「アセットアロケーション」の見直し術。加齢とともに株式比率をどう下げるべきか
「若い頃は『株式100%』でガンガン攻めていればよかった。でも、定年が見えてきた今、このままでいいのだろうか?」
新NISAの普及で投資を始めた方も、長年積み立ててきたベテラン投資家も、50代・60代に差し掛かると共通の悩みに直面します。
それは、「守り」へのシフトチェンジです。
もし、あなたが退職金を受け取り、老後生活に入ろうとしたその年に、「リーマンショック級の大暴落」が起きたらどうなるでしょうか? 資産が半分になれば、老後のライフプランは根本から崩れ去ります。
20代・30代なら「寝て待つ」ことで回復を待てますが、取り崩し期が迫るシニア世代には、その「時間」が残されていません。
だからこそ必要なのが、加齢とともにリスク資産(株式)の比率を下げ、安全資産(債券・現金)を増やしていく「アセットアロケーション(資産配分)の見直し」です。
この記事では、あなたの資産を暴落から守り、着地させるための「株式比率の下げ方」と、年齢別の具体的な黄金比率について解説します。
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1. なぜ年齢とともに「株式」を減らす必要があるのか?
「長期投資なら、ずっと株式を持っていた方がリターンが高いはずだ」 そう考える方もいますが、シニア世代にとって最大のリスクは、リターンの低下ではなく「資産を取り崩す直前の暴落(シーケンス・オブ・リターン・リスク)」です。
暴落のダメージは「年齢」で違う
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30歳で暴落(資産-50%): 給料からの入金で安く買えるチャンス(バーゲンセール)。回復まで10年待てる。
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65歳で暴落(資産-50%): 入金力がない上に、生活費のために「安くなった株」を泣く泣く売って現金化しなければならない。
暴落時に資産を取り崩すと、資産の減少スピードが加速し、寿命が尽きる前にお金が尽きる確率が跳ね上がります。 これを防ぐために、値動きの激しい「株式」の割合を減らし、値動きの安定した「債券」や「現金」のクッションを厚くする必要があるのです。
2. 基本公式:「100 - 年齢」の法則と現代版アレンジ
昔から、適切な株式比率を決める公式として有名なのが「100 - 年齢 = 株式比率」です。
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40歳: 100 - 40 = 60%(残り40%は債券・現金)
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60歳: 100 - 60 = 40%(残り60%は債券・現金)
しかし、これは「人生80年時代」の古いルールとも言われています。 人生100年時代、かつインフレ(物価上昇)が続く現代においては、あまりに守りを固めすぎると、長生きリスクやインフレリスクに対応できません。
現代版:おすすめは「120 - 年齢」
寿命が延びた分、少し攻めの期間を長く取ります。
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50歳: 120 - 50 = 70%(株式)
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60歳: 120 - 60 = 60%(株式)
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70歳: 120 - 70 = 50%(株式)
「70歳でも半分は株?」と驚くかもしれませんが、残りの人生がまだ20年〜30年あることを考えれば、資産の一部は株式で成長させ続け、インフレに負けないようにするのが現代のスタンダードです。
3. 具体的にどうやって下げる? 3つの「着陸」テクニック
では、実際にどうやってポートフォリオの中身を入れ替えていけばよいのでしょうか。 一気に売るのではなく、以下の3つの方法で徐々に移行(グライドパス)させます。
方法①:ノーセル・リバランス(新規積立先を変える)
まだ現役で、毎月の積立を行っている50代向けの方法です。 今持っている株式を売るのではなく、「これから積み立てるお金」をすべて「安全資産(個人向け国債や預金)」に振り向けます。
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これまで: 毎月5万円で「全世界株式」を購入。
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これから: 毎月5万円を「定期預金」や「債券ファンド」へ。
こうすることで、売却益への税金を払うことなく、自然と全体の安全資産比率が高まっていきます。
方法②:リアロケーション(一気に売って買い直す)
すでに退職間近で、株式比率が高すぎる(80%以上など)場合は、外科手術が必要です。 株式ファンドの一部を売却し、その現金で「個人向け国債(変動10)」などを購入します。
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ポイント: 暴落が起きてからでは遅いです。「株価が好調な時」こそが、守りの資産へ移し替える絶好のチャンスです。
方法③:「年数」で管理する(カウチポテト・ポートフォリオ)
パーセンテージ(%)で考えるのが面倒な方におすすめの、最もシンプルな方法です。
「向こう5年〜10年分の生活費」を現金で確保し、残りは全部株にする。
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年金不足額: 月5万円 × 12ヶ月 = 年60万円
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10年分: 600万円 + 予備費(医療・介護)400万円 = 1,000万円
この「1,000万円」を現金(銀行預金・国債)でガッチリ確保できていれば、残りの資産が株式で半分になっても、当面の生活は揺らぎません。 「比率」ではなく「生活防衛資金の厚み」でリスク管理をする手法です。
4. 年代別・アセットアロケーションのモデルケース
年齢ごとの具体的な「着地点」のイメージを持ちましょう。
【40代】まだ攻め時(株式 80%:安全資産 20%)
老後まで20年以上あります。まだ「増やす」フェーズです。 基本的には株式中心でOKですが、教育費や住宅ローンの状況に合わせて、手元の現金を厚くしておきましょう。
【50代】ブレーキを踏み始める(株式 60%:安全資産 40%)
ここが運命の分かれ道です。「ラストスパートだ!」とリスクを取りすぎるのは危険です。 役職定年などで収入が減る前に、徐々に安全資産の比率を高め始めます。新NISAの成長投資枠で高配当株などを買い、フロー(現金収入)を増やすのも良いでしょう。
【60代以降】守りながら運用(株式 40〜50%:安全資産 50〜60%)
退職金が入っても、絶対に一括投資してはいけません。 現役時代の蓄えと合わせて、「現金・国債」の比率を半分以上に保ちます。 ただし、インフレ対策として株式もゼロにはせず、「全世界株式」や「バランス型ファンド」で緩やかに運用を続けます。
5. 新NISA時代の「アロケーション」注意点
ここで一つ、新NISA特有の悩みが出てきます。 「株を売りたくても、NISA口座(非課税)の株を売るのはもったいない気がする……」
その通りです。アセットアロケーションを見直す際は、「資産の置き場所(アセット・ロケーション)」も意識しましょう。
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NISA口座(非課税): 株式(一番増える可能性が高いものを置く)
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課税口座・銀行預金: 現金・債券(利益が少ないので、税金がかかっても痛くないものを置く)
安全資産を増やすために、NISA口座の株式を売る必要はありません。 「NISA口座の株はそのままガチホールドし、課税口座(特定口座)にある株を売って現金化する」、あるいは「銀行預金の比率を高める」ことで、トータルのバランスを整えましょう。
無理にNISA枠内で債券ファンドを買うのは、非課税枠の無駄遣いになることが多いので注意が必要です。
まとめ:着陸態勢に入るのは「晴れの日」に限る
飛行機が着陸する時、高度を徐々に下げていくように、資産運用もゴールに向けて「高度(リスク)」を下げていく必要があります。
最も重要なのは、「株価が暴落してから慌てて守りに入らないこと」です。 暴落時に株を売って債券にするのは、最悪の「安値売り」になります。
アセットアロケーションの見直しは、株価が堅調で、皆が浮かれている時(今のような時)に行うのが鉄則です。
「少し儲け損なうかもしれない」。 それくらいの余裕を持った配分こそが、あなたの穏やかな老後を守る防波堤となります。
