「争族」を避ける!知っておくべき相続のトラブルの原因と対策

遺産相続が「争族」になりやすい人や親族関係には特徴があります。そうしたパターンをしっかり理解していれば、相続トラブルの回避もそれほど難しくはありません。

今回の記事では相続においてのトラブルで争族が起きてしまう原因やその対処法を解説します。

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争族とは何か?

争族とは、相続が発生した際、親子や兄弟などの相続人の間で争いが起こっていることを揶揄する言葉です。

相続手続きは、相続人全員で進めていくのが原則です。遺言書がある場合など一部例外もありますが、基本的に相続人の間で話し合いがまとまらないと、相続手続きをスムーズに進められません。したがって、「相続」が「争族」になってしまうのは、被相続人にとっても相続人にとっても好ましくありません。

「相続」が「争族」になるきっかけ

「相続」が「争族」になってしまうのには、何かしらのきっかけがあります。そのきっかけを把握しておくことで、「相続」が「争族」になることを防げるケースも少なくありません。そこで、「相続」が「争族」となる要因について、いくつかあります。

遺言書の内容がきっかけで争族になる

遺言の状況をめぐってトラブルになりやすいのが、遺言書の内容が「不公平に感じられる」ケースです。たとえば「特定の相続人(もしくは法定相続人以外の人)にすべての財産を相続させる」といった極端な内容や、「愛人に財産を譲る」のように実の家族には納得しにくい内容の場合、相続人の中に不満を募らせる人がいたとしても不思議ではありません。

遺言書が不完全なためにトラブルになることもあります。被相続人が自己流で遺言書を作成した結果、法的には無効となった遺言書の解釈をめぐって相続人同士が衝突する可能性も考えられるでしょう。

相続財産の内容がきっかけで争族になる

相続財産の内容もトラブルの原因になることがあります。特にトラブルの種になりがちなのが「不動産」です。不動産は維持管理に手間がかかるうえ、相続の際には分筆などの手続きが必要になることが少なくありません。
このためだれが不動産を相続するか、どのように分割するかで揉めがちですし、場合によっては利用価値のほとんどない不動産を互いに押し付け合うケースもあります。

相続人同士の関係や相続関係がきっかけで争族になる

もともと家族同士や親族同士の仲が悪い、もしくは疎遠になっている場合もトラブルになりがちです。仲違いを避けるために普段は顔を合わせないようにしていても、相続が発生すればどうしても葬儀や遺産分割協議などで接触が増えます。そのような場で互いの主張がぶつかれば、大きなトラブルに発展しても不思議ではないでしょう。

相続人の中に、被相続人からえこひいきされていた人や、逆に被相続人に非行(虐待や侮辱など)を働いていた人がいた場合、被相続人との関係や相続人同士の関係が極端に悪化することも考えられます。

生前贈与の有無や寄与分の主張がきっかけで争族になる

特定の相続人や相続人以外の人が高額の生前贈与を受け取っていた場合、他の相続人が「生前贈与された分を含めて分割すべき」と主張して、対立に発展するケースがあります。

生前贈与された利益を特別受益と認めるかどうかや、持ち戻しの金額計算をめぐったトラブルも考えられます。

争族を避けるためには

スムーズに相続手続きを進めるためには、争族発生を予防することが大切です。争族を避けるためには生前対策がカギになります。そこで、争族を避けるための生前対策方法について、いくつか解説していきましょう。

遺言書の内容に気を配る

被相続人が遺言書を作成する場合、その内容に気を配ることで多くのトラブルを防ぐことができます。

まず最初に気を配るべきなのは遺言書の形式です。遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言といった種類がありますが、中でも自筆証書遺言については、自己流で作成してしまうと無効になりかねません。

一方、公正証書遺言書とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。法律の専門家である公証人の関与の下で作成された公正証書遺言書は、法的な不備が生じにくいです。そのため、遺言書を作成するのであれば、公正証書遺言書にするほうが好ましいでしょう。

遺言書で指定する相続人や、相続人ごとの相続分に気を配ることも大切です。生前に目をかけていた人や世話になった人により多くの財産を残したいという気持ちも理解できますが、あまり極端な内容だと他の相続人の不満につながります。

公平な配分をするか、少なくとも特定の相続人を優遇することについて遺言書の中にきちんと書き添えておけば、トラブルの可能性を減らすことができるでしょう。

生前贈与を活用する

生前贈与を活用することで、相続発生前に特定の相続人へ自身の財産を承継させることが可能です。それにより、争族発生を予防することができます。贈与税の配偶者控除や相続時精算課税制度など贈与税の負担を軽減する方法もあるので、生前贈与は争族対策として有効な手段の一つです。

家族信託を利用する

争族発生の生前対策方法の一つに家族信託の活用もあげられます。家族信託とは、家族間で行なう財産の信託行為のことです。

家族信託を活用するための信託契約では、信託行為の内容や当事者だけではなく、契約終了事由およびその後の財産の帰属者も定めます。

まとめ

「相続」が「争族」になってしまうと、状況によっては相続手続きを進めることが困難となるケースもあります。そのためには、争族を避けるためのポイントを把握しておくことが大切です。

争族が発生するきっかけは、相続財産の内容や相続人同士の関係などさまざまです。自身の相続手続きで争族が発生する要因があるか否かを事前に確認しておきましょう。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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