年金の学生特例の追納期限10年が過ぎた場合の対処法とは?

国民年金は公的年金なので20歳になったら支払い義務が発生しますが、学生納付特例制度は10年まで追納が認められています。
しかし、うっかり追納期限が過ぎてしまった場合はどうすればよいのでしょうか?

今回の記事では国民年金の学生納付特例期間である10年過ぎた時にどう対処すればよいのか、、どれくらい年金受給額が減るのかを詳しく解説していきます。

年金制度イメージ

学生納付特例制度とは

国民年金の学生特例とは、収入のない学生のために申請することにより国民年金の保険料の納付が猶予される制度です。

対象者

・学生納付特例制度対象校に在学している(修業年限1年以上)

学生本人の前年の所得が「128万円(令和2年度以前は118万円) + 扶養親族等の数 × 38万円 + 社会保険料控除等」以下である

・日本在住で20歳以上の学生

特徴 学生納付特例制度の利用期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれる
保険料の追納 10年以内であれば追納が可能

国民年金の学生特例の追納をしないとどうなる

もし学生納付特例制度で猶予されていた保険料を追納しなかった場合は、以下2点のことを想定しておく必要があります。

  • 将来もらえる年金額が減る
  • 障害年金や遺族年金を受給できない場合がある

将来もらえる年金額が減る

老齢基礎年金を満額受給できるのは、全期間である20~60歳までの40年間(480ヶ月)に保険料を全額納付した人です。保険料を全期間納付した場合、受給できる年金額は令和7年度の満額で83万1696円(月額6万9308円)ですが、未納期間があるとその月数分だけ将来受け取れる年金額が減額されます。

年金受給額=その年の満額の年金受給額×国民年金保険料の納付月数÷480ヶ月

学生納付特例制度を利用し、その猶予期間の保険料を追納しなかった場合、「保険料納付済月数」が少なくなるため、将来もらえる年金額が減ります。

例えば、20~60歳までの40年間のうち3年間の未納があれば、保険料の納付月数は444ヶ月です。83万1696円×444(保険料の納付月数)÷480=76万9318円となり、満額納付した場合と受給額が6万円近く変わります。仮に83万1696円を65~90歳までの25年間受給したときの合計額と比べると、約156万円もの差が出てしまうのです。

障害基礎年金や遺族基礎年金を受給できない場合がある

国民年金の保険料を追納しなかった場合、障害基礎年金や遺族基礎年金を受給できない可能性があります。

受給要件のひとつとして、「保険料納付済期間が国民年金加入期間の2/3以上あること」が定められています。国民年金の未納分があると、障害年金や遺族年金の対象外となってしまい、いざというときの備えができないリスクもあります。

年金の学生特例の追納期限が過ぎた場合の対処法

もし学生納付特例制度で猶予されていた保険料を追納しないまま、10年の期限を過ぎてしまった場合は、以下の対処法を検討してみてください。

60歳以降に保険料納付済期間を増やす

一つ目は国民年金の任意加入制度を活用する対処法です。この制度は、60歳以上65歳未満の5年間に保険料を納めることができる制度です。
国民年金保険料は20歳から60歳までの40年間(480か月)納めなければなりません。この制度を利用して480ヶ月に満たない分を任意加入制度で支払うことで追納して受け取れるはずだった年金額をカバーできます。

制度を利用できる人は以下になります。

日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人
・老齢基礎年金の繰上げ受給をしていない人
・20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480カ月(40年)未満の人
・厚生年金保険、共済組合等に加入していない人

定年後も厚生年金に加入して働く

2つ目の対処法としては国民年金ではなく厚生年金を増やして、国民年金の減額分をカバーする方法もあります。

定年後も働いて厚生年金保険料を支払っていれば、経過的加算額として老齢厚生年金の金額に加算されて支払われます。
定年後も引き続き働けば、給与収入を確保できるうえ、厚生年金保険料を納めることになり、年金受給額を増やせます

ただし、再就職先が厚生年金の適用事業所でなければ、厚生年金保険には加入できません。たとえば従業員が5人以下の個人事業所などは、原則厚生年金が適用されないため、年金額を増やすために再就職するのであれば、よく確認しておきましょう。

その他には私的年金としてiDeCoやつみたてNISAなどに加入して年金を増やす方法もありますので検討してみましょう。

まとめ

学生免除された年金について、追納期限10年過ぎた場合の対処法や実際にどのくらい減るのかなどを解説しました。

学生納付特例制度で猶予されていた保険料の追納期限が過ぎてしまうと、保険料の未納期間ができ、将来もらえる年金額が減ってしまいます。ただ、この記事で紹介したように減額分をカバーできる対処法はいくつもあります。老後資金の不安をなくすために、自ら工夫して資産形成を行いましょう。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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