毎月分配型投信は悪なのか? 「お小遣いニーズ」に合わせた正しい付き合い方

「毎月分配型の投資信託は、金融庁も推奨していない『悪の商品』だ」 「タコ足配当で資産を食いつぶすだけの、情弱(情報弱者)向け商品だ」

ネットや投資の教科書を見ると、毎月分配型投信はまるで「親の仇(かたき)」のように叩かれています。

新NISAの対象商品からも、「毎月分配型」は原則として除外されました。 国としても、「資産形成には向かない」という烙印を押した形です。

しかし、それでもなお、銀行の窓口ではシニア層に根強い人気があり、売れ続けています。 なぜでしょうか?

それは、「理屈(資産効率)」よりも「感情(毎月の現金収入)」を優先したいという、切実な「お小遣いニーズ」があるからです。

「資産を増やす」ことが正義である現役世代と、「資産を使って楽しむ」ことが目的のシニア世代では、正解が異なります。

この記事では、嫌われ者の「毎月分配型投信」を弁護しつつ、その危険な仕組み(タコ足配当)を正しく理解した上で、老後のキャッシュフローとして賢く付き合う方法を解説します。

1. なぜ「悪」と呼ばれるのか? 「タコ足」の正体

まず、批判される最大の理由である「タコ足配当」の仕組みを理解しましょう。

投資信託の分配金には、実は2種類あります。

  1. 普通分配金: 運用の「利益」から出すお金(健全)。

  2. 特別分配金(元本払戻金): 利益が出ていないので、「あなたの預けた元本」を取り崩して出すお金(不健全)。

タコが自分の足を食べる

タコは極限にお腹が空くと、自分の足を食べて飢えをしのぐと言われます。 毎月分配型投信の多くは、運用益(エサ)が足りない時でも、約束した分配金を出すために、投資家の元本(自分の足)を削って現金を渡します。

【シミュレーション】

  • あなたが100万円投資しました。

  • 今月は運用が不調で、利益は0円でした。

  • でも、ファンドは「5,000円」の分配金を出しました。

Q. この5,000円はどこから来た? A. あなたの100万円の中から、5,000円を返却しただけです。

これを受け取ったあなたは「やった! お金が増えた」と喜びますが、実際は「自分の財布から出したお金を、別のポケットに入れただけ」です。 しかも、そのたびに税金や手数料がかかる場合があり、資産はジリジリと減っていきます。これが「悪」と言われる所以です。


2. それでもシニアが「毎月分配」を愛する理由

理屈では「損」だとわかっていても、なぜ多くのシニアがこれを選ぶのでしょうか。 そこには、「取り崩しの心理的ハードル」という人間ならではの感情があります。

理由①:「売る」のは痛みを伴う

例えば、普通の投資信託を買って、毎月生活費のために5万円分解約(売却)するとします。 相場が暴落している時、自分の手で注文ボタンを押し、資産が減っていくのを見るのは、身を切られるような精神的苦痛(損失回避性)を伴います。 その結果、「もったいなくて売れない」となり、結局お金を使えないまま亡くなってしまう人が多いのです。

理由②:「受け取る」のは快感である

一方、毎月分配型なら、何もしなくても自動的にチャリンと振り込まれます。 たとえそれが「自分の元本の払い戻し」だったとしても、通帳に記帳された数字を見るのは嬉しいものです。 「年金+5万円」の定期収入があることで、友人とランチに行ったり、孫にお小遣いをあげたりする「心の余裕」が生まれます。

「合理的な資産形成」よりも、「日々の幸福感」を優先する。 人生の残り時間を楽しむフェーズにおいては、この選択は決して間違いとは言い切れません。


3. 「良い分配型」と「悪い分配型」の見分け方

とはいえ、資産が猛スピードで枯渇するような「悪質なファンド」は避けるべきです。 お小遣いニーズを満たしつつ、資産を長持ちさせるためのチェックポイントは「健全性」です。

見るべき指標:分配金余力(カバレッジ)

証券会社のサイトなどで、以下の2つを比較してください。

  1. トータルリターン(年率): そのファンドが稼ぐ力。

  2. 分配金利回り(年率): そのファンドが配っているお金の割合。

【危険な例】

  • 稼ぐ力(リターン): 年 3%

  • 配るお金(利回り): 年 15%

    • 差額の12%分、毎年元本が減っています。 基準価額(投資信託の値段)のチャートを見ると、綺麗な右肩下がりになっているはずです。これは数年で資産が半減するレベルの「悪いタコ足」です。

【許容範囲の例】

  • 稼ぐ力(リターン): 年 5%

  • 配るお金(利回り): 年 3% 〜 6%

    • → 稼いだ分とほぼ同じか、少し多いくらいを配っています。これなら元本の減り方は緩やかで、長期間にわたって分配金を受け取り続けられます。

結論:「基準価額」が長期的に横ばい、または微減で済んでいるファンドを選びましょう。 急角度で下がっているものは、あなたの資産を食いつぶす寄生虫です。


4. 現代の最適解:「定率売却サービス」という選択

「毎月分配型は、新NISAで買えないから困る」 「タコ足はやっぱり嫌だ」

そんな方に、現代のテクノロジーを使った「毎月分配型の完全上位互換」となる方法をご紹介します。 それは、楽天証券やSBI証券などが無料で提供している「投資信託定期売却サービス(自動取り崩しサービス)」です。

仕組み:普通の投信を、自動で現金化する

  1. 買うもの: 手数料が激安で、運用効率が良い「インデックスファンド(全世界株式やS&P500)」を買います(新NISAつみたて投資枠もOK)。

  2. 設定: 証券会社の画面で、「毎月15日に、残高の〇〇%(または〇万円)を売却して、銀行口座に振り込む」と設定します。

メリット

  • タコ足のコントロールが可能: 「運用益の範囲内(例えば年4%)」で設定すれば、元本を減らさずに済みます。

  • コストが安い: 毎月分配型投信は「信託報酬(手数料)」が高いものが多いですが、インデックスファンドなら数分の一で済みます。

  • 新NISAが使える: 非課税で運用しながら、自分年金を作れます。

これなら、「売却の痛み」を感じることなく、毎月自動でお金が振り込まれる仕組み(擬似的な毎月分配)を、低コストかつ健全に作ることができます。


5. まとめ:道具に善悪はない。使い手が賢くなろう

「毎月分配型投信」は、資産を増やしたい現役世代にとっては、複利効果を捨てることになるため「悪」です。 しかし、資産を使いたいシニア世代にとっては、人生を豊かにする「ツール」になり得ます。

重要なのは、「これは自分の元本が戻ってきているだけかもしれない」という仕組みを理解した上で、納得して使うことです。

  1. 危険な高分配(年利10%超えなど)ファンドには近づかない。

  2. 基準価額が下がり続けていないかチェックする。

  3. できれば、ネット証券の「自動売却サービス」で代用する。

この3つを守れば、毎月のお小遣いは、あなたの老後を彩る素晴らしいパートナーになるはずです。 お金は、墓場には持っていけません。 「増やす」呪縛から解き放たれ、「上手に使う」仕組みを整えていきましょう。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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