新NISAで始める「インカムゲイン戦略」:高配当株と分配型投信の選び方

新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、多くの人が資産形成に関心を持っています。その中で、ただ資産を増やすだけでなく、「今の生活を少し豊かにしたい」「定期的なお小遣いが欲しい」というニーズに応えるのが、「インカムゲイン(配当金・分配金)戦略」です。

株価の値上がり益(キャピタルゲイン)を狙うのも魅力的ですが、売却しないと現金が手に入らないのが難点。一方、インカムゲインは「保有しているだけで、定期的に現金が入ってくる」ため、モチベーションを保ちやすく、精神的な安定にもつながります。

この記事では、新NISAの非課税メリットを最大限に活かしながら、高配当株や分配型投資信託を選ぶための「インカムゲイン戦略」の基礎と実践テクニックを解説します。

1. なぜ新NISAで「インカムゲイン」なのか?

通常、株式の配当金や投資信託の分配金には、約20%(正確には20.315%)の税金がかかります。

例えば、年間10万円の配当金が出ても、手取りは約8万円になってしまいます。

しかし、新NISA口座(特に「成長投資枠」)を使えば、この約20%の税金がゼロになり、配当金をまるまる受け取ることができます。

これが「複利効果」を生む再投資派にとっても、「お小遣い」として使う派にとっても、極めて強力なメリットとなります。

注意:必ず設定を確認!

新NISAで配当金を非課税で受け取るには、証券会社で「株式数比例配分方式」を選択する必要があります。「郵便局受取」や「銀行振込」に設定していると、NISA口座で保有していても課税されてしまうので、最初に必ずチェックしましょう。

2. 戦略①:日本の「高配当株」を狙う

インカムゲイン戦略の王道は、やはり日本の個別株です。為替リスク(円高・円安の影響)がなく、馴染みのある企業の株主になれる安心感があります。

選ぶべき「高配当株」の3つの条件

単に「配当利回りが高い(例:5%以上)」というだけで飛びつくのは危険です。業績が悪化して株価が下がった結果、見かけ上の利回りが上がっているだけの「罠銘柄」の可能性があるからです。

以下の3点をチェックしましょう。

  1. 安定した配当実績(減配していないか)

    • 過去数年〜10年程度、配当金を減らしていない(非減配)、あるいは増やし続けている(増配)企業を選びましょう。「累進配当(るいしんはいとう)」を宣言している企業は特に狙い目です。

  2. 無理のない配当性向(30%〜50%程度)

    • 利益のうち、どれくらいを配当に回しているかを示す指標です。これが80%や100%を超えている企業は、無理をして配当を出しているため、将来的に「減配」のリスクがあります。

  3. ビジネスモデルの安定性

    • 通信キャリア、金融、商社など、景気の波があっても底堅い収益が見込める業界の大手企業がベターです。

「高配当ETF」という選択肢

個別株を選ぶのが難しい場合は、複数の高配当株にまとめて投資できるETF(上場投資信託)がおすすめです。

  • NF・日経高配当50 ETF (1489) など

    • これ一本で、日本の代表的な高配当企業数十社に分散投資できます。利回りも3〜4%程度期待でき、銘柄入れ替えも自動で行ってくれます。

3. 戦略②:米国の「連続増配株・ETF」を狙う

世界最強の経済を持つ米国株もインカムゲインの宝庫です。米国企業は株主還元への意識が高く、「25年連続増配」「50年連続増配」といった企業がゴロゴロ存在します。

米国株高配当ETFの「御三家」

個別株(コカ・コーラやジョンソン・エンド・ジョンソンなど)も良いですが、初心者には以下のETFが定番です。

ETF名称 特徴 利回りの目安
VYM 約400社に広く分散。増配もキャピタルゲインも狙えるバランス型。 3%前後
HDV 財務健全な約75社に厳選。不況に強い銘柄が多い。 3〜4%
SPYD S&P500の中で利回りが高い約80社。不動産や公益など景気敏感株も含む。 4〜5%

【重要】米国株の「税金」の注意点

新NISAで米国株を買う場合、国内の税金(20.315%)は非課税になりますが、米国現地で引かれる税金(10%)はゼロになりません。

また、NISA口座では「外国税額控除(確定申告で米国分の税金を取り戻す手続き)」が使えません。

手取り配当金 = 配当総額 ×(1 - 0.10)

つまり、「完全に非課税にはならず、約10%は引かれる」という点を理解した上で投資する必要があります。それでも課税口座(約28%引かれる)よりは有利です。

4. 戦略③:投資信託の「分配金」ルールが変わった?

投資信託(特に毎月分配型)は、かつてインカムゲイン狙いの主流でしたが、新NISAではルールが変わりました。

「毎月分配型」は新NISA対象外!

新NISAの成長投資枠では、「毎月分配型」の投資信託は除外されています。これは、タコ足配当(元本を削って分配金を出すこと)を防ぎ、長期的な資産形成を促すためです。

狙い目は「隔月(奇数・偶数月)決算型」や「年4回決算型」

毎月はもらえませんが、「年6回(隔月)」や「年4回(四半期ごと)」に決算を行い、分配金を出すタイプの投資信託は新NISAの対象になっているものがあります。

(例:予想分配金提示型のグローバルREITファンドや、高配当株ファンドなど)

ただし、投資信託でインカムゲインを狙う場合、信託報酬(手数料)が高くないかを厳しくチェックしてください。基本的には、ETFや個別株の方が低コストで運用できるケースが多いです。

5. 失敗しないためのポートフォリオの組み方

インカムゲイン戦略で最も怖いのは、「減配」「株価暴落」のダブルパンチです。これを避けるための構成案を紹介します。

おすすめの組み合わせ例

  • コア(核): 全世界株式やS&P500のインデックスファンド(つみたて投資枠で運用し、将来取り崩す用)

  • サテライト(配当): 日本の高配当株ETF + 米国の高配当株ETF(VYMなど)

このように、「国」と「銘柄」を分散させるのが鉄則です。

また、セクター(業種)の偏りにも注意しましょう。例えば、「銀行株」ばかり集めていると、金利政策が変わった時にすべての配当が脅かされるリスクがあります。

6. まとめ:金の卵を産む「ニワトリ」を育てよう

新NISAを活用したインカムゲイン戦略は、まさに「金の卵(配当金)を産むニワトリ(高配当株)」を非課税エリアで育てるイメージです。

  1. 非課税メリット: 日本株なら税金ゼロ、米国株なら10%のみ。

  2. 銘柄選び: 目先の利回りより「減配しない実績」を重視。

  3. 分散投資: 個別株が怖いなら「高配当ETF」を活用する。

株価の上下に一喜一憂せず、「今年もチャリンとお金が入ってきた」と喜びを感じられるのが、この戦略の最大の魅力です。まずは少額から、ニワトリを飼い始めてみませんか?

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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