老人ホームの入居一時金、保険で備える? それとも貯蓄? 賢い準備方法
「素敵な老人ホームを見つけたけれど、入居一時金が1,000万円もするらしい」 「親の介護費用、今の貯金だけで足りるのか不安でたまらない」
40代・50代となり、親の介護や自分自身の老後が現実味を帯びてくると、多くの人が直面するのが「老人ホームのお金」問題です。 特に、民間有料老人ホームのパンフレットに踊る「入居一時金:数百万円〜数千万円」という数字を見て、目の前が真っ暗になる方も少なくありません。
「こんな大金、今からどうやって用意すればいいの?」 「民間の介護保険に入って、一時金が出るようにしておくべき?」
保険の営業担当者は「保険で備えましょう」と言いますが、ファイナンシャルプランナーなどの専門家は「貯金で十分」と言うことが多いこの問題。
結論から申し上げますと、「入居一時金のために保険に入るのは、コスパが悪い」というのが現代の定説です。 最近の老人ホーム事情の変化により、必ずしも大金を用意する必要がなくなってきているからです。
この記事では、老人ホーム入居一時金の仕組み(正体)と、保険ではなく「賢い資産管理」で備えるべき理由、そして具体的な準備のロードマップについて解説します。
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1. そもそも「入居一時金」とは何のお金か?
敵(コスト)を知らなければ、対策は立てられません。 入居一時金とは、決して「入会金」や「権利金」のような、払ったら消えてなくなるお金ではありません。
その正体は、「家賃の前払い」です。
仕組み:「先払い」か「月払い」かの違い
民間の有料老人ホームの料金プランは、大きく分けて2つあります。
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一時金プラン: 最初に500万円や1,000万円をドカンと払い、その分、毎月の支払額を安くするプラン。
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月払いプラン(一時金ゼロ): 最初の支払いは0円だが、毎月の支払額が高くなるプラン。
つまり、一時金とは「長生きした場合に得をするための、家賃の先出し」に過ぎません。 一昔前は「一時金必須」の施設が多かったのですが、現在は競争激化により、「一時金ゼロプラン」を選べる施設が激増しています。
「必ずしも数百万、数千万円の現金を用意しなくても、施設には入れる」。 まずはこの事実を知り、過度な不安を取り除くことがスタートです。
2. なぜ「保険」で備えるのは不利なのか?
「それでも、選択肢を広げるために一時金を用意したい」という場合、なぜ民間の介護保険(一時金給付タイプ)はおすすめできないのでしょうか。 理由は3つあります。
理由①:支払いのハードルが高い
介護保険の一時金を受け取るには、「要介護2以上」や「要介護3以上」といった認定が必要です。 しかし、最近の有料老人ホームは「自立」や「要支援」の段階から入居できるところも多く、「施設に入りたいのにお金(保険金)が下りない」というミスマッチが起こり得ます。
理由②:使途が限定されてしまう
保険料として払ってしまったお金は、介護状態にならなければ戻ってきません(掛け捨ての場合)。 もし、あなたが「最後まで自宅で過ごしたい」と思ったり、「公的な特別養護老人ホーム(一時金不要)に入れた」場合、その保険料は無駄になります。
理由③:インフレに弱い
今、「介護になったら500万円」という保険に入ったとします。 しかし、20年後、物価上昇によって入居一時金の相場が「800万円」になっていたら? 保険金額は固定されているため、価値が目減りして役に立たない可能性があります。
3. 最強の備えは「現金(貯蓄・資産)」である
では、何で備えるべきか。答えはシンプルに「現金(資産)」です。
現金であれば、
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一時金が必要なホームにも払える。
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一時金ゼロのホームに入り、毎月の補填にも使える。
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自宅をバリアフリー改修する費用にも使える。
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元気なら、世界一周旅行にも使える。
「流動性(自由度)」こそが、不確実な老後における最強の武器です。 「介護用」というラベルを貼って保険会社にお金をロックするのではなく、自分の手元で自由に使える状態で持っておくのが正解です。
「自宅」も立派な一時金になる
持ち家がある方は、自宅そのものが「入居一時金」の原資になります。 施設に入る=自宅が空くということです。 「施設に入所するタイミングで自宅を売却し、その売却益を一時金に充てる」。これが日本のシニアの王道パターンです。 都心部の持ち家なら数千万円、地方でも数百万円にはなるでしょう。それがそのまま、あなたの老後の切り札になります。
4. 目標額はいくら? 3つの松竹梅コース
「貯金で備える」といっても、いくらあれば安心なのでしょうか。 希望する施設のグレード(松竹梅)によって、目標額を設定しましょう。
【梅コース】公的施設メイン(目標:貯金300万円〜)
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対象: 特別養護老人ホーム(特養)
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特徴: 入居一時金は不要(0円)です。
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準備: 特養は人気で待機期間があるため、つなぎの期間や、引っ越し費用、家具の買い替えなどのために、予備費として300万円程度あれば安心です。
【竹コース】一般的な民間ホーム(目標:貯金500万円〜1,000万円)
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対象: 中価格帯の介護付き有料老人ホーム
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特徴: 一時金0円プランもありますが、一時金を払って月々の負担を軽くしたい場合、300万〜600万円程度が相場です。
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準備: 自宅の売却益や退職金で賄える範囲です。
【松コース】高級老人ホーム(目標:貯金2,000万円〜)
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対象: ホテルのような豪華な共用部、手厚い人員配置のホーム
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特徴: 一時金が数千万円〜億単位になります。
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準備: これは現役時代の貯金だけで作るのは困難です。不動産資産や事業承継、あるいは相続資産がある富裕層向けの世界です。
多くの人にとって現実的なのは「梅〜竹コース」です。 つまり、手元の現金で500万円程度を確保し、あとは年金収入の範囲内で払えるホームを探す(または自宅を売る)というのが、最も再現性の高い戦略です。
5. 40代・50代から始める「賢い準備ロードマップ」
目標が見えたら、あとは実行あるのみです。 保険料を払うつもりで、以下のステップで「自分年金」を作りましょう。
ステップ①:新NISAで「介護枠」を作る
掛け捨ての介護保険に月1万円払うなら、その1万円を「新NISA(つみたて投資枠)」に回してください。 「オール・カントリー」などの全世界株式で20年間運用すれば、元本240万円が400万円以上に育つ可能性も十分にあります。 このお金は、介護に使わなくてもOK。何にでも使える「最強の保険」です。
ステップ②:自宅の「査定」をしておく
「うちは古いから売れないだろう」という思い込みは危険です。 無料の一括査定サイトなどを使い、「今の家がいくらで売れそうか(市場価値)」を把握しておきましょう。 「いざとなったら1,000万円にはなる」とわかっているだけで、老後不安の9割は消えます。
ステップ③:どうしても不安なら「認知症保険」だけ検討
貯金で備えるのが基本ですが、「認知症になって資産が凍結されるのが怖い」という場合のみ、「認知症診断で一時金が出る保険」を検討する価値があります。 これは施設費用というより、後見人の手続き費用や、家族への当座の資金として役立ちます。
まとめ:老人ホームは「現金」で選ぶ時代
「老人ホームに入るには、大金が必要だ」 このイメージは、半分正解で、半分間違いです。
高級な施設に入りたければ大金が必要ですが、標準的な施設であれば、「年金 + 月払い」で対応できる時代になっています。 一時金は必須ではありません。
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民間の介護保険(一時金タイプ)はコスパが悪いので入らない。
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その分の予算を「新NISA」で運用し、自由な現金を増やす。
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いざ入居する時は、「自宅売却」または「月払いプラン」を選択する。
このシンプルな戦略こそが、不確実な未来に対して最も柔軟に対応できる「賢い準備」です。 不必要な保険料で家計を圧迫するのをやめ、ご自身の手元に、確実な資産を積み上げていきましょう。
