定期預金はもったいない! 70代でも間に合う「低リスク運用」の新NISA商品選び
「退職金も年金も、すべて定期預金に入れているから安心だ」 もし、あなたがそう思っているなら、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
これまでは「元本保証」の定期預金こそが、シニア世代の資産を守る王道でした。しかし、物価が上がり続ける「インフレ時代」において、利息がほとんどつかない定期預金にお金を預けっぱなしにすることは、「資産の実質的な価値を減らす」ことになりかねません。
「でも、70代から投資なんて危ないのでは?」 「新NISAなんて、若い人のための制度でしょう?」
そんな不安を持つ必要はありません。70代には70代の、「負けないための新NISA活用術」があります。大切な虎の子の資産を守り、少しだけ寿命を延ばすための「低リスク運用」の極意をお伝えします。
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1. なぜ今、定期預金だと「損」をするのか?
長らく続いたデフレ(物価が下がる)時代、現金は最強の資産でした。持っているだけで価値が上がったからです。しかし、今は違います。
スーパーの卵、電気代、ガソリン代……あらゆるモノの値段が上がっています。例えば、インフレ率(物価上昇率)が2%で、銀行の定期預金金利が0.2%だとしましょう。 お金の額面は減りませんが、買えるモノの量は毎年約1.8%ずつ減っていく計算になります。
1000万円の預金は、10年後には実質価値が約840万円分にまで目減りしてしまう恐れがあるのです。この「見えない損失」から資産を守るためには、インフレ率と同じくらい、あるいはそれより少し高い利回りで運用する必要があります。
2. 70代のNISAは「増やさない」が合言葉
20代や30代のNISA戦略は「資産を最大化する」ことですが、70代の戦略は全く逆です。
「大きく増やさなくていい。ただ、インフレに負けない程度に守る」
これが鉄則です。 具体的には、年利3%〜4%程度の緩やかなリターンを目指します。無理にリスクを取ってハイリターンを狙う必要はありません。銀行に預けておくよりマシであれば大成功、というゆとりある心構えが、70代の投資を成功に導きます。
また、70歳時点での平均余命は男性で約16年、女性で約20年あります(厚生労働省データ)。これは投資期間として十分な長さです。「もう遅い」ということは決してありません。
3. 絶対に選んではいけない「NG商品」
おすすめの商品を紹介する前に、70代が絶対に手を出してはいけない商品を整理しておきましょう。金融機関の窓口で勧められても、これらは避けるのが無難です。
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ハイリスクな新興国株式ファンド インドやブラジルなど、成長期待は高いですが、価格変動が激しすぎます。夜眠れなくなるような商品はNGです。
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テーマ型ファンド(AI、ロボットなど) 流行り廃りが激しく、手数料が高い傾向にあります。長期保有には向きません。
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為替ヘッジなしの海外債券(ハイイールド債など) 「高金利」を謳い文句にしますが、円高になった瞬間に為替差損で利益が吹き飛びます。
4. 70代におすすめ!「低リスク運用」3つの選択肢
では、具体的に新NISA(つみたて投資枠・成長投資枠)で何を買えばよいのでしょうか。キーワードは「分散」と「クッション性」です。
選択肢①:これ一本で完結「バランス型ファンド(4資産・8資産均等)」
最も手間がかからず、リスクを抑えられるのが「バランス型投資信託」です。
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特徴: 株式だけでなく、債券(国債など)やREIT(不動産)にも自動的に分散投資してくれます。
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なぜ70代向き?: 株式市場が暴落しても、債券がクッションの役割を果たし、資産全体の減少をマイルドに抑えてくれます。
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おすすめ銘柄例:
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eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
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ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)
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選択肢②:世界経済のおこぼれを貰う「全世界株式(オール・カントリー)」×「現金」
若い世代に大人気の「オルカン」ですが、70代でも有効です。ただし、買い方に工夫が必要です。
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特徴: 世界中の優良企業の株を丸ごと買えます。
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70代の活用法: オルカンは株式100%なので、暴落時には価格が下がります。そこで、「投資に回すのは資産の3割まで」と決め、残りの7割を現預金で持ちます。
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効果: 資産全体で見れば、リスクを薄めることができます。インフレ対策として最強の「矛(ほこ)」を持ちつつ、大量の現金という「盾(たて)」で守る戦略です。
選択肢③:手堅さ重視「高配当株・債券ファンド」
こちらは「成長投資枠」を使います。
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特徴: 日本の連続増配株(配当を増やし続けている企業)や、米国債券ファンドなどを購入します。
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なぜ70代向き?: 定期的に「配当金(分配金)」が入ってくるため、年金の足しとして実感しやすいメリットがあります。株価の上下よりも「毎年入ってくる現金」を重視する方に適しています。
5. 失敗しないための「70代の鉄則ルール」
商品選び以上に大切なのが、「買い方」と「管理」です。
ルール①:退職金を一括で入れない
これが最大の失敗原因です。1000万円あるからといって、一度に1000万円分買ってはいけません。 「時間の分散」を使いましょう。例えば、毎月10万円ずつ、5年〜10年かけてゆっくりと資金を移動させます。こうすれば、高値掴みのリスクを極限まで減らせます。
ルール②:生活防衛資金は「5年分」確保する
現役世代は「生活費の半年分」の現金があれば良いと言われますが、シニアは違います。 病気、介護、家のリフォームなど、急な出費に備え、生活費の3年〜5年分は必ず「定期預金か普通預金」に残しておいてください。新NISAに回すのは、あくまで「当面使う予定のない余裕資金」だけです。
ルール③:窓口には行かない(できれば)
銀行や証券会社の窓口に行くと、どうしても手数料の高い商品を勧められがちです。可能であれば、ご家族(お子様やお孫様)に手伝ってもらい、ネット証券(SBI証券や楽天証券など)で口座を開設しましょう。 ネット証券なら、上記のおすすめ商品はすべて「購入手数料無料(ノーロード)」で購入できます。このコスト意識こそが、リターンを確実にする第一歩です。
6. 出口戦略:いつ、どうやって使う?
「NISAで運用したお金、いつ使えばいいの?」
答えは「必要な時に、必要なだけ」です。 新NISAはいつでも売却して現金化できます。
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「旅行に行くから20万円分売ろう」
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「家の修理代が必要だから50万円分売ろう」
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「毎月定率(例えば資産の3%)ずつ自動売却して、年金の上乗せにしよう」(※ネット証券には自動売却サービスがあります)
このように、貯金箱感覚で使っていけば良いのです。 運用しながら取り崩すことで、資産の寿命は現金のままよりも遥かに長持ちします。
まとめ:小さな一歩が「安心」を作る
70代からの資産運用は、怖いものでも、欲張るものでもありません。 それは、大切なお金をインフレという外敵から守り、豊かな老後を少しでも長く続けるための「守りの技術」です。
まずは月1万円からでも構いません。「定期預金の一部を、バランス型ファンドに移してみる」。その小さな行動が、将来の「お金が足りなくなる不安」を消し去ってくれるはずです。
ご家族と一緒に、あるいはご夫婦で、これからの資産の守り方について話し合ってみてはいかがでしょうか。
