「いまさらNISA?」は間違い! 60代からの「新NISA」活用術と取り崩し戦略
「もう還暦を過ぎたし、今さら投資なんて遅すぎる」 「NISAは若い人がやるものでしょう?」
もしあなたがそう考えているなら、それは非常にもったいない誤解です。 人生100年時代と言われる現代において、60代は「終わり」の始まりではなく、「資産寿命」を延ばすための第2ラウンドのゴングが鳴った瞬間です。
2024年から始まった「新NISA(少額投資非課税制度)」は、実は若者以上に、まとまった資金があり、これから取り崩し期を迎えるシニア世代にこそ最強の武器となります。
なぜ60代からのNISAが必要なのか。そして、虎の子の資産を減らさずに使い続けるための「賢い取り崩し戦略」とは何か。その全貌を解説します。
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1. 60代からでも「遅くない」3つの理由
「長期投資」の複利効果を得るには20年、30年が必要と言われます。しかし、60代には時間がないというのは昔の話です。
理由①:運用期間はまだ20年以上ある
現在の60歳の平均余命は、男性で約24年、女性で約29年です(厚生労働省「簡易生命表」より)。90歳、100歳まで生きることも珍しくありません。 つまり、60歳で投資を始めても、20年〜30年という十分な「長期投資」が可能なのです。この期間を現金(金利ほぼ0%)で眠らせておくのと、年利3〜4%で運用しながら使うのとでは、資産の持ちが劇的に変わります。
理由②:インフレ(物価上昇)リスクへの防波堤
昨今、スーパーに行くたびに値上げを感じることはありませんか? すべてを現預金で持っていることは、インフレ時には「資産価値が目減りしていく」ことを意味します。株式などの投資資産を持つことは、インフレに対する強力な防衛策(ヘッジ)になります。
理由③:新NISAの「非課税」は相続対策にはならないが、贈与には使える
新NISAの口座自体は相続できません(死亡時に特定口座へ移管され、含み益があれば課税される可能性があります)。しかし、自分が元気なうちに運用益を非課税で受け取り、それを子供や孫への教育資金贈与などに回すことは可能です。「自分のための資金」を効率よく増やすことで、結果的に家族に遺せる資産を守ることにつながります。
2. 60代のための「新NISA」安全活用ルール
20代、30代の投資と、60代の投資はルールが全く異なります。攻めではなく、「守りながら少し増やす」が鉄則です。
ルール①:退職金の一括投入はNG
退職金が入ったからといって、いきなり数百万円を投資してはいけません。 「時間の分散」を徹底してください。例えば、資金が1000万円あっても、最初の年は120万円(つみたて投資枠の月10万円)からスタートするなど、3〜5年かけてゆっくり資金を移動させましょう。これにより、高値掴みのリスクを回避できます。
ルール②:「つみたて投資枠」で安定資産を選ぶ
成長投資枠で個別のハイリスク株を買うのは避けましょう。基本は「つみたて投資枠」で、世界中の株に分散投資す「全世界株式(オール・カントリー)」や、債券も含まれた「バランス型ファンド」を選びます。 「大きく儲ける」必要はありません。「銀行預金よりマシ」程度を目指すのが、心の平穏を保つ秘訣です。
ルール③:現金比率は「年齢%」以上
「100-年齢=株式比率」という古い法則がありますが、現代の60代なら、「生活防衛資金(生活費の3〜5年分)」+「直近で使う予定のあるお金」は必ず現預金で確保してください。 暴落時に生活費のために投資信託を売らなくて済むよう、現金のクッションを厚く持っておくことが最重要です。
3. 資産寿命を延ばす!「出口戦略(取り崩し)」の極意
NISAで増やしたお金は、墓場まで持っていくわけにはいきません。これからの人生を楽しむために使う必要があります。しかし、適当に取り崩すとあっという間に底をつきます。
ここで重要なのが「定率取り崩し」というテクニックです。
「定額」ではなく「定率」で売る
多くの人は「毎月5万円ずつ引き出す」という定額引き出しをしがちです。しかし、これだと暴落時(株価が安い時)にたくさんの口数を売ることになり、資産減少が加速してしまいます。
おすすめなのは、「毎年、資産残高の3〜4%を引き出す」という「定率引き出し」です。
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相場が良い時: 資産が増えているので、受け取る額も増える(旅行や贅沢に使える)。
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相場が悪い時: 資産が減っているので、受け取る額も減る(節約して資産の回復を待つ)。
このように、相場に合わせて自動的にブレーキとアクセルを踏み分けることで、資産が枯渇するリスクを極限まで下げることができます。 (※現在、楽天証券やSBI証券など主要ネット証券には、この「定率自動売却サービス」が無料で備わっています。これを利用しない手はありません。)
シミュレーション:資産寿命の差
「2000万円を運用しながら取り崩す」場合を見てみましょう。
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タンス預金で毎月10万円取り崩し → 約16年でゼロになります。(76歳で枯渇)
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年利4%で運用し、定率4%で取り崩し → 理論上、資産は減りません。 元本を維持したまま、死ぬまで分配金を受け取り続けられる可能性があります。(もちろん相場の変動によりますが、30年以上持つ可能性は極めて高いです)
4. 暴落が来たらどうする? シニアのメンタル管理術
60代からの投資で一番怖いのは「暴落」です。リーマンショック級の暴落が来たら、資産が一時的に30〜40%減ることもあります。その時の対処法を覚えておいてください。
① 「売らない」が正解
慌てて売ると損失が確定します。世界経済は長期的には成長し続けてきました。暴落しても、数年で回復することが歴史上証明されています。「嵐が過ぎるのをじっと待つ」が正解です。
② 現金クッションを使う
ここで、前述した「3〜5年分の生活防衛資金」が活きてきます。株価が下がっている間は、投資信託を売らずに、手元の現金を使って生活してください。株価が戻ってから、再び取り崩しを再開すれば良いのです。
まとめ:新NISAは「老後の安心製造機」である
「いまさら」なんてことは決してありません。 60代からの新NISA活用は、一獲千金のためではなく、「インフレから資産を守り、自分らしい生活を長く続けるため」の賢い手段です。
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生活防衛資金を確保する。
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ネット証券で「つみたて投資枠」を使い、少額から全世界株式などを買う。
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取り崩す時は「定率(4%ルール)」で、資産を長持ちさせる。
この3ステップを守れば、あなたの老後資金は驚くほど強靭になります。 今日が、これからの人生で一番若い日です。まずは月1万円からでも、未来への種まきを始めてみませんか?
