【孫への贈与も兼ねる】新NISAを「世代間バトン」として使う超実践テクニック

「自分のNISA枠は埋めてしまった。あるいは、もう高齢で長期運用は難しい」 「可愛い孫に資産を遺したいが、相続税で目減りするのは避けたい」

もしあなたがそうお考えなら、新NISAを単なる自分だけの資産形成ツールとして使うのはもったいない話です。新NISAには、制度の仕組みと贈与税の非課税枠を巧みに組み合わせることで、「資産を無税で増やしながら、次世代へバトンタッチする」という裏技的な使い方が存在します。

相続税対策の王道である「生前贈与」と、最強の非課税制度「新NISA」。この2つを掛け合わせた、賢い祖父母だけが実践している「世代間バトン」の戦略を解説します。

相続イメージ

1. 残念な真実:あなたのNISA口座は「相続」できない

まず、非常に重要な前提知識をお伝えします。 NISA口座(非課税口座)そのものを、子供や孫に引き継ぐことはできません。

口座名義人が亡くなった場合、NISA口座内の資産は、相続人の「特定口座(課税口座)」に払い出されます。つまり、あなたが亡くなった瞬間に「非課税」という魔法は解け、その後に生じた利益には約20%の税金がかかるようになるのです。

「せっかく育てた非課税の果実を、みすみす課税資産に戻してしまう」 これは非常にもったいないことです。

そこで発想を転換します。 「自分のNISA」で増やすのではなく、「孫のNISA」にお金を移して、そこで増やしてもらう。 これこそが、「世代間バトン」戦略の核心です。

2. 最強のコンボ:「暦年贈与」×「孫のNISA」

この戦略の具体的なステップは以下の通りです。 ※対象となる孫は、新NISA口座が開設できる18歳以上を想定しています。

ステップ①:年間110万円の「現金」を贈与する

贈与税には、「年間110万円までは非課税」という基礎控除があります(暦年贈与)。 まず、お孫さんの銀行口座へ、現金(例えば100万円〜110万円)を振り込みます。この時点では、税金は1円もかかりません。

ステップ②:孫がそのお金で「新NISA」を買う

ここがポイントです。孫が受け取った現金をそのまま使ってしまっては意味がありません。 その資金を原資として、孫自身の新NISA口座(つみたて投資枠や成長投資枠)で運用してもらいます。

この「バトン」が生む驚異的な効果

例えば、毎年110万円を5年間、孫に贈与し、孫がそれを年利5%で20年間運用したとします。

  • 普通に相続した場合: 550万円に対し、相続税(税率10〜55%)がかかり、さらにその後の運用益にも20%課税されます。

  • 新NISAバトンを使った場合: 贈与税0円。相続税0円。運用益への税金0円。 550万円の元本は、20年後には約1460万円にまで膨らむ可能性があります(シミュレーション上の計算)。

あなたが持っている「現金」という種もみを、孫という「肥沃な非課税の畑」に植え替える。これによって、資産効果は何倍にも膨れ上がるのです。

3. なぜ「子供」ではなく「孫」なのか?

「子供に贈与しても同じではないか?」と思われるかもしれません。しかし、相続税対策の観点からは、「孫」への贈与こそが最強です。

「持ち戻しルール」の対象外になる可能性が高い

相続税には「生前贈与加算(持ち戻し)」というルールがあります。亡くなる前3年〜7年以内に行われた贈与は、相続財産に足し戻して計算される(つまり節税効果が消える)というものです。

しかし、このルールの対象者は「相続や遺贈により財産を取得した人」に限られます。 通常、孫は法定相続人ではありません(代襲相続や遺言での遺贈がない限り)。 つまり、孫への贈与は、原則として「亡くなる直前(前日など)の贈与であっても、相続財産に持ち戻されない」のです。

高齢になってから相続対策を始める場合、「孫へのNISA資金贈与」は、即効性のある極めて有効な手段となります。

4. 税務署に否認されないための「鉄の掟」

この戦略は強力ですが、やり方を間違えると税務署から「名義預金(実質的に祖父母の財産である)」とみなされ、多額の追徴課税を受けるリスクがあります。 以下の3つのルールを絶対に守ってください。

鉄則①:お金の動きは「銀行振込」で残す

手渡しは絶対にNGです。「いつ、誰から、誰へ」お金が動いたか、通帳に証拠を残してください。振込名義人も必ず祖父母の名前にします。

鉄則②:「贈与契約書」を毎回交わす

「もらった覚えはない(単に預かっていただけ)」と言われないよう、毎回、贈与契約書を作成し、双方で署名・捺印をして保管します。面倒でもこれが最強の防具になります。

鉄則③:通帳と印鑑は「孫」が管理する

これが最も重要です。孫の通帳やキャッシュカード、証券口座のパスワードを祖父母が管理していてはいけません。 「孫自身がスマホでログインし、孫自身の判断で注文を出す」 この実態がなければ、それは贈与とは認められません。

5. 応用編:祖父母の「含み益」をバトンにする

手元に現金がない場合でも、ご自身の旧NISAや特定口座にある資産を売却(現金化)し、それを原資に贈与する方法があります。

特に、ご自身のNISA口座の非課税期間が終了するタイミングや、株価が上がって利益が出ているタイミングで売却し、その利益(キャッシュ)を孫のNISA枠へ移動させる。 これは、「出口戦略」と「相続対策」を同時に行うスマートな方法です。

「自分が使いきれない資産」を抱え込んでおくよりも、非課税のまま次世代の資産形成エンジンに燃料を投下するほうが、資産全体の効率は劇的に向上します。

6. お金と一緒に「金融リテラシー」を贈る

この「新NISAバトン」戦略の隠れた、しかし最大のメリットは、「孫への金融教育」になることです。

ただお金を渡すと、無駄遣いされる懸念があります。しかし、「これは将来のための種銭だ。NISAに入れて、複利の力を学びなさい」と条件付きで渡すことで、孫は投資の経験を積み、マネーリテラシーを身につけることができます。

  • 「今年はどのファンドを買うか」

  • 「今の株価の動きをどう見るか」

お正月に親族が集まったとき、そんな会話ができれば、それはお金以上の財産(知識と知恵)を孫に授けていることになります。

結論:愛情を「仕組み」に変えて渡す

新NISAを「自分だけのもの」と捉えるのは、非常にもったいないことです。 それは、一族の資産を守り、繁栄させるための「世代を超えた非課税の器」です。

  1. 年間110万円以内で現金を贈与する。

  2. 孫が自分で新NISA口座で運用する。

  3. 契約書と管理実態をしっかり残す。

この3ステップで、あなたの資産は形を変え、長い時間をかけて孫の人生を支え続ける「守り神」となります。 「おじいちゃん、おばあちゃんのおかげで、今の生活がある」 数十年後、孫たちがそう感謝してくれるような、賢い「バトン」の渡し方を、今から始めてみませんか?

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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