変額保険で資産形成はアリ? ソリシターが勧める「保険で投資」のメリット・デメリット
「万が一の死亡保障を備えながら、老後資金も増やせますよ」 「銀行に預けておくより、世界株で運用するこの保険の方がずっとお得です」
保険の無料相談やマネーセミナーに行くと、ソリシター(保険募集人)から、かなりの高確率で提案される商品があります。 それが「変額保険(へんがくほけん)」です。
「保障」と「投資」がセットになったこの商品は、一見すると「一石二鳥」の夢のようなツールに見えます。 しかし、SNSや投資家の間では「手数料の塊」「情弱(情報弱者)向け商品」と酷評されることも多く、賛否が真っ二つに分かれています。
一体、どちらが真実なのでしょうか?
結論から言うと、「新NISAの枠が余っているなら、変額保険をやる必要はない」というのが、資産形成の合理的な答えです。 しかし、変額保険にはNISAにはない「即効性のある保障」という独自の武器があるのも事実です。
この記事では、保険のプロが熱心に勧めてくる「変額保険」のからくりと、絶対に知っておくべき「見えない手数料」の正体、そしてNISAと比較した際の決定的な違いについて解説します。
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1. 変額保険とは? 「投資信託」との違い
まずは仕組みを理解しましょう。 変額保険とは、支払った保険料の一部を、保険会社が用意した投資信託(特別勘定)で運用する保険です。
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定額保険(従来の保険): 運用は保険会社任せ。将来受け取る金額が「決まっている」。
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変額保険: 運用先を自分で選ぶ(世界株や債券など)。運用成績によって、将来受け取る解約返戻金や満期金が「変動する(増えたり減ったりする)」。
「中身は投資信託」と言われるのはこのためです。 しかし、普通の投資信託と決定的に違うのは、「死亡保障(最低保証)」がついている点です。
例えば、運用が大失敗して資産が暴落していたとしても、保険期間中にあなたが亡くなった場合は、契約時に決めた「基本保険金額(例:1,000万円)」が全額支払われます。 これが、投資信託にはない変額保険だけの強みです。
2. なぜソリシターはこれを勧めるのか?
保険ショップやファイナンシャルプランナー(FP)が、変額保険を強力にプッシュするのには理由があります。 もちろん「インフレ対策になる良い商品だから」という側面もありますが、ビジネス的な裏事情も無視できません。
それは、「販売手数料が高いから」です。
月数千円の「掛け捨て保険」や、手数料無料の「NISA(投資信託)」を案内しても、代理店の利益は微々たるものです。 一方、変額保険は保険料が高く、契約が長期にわたるため、販売側に入るコミッション(手数料)が高額になる傾向があります。
「あなたのために」という言葉の裏には、「売りたい商品」という事情がある可能性を、頭の片隅に置いておく必要があります。
3. 変額保険の「3つのメリット」
とはいえ、変額保険が詐欺商品というわけではありません。活用できる人には明確なメリットがあります。
メリット①:死亡保障の「即効性」
ここがNISAとの最大の違いです。 NISAで毎月3万円積み立てた場合、1ヶ月後に亡くなっても、家族に残せるのは「3万円(+わずかな運用益)」だけです。 しかし、変額保険(有期型)なら、1回保険料を払っただけで、亡くなった時には「1,000万円」が家族に入ります。 「資産形成の途中」で死んでしまうリスクをカバーできるのは、保険ならではの機能です。
メリット②:生命保険料控除で「節税」になる
変額保険の保険料は、「一般生命保険料控除」の対象です。 年末調整や確定申告で申請すれば、所得税・住民税が少し安くなります。 NISAにはこの「払うだけで節税になる」機能はありません(iDeCoにはあります)。
メリット③:強制力がある(やめにくい)
意志が弱く、「貯金があってもすぐ使ってしまう」「株が下がるとすぐ売ってしまう」という人にとっては、後述するペナルティの存在が逆に「強制的な積立機能」として働きます。
4. 致命的かもしれない「3つのデメリット」
これに対し、資産形成を目的とする場合に足かせとなる強烈なデメリットがあります。
デメリット①:手数料が「高くて見えない」
変額保険のコスト構造は複雑です。
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保険関係費用: 死亡保障や事務コストに充てられる費用。
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運用関係費用: 投資信託の信託報酬のようなもの。
問題は、「保険関係費用」がいくら引かれているか開示されないことです。 一般的に、支払った保険料の全額が投資に回るわけではありません。最初の数年間は、かなりの割合が手数料として引かれ、残りの少額だけが投資に回ります。 そのため、同じ「世界株」に投資していても、NISA(インデックス投資)に比べて運用効率は圧倒的に悪くなります。
デメリット②:10年以内の解約で大損する「解約控除」
変額保険には、早期解約への重いペナルティがあります。これを「解約控除」と言います。 契約から10年以内に解約すると、積立金からガッポリと違約金を引かれます。
「急にお金が必要になった」「もっと良い投資商品が出た」と思っても、10年間は資金がロック(拘束)されるのと同じです。 いつでも自由に売却・現金化できるNISAに比べて、流動性は著しく低いです。
デメリット③:満期がある(有期型の場合)
多くの変額保険(有期型)には満期があります(60歳や65歳など)。 もし、満期のタイミングで「リーマンショック級の暴落」が起きていたらどうなるでしょうか? 資産が大きく減った状態で、強制的に現金化(利益確定)されてしまいます。 NISAなら「回復するまで数年待つ」ことができますが、満期のある保険ではそれができません。
5. 究極の比較:「セット」vs「別々」
ここで、多くの人が悩む選択肢をシミュレーションしてみましょう。 「月2万円」の予算がある場合、どちらが資産が増えるでしょうか?
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プランA:変額保険 月2万円で、死亡保障1,000万円+資産運用。
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プランB:掛け捨て保険 + NISA(分離案) 月3,000円で「掛け捨て保険(保障1,000万円)」に加入。 残り1万7,000円を「新NISA(S&P500など)」で運用。
【結論】 ほとんどのケースで、「プランB(分離案)」の方が、将来受け取れる金額は多くなります。
理由はシンプルで、変額保険の高い手数料を払うよりも、コスト最安のネット証券でNISAを運用した方が、複利効果が最大化されるからです。 また、プランBなら、途中で「保険はいらない」と思えば保険だけ解約し、投資は続けるといった柔軟な対応が可能です。
「保険と投資は混ぜるな」。これがマネーリテラシーの鉄則と言われる所以です。
6. それでも変額保険が「アリ」な人
では、変額保険は絶対にナシなのでしょうか? いいえ、以下の条件に当てはまる人には、有効な選択肢になります。
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新NISAやiDeCoの枠(計2,000万円以上)をすでに使い切っている人。
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さらなる運用先として、税制優遇のある保険を使うのはアリです。
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相続税対策をしたい富裕層。
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死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があります。現金で残すより、保険で残す方が相続税が安くなります。
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「どうしても貯金ができない」浪費家タイプの人。
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NISAだとすぐに引き出して使ってしまう人は、ペナルティのある保険で強制的にロックする方が、結果的にお金が残ります。
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まとめ:その商品は、誰のためのものか?
ソリシターが言う「保険で投資もできますよ」は嘘ではありません。実際に増える可能性はあります。 しかし、「もっと効率よく、もっと自由に、もっと安く増やせる方法(新NISA)」があるという事実も忘れてはいけません。
変額保険は、高性能なスポーツカーのようなものです。 機能は凄いですが、燃費(手数料)が悪く、運転(契約維持)が難しい。 一方、新NISAと掛け捨て保険の組み合わせは、燃費の良いハイブリッド車です。
これから資産形成を始める普通の家庭であれば、まずは「掛け捨て保険」で最低限の保障を確保し、残りの資金を「新NISA」に全振りする。これが、手数料を搾取されずに資産を最大化する、最も堅実なルートです。
