【2025年年金改革法案】基礎年金の底上げで損する世代、得する世代は?
2025年5月に政府と主要政党が年金制度改革法案の修正内容で合意し、厚生年金の積立金を活用して将来の基礎年金の底上げをする「基礎年金の底上げ」に関する内容が注目を浴びています。
20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金(基礎年金)は少子高齢化の影響などで、過去30年と同様の横ばいの経済状況が続くと、その給付水準が30年後には約3割減少する見通しとなっており、対策が急務となっている問題だ。
今回はそもそも「基礎年金」とは?という基本から、どの世代に影響があるのか、今後の見通しまでを詳しく解説していきます。
年金の種類について
まずは、年金の種類についてです。年金は、公的年金と私的年金に分かれており、それぞれの違いがあります。
公的年金とは
「公的年金」とは、国が運営する年金全体を意味しています。日本では「国民皆年金」といって、20歳以上60歳未満の全ての国民が公的年金に加入することになっています。
一般的には「国民年金」や「厚生年金」などが該当します。多くは老齢年金という形で受け取りますが、状況によっては障害年金や遺族年金という形で受け取ることもあります。
私的年金とは
私的年金とは、民間の保険会社など政府以外の組織が運営している年金制度のことです。加入は任意であり、公的年金とは別に企業が福利厚生として用意する年金や、個人が自分で用意する年金のことです。
企業年金や個人年金保険、iDeCo(イデコ)などが該当します。
日本の年金制度は3階建て
年金は高齢になったり、障害を負ったり、生計を支えていた大黒柱を失ったりした場合に受け取ることができる、社会保障制度の一つです。日本の公的年金を含む年金制度は、「3階建て」の構造となっています。
日本の年金制度の1階部分は老後の生活費の土台となる基礎部分に該当する国民年金です。
2階部分とされる年金は厚生年金で1階部分の国民年金に上乗せして給付を受けられます。
日本の年金制度の3階部分とされるのは、公的年金を補って老後の生活をより豊かにするための私的年金です。
基礎年金とは?
基礎年金とは、20歳~60歳未満の日本国内に住む人、全員に対して加入が義務となっていて、20歳から60歳まで保険料を納めれば、老後に一定額の年金がもらえる年金制度のことをいいます。
今回の法案ではこの基礎年金の底上げをしようというのが今回の「年金制度改革法案」です。
基礎年金の底上げとは?
今回の改革で特に注目されているのは、将来の基礎年金(国民年金)の給付水準が下がることを防ぐために「厚生年金の積立金を使って基礎年金を底上げする」という点です。
現状、国民年金(基礎年金)と厚生年金の二つのお財布のうち、会社員が強制的に支払う厚生年金のお財布と、自営業や非正規雇用が払う国民年金のお財布の中身には大きな隔たりがあり、厚生年金のお財布の方がゆとりがあります。
今回は、この厚生年金のお財布の一部を使って、基礎年金を増やそうという案です。
得する世代、損する世代は?
厚生労働省の試算では、今回の年金制度改革の実施により、「得をする世代」と「損をする世代」が出てきます。
得する世代
40代女性:65歳から平均寿命まで受給する場合のモデルケースで、生涯の給付額は295万円プラス
50歳男性(就職氷河期世代):生涯の給付額は170万円プラス
損する世代
現在63歳以上の男性や67歳以上の女性については現行より受給額がマイナスとなり、最大のマイナスと試算されている70歳男性では、生涯の受給総額で23万円目減りするとしており、この世代の方々は損をする世代と言えます。
つまり、今回の年金改革では若者から中年までにとってはこの改革はプラスが多く、65歳以上のシニア世代から見るとマイナス要素が多いと言えます。
財源はどこから?
今回の基礎年金の底上げについては厚生年金の積立金だけでなく、税金の投入を前提にしています。
今回の改革には大きく分けて、財源として考えられるもの主なものは2つです。
厚生年金の積立金
基礎年金部分の底上げに必要となる厚生年金積立金の流用額は65兆円と試算されている
国庫
もともと基礎年金の財源は、保険料と税金(国庫)で半分ずつ負担しています。
基礎年金の給付水準を上げれば、当然この国庫負担も増えるわけで、厚労省は年間1兆〜2兆円の追加が必要になる可能性があると試算しています。
今後の制度持続性について
今回の案について実際に導入するかは、2029年に実施する年金の財政検証で基礎年金の給付水準低下が見込まれる場合で、実施する判断をする方針としている。
まとめ
2025年の年金改革法案では、基礎年金の給付水準の低下に備えて、厚生年金の積立金を活用する「底上げ措置」が法案に盛り込まれました。
これにより、若者や現役世代は将来の年金が増える可能性がある一方で、現在年金を受け取っている高齢者には減額の影響が及ぶかもしれません。
年金を知ることは、老後のそれぞれの生活を考えるうえで避けて通れません。ぜひ年金の正しい知識をベースに、定年前から老後生活を考えていただければと思います。