「終の棲家」はどこがいい?自宅、シニア住宅、老人ホームの選び方
人生の最終章を、どこでどのように過ごすか。これは、多くの人にとって避けて通れない大切なテーマです。「終の棲家」を選ぶことは、これからの人生を豊かにする上でも、そして家族の安心のためにも、非常に重要な決断となります。
この記事では、代表的な3つの選択肢「自宅」「シニア向け分譲マンション」「老人ホーム」それぞれの特徴と、後悔しない選び方のポイントを解説します。
終の住処を考える際のポイント
終の住処を考えるポイントは、自分にとってどんな環境が必要かを明確にすることです。
例えば、仕事を続けているなら通勤はしやすいほうがよいでしょう。定期的な通院があるのなら、病院へのアクセスのよさも考えたいところです。
さらに、誰と住むか、将来的に世帯構成がどう変化する可能性があるかも見据えておく必要があります。
子供と同居する場合でも、子供が独身か既婚か、転勤の可能性があるかなど、将来の状況によって大きく変わる可能性があります。同居を始めたころは独身だった子供が、結婚して家を出ていくことも十分に考えられます。
終の棲家はどこがいい?
住み慣れた「自宅」で暮らし続ける
自宅を終の棲家とする場合、住み慣れた環境で安心して暮らせる、住宅ローンの返済が終わっていれば住居費の負担が減る、というメリットがあります。一方で、建物の老朽化や、ライフスタイルに合わなくなる可能性があるというデメリットも考慮する必要があります。
自宅のメリット
- 住み慣れた環境で安心して過ごせる
- 住宅ローンの負担軽減
- 自由なリフォームが可能
- 資産として残せる
自宅のデメリット
- 建物の老朽化と維持費
- 生活スタイルの変化への対応
- 将来の介護や医療ニーズへの対応
- 資産価値の低下
- 相続の問題
シニア向け分譲マンションで暮らす
シニア向け分譲マンションとは、バリアフリー化が施され、高齢者が暮らしやすいように配慮された設備や娯楽施設、食事の提供、フロント対応による各種サービスなどが充実している分譲マンションのことです。
シニア向け分譲マンションで暮らすメリット
資産になる
一般的な分譲マンションと同様に、シニア向け分譲マンションは購入すると資産を所有することになります。そのため、自由な室内リフォーム、売却、子への相続、賃貸物件として貸し出すことなどが可能です。
生活の自由度が高い
専有部分内にキッチン、浴室、トイレなどが独立して備わっている所が多く、自炊も可能です。
また、有料老人ホームでは1日のスケジュールや家族との面会時間などが細かく決められていますが、シニア向け分譲マンションでは制限はなく、外出や外泊など自由にすることが可能です。
サービスや娯楽設備が充実している
マンションの多くはレストラン、カラオケ、プール、フィットネスジム、マージャン卓、図書室などの娯楽設備が充実しています。
また、サークル活動や季節ごとのイベントなど、入居者同士が楽しく交流しながら暮らすことができます。サービスや娯楽設備は建物によっても異なりますので、事前によく調べておきましょう。
シニア向け分譲マンションで暮らすデメリット
購入費用・月額費用が高い
シニア向け分譲マンションは、入居時に高額なマンションの購入費用が必要になります。
また、管理費や修繕積立金のほかに食事、フロントサービス、見守りサービス利用料、外部事業者との介護サービス費用なども毎月かかって来るので、月々かかる費用も高くなりがちです。さらにマンションは「資産」のため、固定資産税も毎年支払っていく必要があります。
要介護度や認知症の状態が重症化すると住み続けるのが難しい
介護サービスを利用したい場合には外部事業者による訪問介護サービスを利用します。ただ、重度の要介護レベルの状態になった場合、認知症の症状が重症化してきた場合には、外部事業者のサービスだけで生活するのは困難なことがほとんどです。そうなった際には、介護付き有料老人ホームなどへ移ることを検討しなければいけません。
まだ物件数が少ない
シニア向け分譲マンションは物件数がまだ少なく、購入する際の選択の幅が狭いのが実情です。
売却をしたり賃貸物件として貸し出したりするときにも、事例が少ないため相場価格がわかりにくい、入居条件などが設けられている特殊な物件のため時間がかかりやすい、などのデメリットがあります。
老人ホームで暮らす
老人ホームを終の棲家とするメリットは、バリアフリー環境での安全な生活、充実した介護サービス、生活利便性の高さ、そして同世代との交流機会の増加などが挙げられます。一方で、家族との距離、集団生活のストレス、費用面、入居タイミングの問題も考慮する必要があります。
老人ホームで暮らすメリット
バリアフリー化された住宅で安全に暮らせる
全室バリアフリーで段差につまずくことなく、車椅子生活になっても室内の移動がスムーズなのでストレスフリーです。高齢者の転倒による骨折と入院は、寝たきりの始まりともいわれます。転倒を防止できるつくりの室内は、長く健康でいられる可能性を高めます。
生活の利便性が高いところが多い
有料老人ホームは駅近、あるいはスーパーが徒歩圏内になるなど、生活の利便性が高いところが多いのが特徴です。自宅はどこへ行くにも車が必要、駅まで徒歩で何十分もかかるという人は、住み替えを検討したほうがいいかもしれません。
質の高い介護サービスを受けられる
有料老人ホームの中には、介護資格者が従事しているところが多いため、質の高い介護サービスを受けられます。介護度が変動しても住み続けられるところであれば、ずっとサポートしてもらえて安心です。
老人ホームで暮らすデメリット
老人ホームの種類によって受けられる介護サービスが違う
老人ホームにはさまざまな種類があります。老人ホームの種類によって受けられる介護サービスが違い、健康な高齢者を受け入れているところは、要介護度が高くなると住めなくなることもあるので、契約条件をよく読みましょう。
集団生活がストレスになることがある
有料老人ホームの中には、介護サービスの一環としてレクレーションやイベントなどを行うところもあります。集団生活がストレスになるかもしれません。
高額な費用がかかる
入居一時金(数百万円〜数千万円)や月額費用(数十万円)など、他の選択肢に比べて費用が高額になります。
どこを選ぶ?自分に合った「終の棲家」を見つけるためのチェックリスト
どの選択肢が最適かは、個々の状況によって異なります。以下のポイントをチェックリストとして活用し、ご自身やご家族で話し合ってみましょう。
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健康状態と将来の不安: 現在の健康状態や、将来的に介護や医療が必要になる可能性を考慮していますか?
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経済的な余裕: 各選択肢にかかる費用を、年金や貯蓄でまかなえるかシミュレーションしましたか?
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家族との関係: 近くに頼れる家族はいますか?家族はどのようなサポートを期待していますか?
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ライフスタイルと価値観: これまで通りの自由な生活を優先したいか、それとも安心・安全な環境を優先したいか、何を最も重要視しますか?
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立地: 家族が訪問しやすいか、近隣に買い物や医療機関があるかなど、立地条件を確認しましたか?
まとめ
「終の棲家」を選ぶことは、人生の大きな決断です。それぞれの選択肢には、メリットとデメリットがあり、正解は一つではありません。ご自身の健康状態や経済状況、そして何よりも「どのような生活を送りたいか」という価値観を大切にしながら、ご家族ともよく話し合い、納得のいく答えを見つけてください。早めに情報収集を始め、実際に施設を見学するなど、時間をかけて検討することをお勧めします。