ジュニアNISA終了後の「孫への投資資金贈与」。どう渡すのが正解か?
「かわいい孫のために、将来の資産形成を手伝ってあげたい」 「ジュニアNISAで積立をしていたけれど、制度が終わってしまって、これからどうすればいいの?」
2023年末で「ジュニアNISA」の新規投資が終了し、2024年からは「新NISA」が始まりました。 しかし、ここで大きな壁が立ちはだかります。新NISAは「18歳以上(成人)」しか利用できないのです。
「じゃあ、孫が18歳になるまで何もできないの?」 「子供名義の課税口座で運用するのは損なの?」
そんな疑問を持つおじいちゃん、おばあちゃんに向けて、ポスト・ジュニアNISA時代の「孫への投資資金の正解ルート」を解説します。 税金で損をせず、かつ法的に安全にお金を渡すための「仕組みづくり」について見ていきましょう。
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1. そもそも「新NISA」は孫(未成年)には使えない
まず、大前提の確認です。 神改正と言われる「新NISA」ですが、利用資格は「1月1日時点で18歳以上」です。 つまり、0歳〜17歳のお孫さんは、新NISA口座を開設することすらできません。
ジュニアNISAの廃止により、「未成年が非課税で投資できる枠」は、事実上消滅しました。
そのため、これからの選択肢は大きく分けて以下の2つになります。
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【課税口座ルート】 未成年口座(特定口座)を開設し、税金(約20%)を払ってでも今から運用を始める。
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【待機ルート】 18歳になるまで預金などでプールしておき、新NISAが使えるようになった瞬間に贈与する。
どちらが正解ということはありませんが、「複利効果」を味方につけるなら、1の「課税口座ルート」がおすすめです。たとえ利益に20%の税金がかかっても、10年、15年という長期運用ができれば、預金しておくより資産が増える可能性が高いからです。
2. 実践! 未成年口座(特定口座)への「資金リレー」
では、具体的にどうやってお孫さんの口座にお金を移し、運用すればよいのでしょうか。 最も王道かつ安全なのは、「暦年贈与」を使った資金リレーです。
ステップ①:孫(親権者管理)名義の証券口座を作る
まず、お孫さんの名前で証券口座(未成年口座)を開設します。 親権者(あなたの子供)の協力が必須ですので、「孫の将来のために投資資金を援助したい」と相談してください。
ステップ②:毎年110万円以内で資金を贈与する
あなたの口座から、お孫さんの銀行口座へお金を振り込みます。 年間110万円以下なら贈与税はかかりません。 (例:毎年、誕生日に50万円を振り込むなど)
ステップ③:その資金で投信を買う(親が運用)
お孫さんの銀行口座から証券口座へ資金を移し、親権者(親)が代理で「全世界株式(オール・カントリー)」などの投資信託を購入します。
【注意!】祖父母が勝手に売買してはいけません お孫さんの口座のログインIDやパスワードを祖父母が管理し、勝手に取引を行うと、「借名口座」という法令違反になります。 お金は渡したら、その後の運用・管理は親権者(親)に任せる。これが鉄則です。
3. ここが落とし穴! 「名義預金」認定を避ける3つのルール
「孫の口座にお金を入れて、投資信託を買っておけばいいんだな」 と安易に進めると、将来あなた(祖父母)に万が一のことがあった時、税務署から「これは贈与ではありません。あなた(祖父母)の財産です」と否認されるリスクがあります。
これを「名義預金(めいぎよきん)」ならぬ「名義株」のリスクと言います。 以下の3つのルールを徹底してください。
ルール①:通帳・印鑑・パスワードは「親」に管理させる
お孫さんが小さい場合、管理するのは親権者(親)です。 決して、祖父母が通帳や証券口座のパスワードを握りしめていてはいけません。「管理権」が移転していないと、贈与とは認められません。
ルール②:毎回「贈与契約書」を作成する
未成年への贈与であっても、契約は必要です。 お孫さんが未成年の場合は、「親権者(父・母)」が代理人として署名・捺印した贈与契約書を作成します。
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あげる人: 祖父 〇〇
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もらう人: 孫 △△(親権者 父□□ 母××)
面倒でも、お金を振り込むたびにこの紙を1枚作っておくだけで、税務署に対する最強の証拠になります。
ルール③:銀行振込の記録を残す
現金手渡しはNGです。必ず「祖父の口座」から「孫の口座」へ、足跡が残る銀行振込で行ってください。
4. 「18歳まで待つ」戦略もあり? 教育資金贈与との併用
「税金を払うのはやっぱり嫌だ」 「孫が成人した時に、新NISAをフル活用させてあげたい」
そう考えるなら、「18歳一括贈与」を目指す戦略もあります。
戦略:教育資金の一括贈与(1,500万円)を活用
もし、お孫さんの教育費(塾代や学費)を援助したいなら、「教育資金の一括贈与非課税制度」を使います。 これは1,500万円まで非課税で渡せる制度です。
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学費や塾代は、この「教育資金口座」から出す。
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それによって浮いた「親の家計」や「お年玉」を、18歳になった瞬間に新NISAに入れる。
このように、間接的に新NISA資金を支援することも可能です。
戦略:18歳になったら「年360万円」贈与する
新NISAの年間投資枠は最大360万円です。 お孫さんが18歳になった年から、毎年110万円〜360万円程度を贈与し、それをそのまま新NISAの「つみたて投資枠」「成長投資枠」に入れてもらう方法です。
※110万円を超える分には贈与税がかかりますが、若いうちに非課税口座(新NISA)に資金を移動できるメリットを考えれば、多少の贈与税を払ってでも実行する価値はあります(例:300万円贈与しても、税金は約19万円です)。
5. 親(あなたの子)との連携がすべての鍵
ジュニアNISA終了後の投資贈与において、最も重要なのは「親(あなたの子)との合意」です。
昔のように「おじいちゃんが内緒で孫に通帳を作っておく」ことは、マイナンバー制度やコンプライアンスの強化により、物理的に不可能になりました。証券口座を作るには、親の協力が不可欠だからです。
贈与する前に話すべきこと
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「将来のために、このお金を運用してほしい」という意図を伝える。
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「短期的に引き出して使わない」ことを約束してもらう。
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「暴落しても文句を言わない」と親に伝えておく(投資に絶対はないため)。
特に、投資に不慣れな親御さんの場合、預かったお金が減ることを極端に恐れて、結局「普通預金」に放置してしまうケースがあります。 「世界株のインデックスファンドなら、15年持てば増える可能性が高いから」といった、具体的なアドバイスもセットで贈ってあげると親切です。
まとめ:お金と一緒に「金融リテラシー」を贈ろう
ジュニアNISAは終わりましたが、孫への愛情を届ける道が閉ざされたわけではありません。 むしろ、課税口座(特定口座)を使うことで、18歳という年齢制限に縛られず、もっと長いスパンで、金額の上限もなく資産を育ててあげることも可能になりました。
「魚(現金)を与えるのではなく、魚の釣り方(投資経験)を与える」
お孫さん名義の口座で、お金が世界経済の成長と共に増えていく様子を見せることは、将来お孫さんが労働以外で収入を得る術を知る、最高の「金融教育」になります。
まずは、110万円の枠にとらわれすぎず、「きちんとした手続き(契約書・振込)」を踏んで、最初の一歩を踏み出してみてください。
