認知症になる前に!家族に迷惑をかけないための相続対策と信託活用術

高齢化社会において「認知症」は、もはや他人事ではありません。今後万が一、認知症になってしまった場合には、介護の問題はもちろんですが、意思能力が低下することによって法律行為や契約行為ができなくなる点にも目を向けておかなければなりません。

今回は、認知症になる前に行っておきたい相続対策について解説します。

生前贈与イメージ

認知症になる前にできる相続対策

認知症になってしまったら、意思能力がない人の法律行為はその内容が本人の意思によるものかどうかが分からないため、原則として無効になってしまいます。

そういった事態にならないために認知症前にできる相続対策は重要になってきます。

認知症になる前にすべき相続対策

認知症になる前だからこそすべき相続対策は次の4つです。それぞれについて詳しく解説していきます。

  • 遺言書の作成
  • 任意後見の利用
  • 家族信託の利用
  • 相続税対策としての生前贈与など

遺言書の作成

遺言書には、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類がありますが、この中で信用力の高い公正証書遺言をおすすめします

公正証書遺言とは、公証人立ち合いのもとに作成される遺言書であり、形式の不備で無効になることはほぼ無く、証役場に保管されるため、滅失・棄損・破棄・隠匿・偽造・変造などの恐れがないなどから確実性の高い遺言書を作成することができるからです。

公正証書遺言のメリット
  • 公証役場で作成するため、法的に無効になりにくい
  • 紛失や改ざんのリスクがない
  • 裁判所の検認手続きが不要で、スムーズに相続手続きができる

任意後見の利用

任意後見制度とは、将来の意思能力の消滅に備えて、ご自分の財産管理などを代理してくれる人を任意後見契約によってあらかじめ決めておく制度です。

契約を結ぶ法律行為であるため、認知症になったあとでは利用することができません。認知症前に契約しておき、実際に意思能力が無くなった場合には、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらってから初めて効力が生じる流れになります。

任意後見契約のメリット
  • 親が元気なうちに、信頼できる家族を後見人に指定できる
  • 判断能力が低下しても、スムーズに財産管理ができる
  • 成年後見制度よりも自由度が高い

家族信託の利用

家族信託とは、認知症などによってご自分の財産を管理することができなくなった場合に備えて、財産の管理運用処分することができる権利を家族に与えておく信託契約の制度です。

任意後見制度と同様に契約であることから、意思能力のある認知症前に行う必要があります。

家族信託のメリット
  • 認知症になっても、受託者(家族)が財産を管理できる
  • 成年後見制度のような制約がなく、自由度が高い
  • 不動産の売却や預貯金の管理がスムーズにできる

相続税対策としての生前贈与

生前贈与は、生前にあらかじめ財産を譲り渡しておくことです。その後、贈与した人が認知症になったとしても、贈与された財産は、新たな所有者が管理するため、贈与者は無関係となります。

生前贈与は、贈与する人が「あなたにこの財産を譲りますよ」、贈与を受ける人が「わかりました」と双方の合意によって行われる契約になります。したがって、意思能力が無くなったあとでは行うことができません。

ただし、年間110万円を超える生前贈与を受けると贈与税がかかる場合がある点に注意が必要です。
贈与税には様々な控除や特例が用意されているので、生前贈与を行う際には贈与税をシミュレーションし利用できる控除や特例を漏れなく利用するのが大切です。

まとめ

認知症になって判断能力を失ってしまうと、相続対策ができなくなってしまいます。
また、相続対策ができなくなるだけでなく、銀行口座の凍結や保険解約、実家売却等の契約行為が行えなくなるかもしれません。

結果として、認知症になってしまうと自分の財産も自由に管理できなくなってしまいます。

そのため、認知症になって判断能力を失う前に相続対策を行っておくのが大切です。
認知症を発症する前であれば、任意後見制度や家族信託、遺言書の作成等といった様々な相続対策を行えます。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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