」と言われます。それは事実です。 しかし、インフレ時代においては、「現金のまま何もしないこと」もまた、確実にお金の価値を減らす「リスク」ある行動なのです。
大切なお金を守るために、鍵をかけた金庫に入れるだけでは不十分な時代になりました。 これからの「守り」とは、お金を外に出し、インフレという荒波に合わせて波乗りさせてあげることです。
まずは、最もハードルの低い「個人向け国債」から検討してみてはいかがでしょうか? 銀行や証券会社の窓口で「変動10を買いたい」と言えば、すぐに案内してくれます(※ただし、余計な投資信託を勧められても断ってくださいね)。
大切な「虎の子」を、溶かさずに次世代へ繋ぐために。 今日から「脱・タンス預金」を始めましょう。
