退職金はどう残す?リスクを抑えて確実に増やす「低金利時代」の運用ポートフォリオ

長年の勤労の末に受け取る退職金は、老後生活の大きな柱となる大切な資金です。しかし、銀行預金の金利が低迷する「低金利時代」において、ただ預けておくだけではインフレに負けて資産が実質的に目減りしてしまうリスクがあります。

老後資金を守りつつ、確実に、そして無理なく増やすための、リスクを抑えた運用ポートフォリオの考え方をご紹介します。

退職金のイメージ

大原則:退職金は「守り」を重視した運用を

現役世代の資産運用は積極的な「攻め」も許容されますが、退職金の運用は「守り」と「確実なリターン」の両立が最重要です。

運用で最も大切なのは「時間軸」

退職後の資産運用は、「いつ、いくら使うか」という資金の使途と時間軸を明確にすることが成功の鍵です。

  1. 当面5年以内に使う資金(生活費、初期費用など)リスクを一切取らず、元本を確保することを最優先します。
  2. 5年〜10年後に使う資金(旅行、家のリフォームなど)低リスクの運用を検討します。
  3. 10年超先に使う資金(介護費、長期生活費など)インフレに打ち勝つための、適度なリスクを取った運用を検討します。

リスクを抑えた「分散投資」のポートフォリオ戦略

低金利時代において、預貯金だけでは資産は増えません。しかし、ハイリスクな商品に全額を投じるのは危険です。そこで、複数の資産に資金を分けて投資する「分散投資」によって、全体のリスクを抑えつつリターンを狙います。

退職金世代の基本ポートフォリオ(例)

資産の種類 投資目的 期待リターンとリスク 推奨割合(目安)
元本確保資産(国内預貯金・国債など) 「守り」:当面の生活費や急な出費への備え 低リターン / 低リスク 30%〜50%
国内・先進国債券 「安定」:利子収入と価格変動リスクの緩和 中低リターン / 低リスク 20%〜30%
国内外のインデックス株式(投資信託) 「成長」:インフレ対策と長期的な資産増加 高リターン / 中リスク 20%〜40%
金・不動産(REITなど) 「ヘッジ」:株式や債券とは異なる値動きによる分散効果 中リターン / 中リスク 5%〜10%

このポートフォリオは、「守り」の資産を全体の半分近くにすることで、精神的な安定いつでも引き出せる流動性を確保しつつ、「成長」と「ヘッジ」の資産でインフレ対策とリターンを狙うことを目的としています。

ポートフォリオを構成する具体的な商品

守りの資金(30%〜50%)

  • 【普通預金・定期預金(特にネット銀行)】流動性が高く、すぐに使える資金として必須
  • 【個人向け国債(変動金利型)】
    発行元が国であるため安全性が非常に高く、半年ごとに金利が見直されるため、将来的な金利上昇にも対応できます。

増やすための資金(50%〜70%)

バランス型投資信託

  • 複数の資産(株式・債券・REITなど)が組み込まれており、一つの商品を買うだけで自動的に分散投資が実現します。
  • 特に「債券の割合が高い」タイプを選べば、リスクを抑えつつ安定的なリターンを狙えます。

先進国株式インデックスファンド

  • 世界経済の成長の恩恵を受けやすく、長期的に安定したリターンが期待できます。
  • NISA(少額投資非課税制度)の非課税枠を活用することで、得られた利益(リターン)をすべて手元に残すことができます。

外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)

  • 比較的低リスクで外貨資産を持てるため、円安によるインフレリスクへの対策(ヘッジ)になります。

運用の成功に必要な「3つの心得」

心得 1:必ず「長期・積立・分散」の基本を守る

特に株式を含む資産運用では、短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点を持つことが重要です。一度に全額を投資せず、数カ月〜数年に分けて少しずつ投資する「時間分散」もリスク軽減に有効です。

心得 2:新NISA(非課税制度)を徹底的に活用する

2024年以降の新NISA制度は、運用益が無期限・非課税となる、老後資金形成に最適な制度です。退職金で資産運用を行う際は、まずはこのNISA枠を最大限に利用しましょう。

心得 3:専門家の「セカンドオピニオン」を利用する

退職金の運用は金額が大きいため、販売会社の担当者の言うことを鵜呑みにせず、**独立系のファイナンシャルプランナー(FP)**などに相談し、中立的な立場からの意見を聞くことが非常に重要です。手数料やリスクについて、必ず納得いくまで確認しましょう。

退職金の運用は、焦らず、堅実に計画を立て、老後の生活を豊かにするための準備期間と考えましょう。

新NISA(少額投資非課税制度)の徹底活用法

退職金で資産運用を始める際、まず最優先で活用すべきは、2024年1月から始まった新NISAです。新NISAの最大のメリットは、運用によって得られた利益(配当金や売却益)が生涯にわたって非課税になることです。

項目 詳細 退職金運用における重要性
非課税保有限度額 生涯で最大 1,800万円(内、成長投資枠1,200万円) 大きな非課税枠:退職金の一部を非課税で効率的に運用できる。
非課税保有期間 無期限 長期運用に最適:期間の制限がないため、時間をかけて複利効果を享受できる。
枠の再利用 投資した商品を売却すると、翌年に非課税枠が復活する 柔軟な資金管理:必要な時に売却し、再度余裕ができたら投資を再開できる。

新NISAの「二つの枠」の使い分け

新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、退職金運用ではこれらを組み合わせて利用します。

つみたて投資枠(年間120万円)

用途:低コストで長期的な資産形成に向いた厳選された投資信託に投資。

おすすめの活用法:毎月少額ずつ、安定的なインデックスファンドに積立を設定し、長期的にインフレに負けない土台を築きます。

成長投資枠(年間240万円)

用途:上場株式や幅広い投資信託に一括または積立で投資

おすすめの活用法:退職金の一部を使い、一括でバランス型ファンドや高配当株などに投資します。流動性の高い上場投資信託(ETF)を組み入れるのにも適しています。

専門家によるセカンドオピニオンの重要性

退職金は人生で最も大きなまとまった資金であり、一度失敗すると取り返しがつきません。販売手数料が高すぎる商品や、不必要なリスクを取る商品を買ってしまう失敗を防ぐため、必ず第三者の意見を聞きましょう。

退職金やお金に対して漠然と不安を抱えているのであれば「資産運用」を検討してみてはどうでしょう?お金の不安を相談するなら投資信託相談プラザのセミナーに参加してみては?

店舗またはオンラインでの個別相談はこちらから
本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

関連記事

前の記事へ

親の認知症で口座が凍結!?家族が困らないための「財産管理委任契約」入門