「資産寿命」を延ばす!50代・60代から見直すコア・サテライト戦略の立て方

「人生100年時代」という言葉が定着し、喜ばしい反面、多くの人が抱えるのが「長生きする分、お金が足りなくなるのではないか?」という不安です。

50代・60代は、資産形成の「仕上げ」と、取り崩しの「準備」が重なる非常に重要な時期です。この時期に適切な戦略を立てるかどうかで、将来の安心感は大きく変わります。

そこで今回は、プロの投資家も実践する「コア・サテライト戦略」を、50代・60代向けにアレンジした活用法について解説します。

シニアのサテライトのイメージ

なぜ今、「コア・サテライト戦略」なのか?

「コア・サテライト戦略」とは、資産を以下の2つに分けて管理する手法です。

  • コア(中核・守り): 資産の大部分(70〜80%)。長期・分散・積立運用で、手堅く市場平均並みのリターンを目指す。
  • サテライト(衛星・攻め): 資産の一部(20〜30%)。個別株やハイリスク商品などで、市場平均以上のリターンを狙う。

現役時代は「攻め」の割合が多くてもリカバリーができましたが、50代・60代で大きな損失を出すと、老後の生活設計そのものが崩れてしまいます。

しかし、「守り」だけでもインフレ(物価上昇)に勝てず、資産の実質的な価値が目減りしてしまうリスクがあります。だからこそ、守りを固めつつ、適度なリターンで資産寿命を延ばすこの戦略が有効なのです。

50代・60代の「黄金比率」へのシフト

20代・30代であれば「コア7:サテライト3」などが一般的ですが、50代・60代からは「リスク許容度」の見直しが必須です。

推奨されるのは、より保守的なポートフォリオへの移行です。

  • コア(守り)を80〜90%へ 全世界株式や先進国株式のインデックスファンドに加え、「債券」や「現金」の比率を高めます。暴落時のクッションを作るためです。
  • サテライト(攻め)は10〜20%に留める 趣味としての投資や、高配当株による「お小遣い(配当金)」作りなど、楽しみの要素を残しつつ、最悪ゼロになっても生活に困らない範囲に限定します。

具体的な「コア」の作り方

資産寿命を延ばすための「コア」部分は、以下の3つの要素で構成することをおすすめします。

インデックスファンド(株式)

新NISAの「つみたて投資枠」などを活用し、全世界株式(オルカン)などで世界経済の成長を取り込みます。年率3〜4%程度の成長が、資産の減少を緩やかにします。

債券・個人向け国債

株式との値動きが異なる資産を持つことで、全体のリスクを下げます。特に日本の「変動10年国債」などは元本割れリスクがなく、銀行預金より金利が良い「現金の置き場」として優秀です。

生活防衛資金(現金)

ここが若年層との最大の違いです。「生活費の2〜3年分」は必ず現金で確保してください。これにより、株価暴落時に焦って投資信託を売却(狼狽売り)する必要がなくなり、相場の回復を待つことができます。

資産寿命を延ばす「取り崩し」の極意

資産寿命を延ばす最大のポイントは、「運用しながら取り崩す」ことです。

例えば、2,000万円をただ現金で持っていて、毎月10万円ずつ取り崩すと約16年で尽きます。しかし、年利3%で運用しながら取り崩せば、資産寿命は約22年まで延びます。 この「6年の差」が、晩年の安心感に直結します。

「コア・サテライト戦略」で守りを固めつつ運用を継続することは、まさにこの「時間を味方につける」行為なのです。

【50代・60代専用】理想の「コア・サテライト配分」簡易診断チェックリスト

あなたの現在の資産状況や性格から、リスクを取りすぎない最適な配分を診断します。以下の4つの質問に対し、当てはまる点数を合計してください。

Q1. 「生活防衛資金(手元に残す現金)」は確保できていますか?
(記事内で推奨した「生活費の2〜3年分」を目安にしてください)

  • 2点: 生活費の3年分以上、余裕で確保してある
  • 1点: 生活費の1年〜2年分程度はある
  • 0点: 正直なところ、1年分未満しかない

Q2. 毎月の収支バランスはどうなっていますか?

  • 2点: 年金や給与だけで生活費は賄えており、資産を取り崩さなくても生活できる
  • 1点: 多少の不足分を、資産から補填する必要がある
  • 0点: 毎月大きく赤字が出ており、資産の取り崩しペースが速い

Q3. これまでの投資経験はどのくらいですか?

  • 2点: 10年以上(暴落を経験し、乗り越えたことがある)
  • 1点: 5年未満、またはNISAで最近始めたばかり
  • 0点: ほぼ未経験、または元本割れがとにかく怖い

Q4. もし保有資産が一時的に「20%」減ってしまったらどう思いますか?

  • 2点: 「長期投資ならよくあること」と静観、もしくは買い増しできる
  • 1点: 不安だが、売らずに回復を待てると思う
  • 0点: 怖くて夜も眠れず、すぐに売却して現金に戻したくなる

診断結果:あなたの合計点数は?

合計点数をもとに、推奨されるポートフォリオ(資産配分)を確認しましょう。

【0〜3点】超・堅実型:「資産を守り抜く」要塞タイプ

リスクを取るには少し準備不足か、性格的に向いていません。「増やす」よりも「減らさない」を最優先しましょう。

  • 推奨比率: コア 95〜100% / サテライト 0〜5%

まずはサテライト(個別株など)は考えず、コア資産のみでOKです。「個人向け国債(変動10年)」や「預金」の比率を多めにし、株式(投資信託)は資産全体の3割程度に抑えるなど、守りを鉄壁にしましょう。

【4〜6点】バランス型:「寿命を延ばす」王道タイプ

50代・60代の標準的なモデルです。適度なリスクでインフレに対抗しつつ、大失敗を避ける運用が向いています。

  • 推奨比率: コア 80〜90% / サテライト 10〜20%

記事で紹介した通り、資産の大部分を「全世界株式」や「債券」などのインデックス運用(コア)に任せましょう。サテライト枠は、応援したい企業の株主優待や高配当株など、「楽しみ」のために少額で活用するのがおすすめです。

【7〜8点】積極型:「余裕を楽しむ」熟練タイプ

資金にも精神的にも余裕があります。守りを固めた上であれば、少し多めにリスクをとってリターンを狙うことも可能です。

  • 推奨比率: コア 70% / サテライト 30%

生活基盤が盤石なため、サテライト枠を少し広げて、成長株や少しリスクのある資産運用に挑戦しても良いでしょう。ただし、加齢とともに判断力が低下するリスクも考慮し、70代に入ったら徐々にコア比率を高める「出口戦略」も考えておきましょう。

まとめ:今日からできる「棚卸し」

50代・60代からの資産運用は、「増やすこと」以上に**「大きく減らさないこと」「長く持たせること」**が目的になります。

まずは、現在のご自身の資産を書き出し、「コア(守り)」と「サテライト(攻め)」がどのくらいの比率になっているかを確認してみましょう。もしサテライトの比率が高すぎる場合は、少しずつコアへ移行し、盤石な「老後の要塞」を築いてください。

適度なリスク管理こそが、豊かなセカンドライフへのパスポートです。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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