海外在住でも日本の年金はもらえる? 手続き方法と受取口座の注意点

【海外在住でも日本の年金はもらえる? 手続き方法と受取口座の注意点】

「日本を離れて海外で暮らしているけれど、これまで払ってきた年金はどうなるの?」 「海外の銀行口座でも受け取れるの? 手数料ですごく損をするんじゃない?」

海外移住やロングステイを計画している方、あるいはすでに海外にお住まいの方にとって、老後資金の柱となる「日本の公的年金」の扱いは切実な問題です。

結論から申し上げますと、日本国籍があってもなくても、海外に住んでいても、要件を満たしていれば日本の年金は受け取れます。

しかし、日本国内に住んでいる場合とは異なり、「自動的には振り込まれない」という点に注意が必要です。 手続きを忘れたり、税金のルールを知らなかったりすると、受け取りがストップしたり、本来払わなくていい税金(約20%)を天引きされ続けたりするリスクがあります。

この記事では、海外在住者が日本の年金を賢く受け取るための手続き、口座の選び方、そして手取りを減らさないための税金対策について解説します。

1. 大前提:海外に住んでいても年金はもらえる

まず、安心してください。 日本の公的年金(国民年金・厚生年金)は、日本国内に住所があるかどうかに関わらず、受給資格期間(10年以上)を満たしていれば、世界中どこにいても受け取る権利があります。

「払い損」になることはありません。

足りない期間を埋める「カラ期間(合算対象期間)」

「海外に住んでいた時期が長くて、加入期間が10年に満たないかも……」 という方も諦めないでください。

海外在住期間(20歳〜60歳)は、年金額には反映されませんが、「受給資格期間(10年というハードル)」のカウントには含めることができるという特例があります。これを「カラ期間」と呼びます。

  • 日本で納付: 7年

  • 海外在住(未納): 5年

    • → 合計12年となり、受給資格クリア(※もらえる金額は7年分)

この「カラ期間」を証明できれば、年金を受け取れる可能性が高いです。


2. 年金の受け取り口座は「日本」か「海外」か?

次に悩むのが、「どこの銀行で受け取るか」です。 日本年金機構は、日本の銀行だけでなく、海外の現地の銀行口座への「外貨送金」にも対応しています。

それぞれのメリット・デメリットを比較して選びましょう。

選択肢A:日本の銀行口座で受け取る

今まで使っていた日本の銀行に振り込んでもらう方法です。

  • メリット: 手数料がかからず、満額が円で着金する。一時帰国の際に使いやすい。

  • デメリット: 「非居住者」の口座維持が難しい。

    • 多くの日本の銀行は、海外転出(住民票を抜く)と同時に口座解約を求めてきます。

    • SMBC信託銀行(プレスティア)やソニー銀行など、海外在住でも維持できる銀行口座をあらかじめ用意しておく必要があります。

    • 海外で使うには、デビットカードでの引き出しや、海外送金の手間(と手数料)がかかります。

選択肢B:海外の銀行口座で受け取る

現在お住まいの国の銀行口座に、直接振り込んでもらう方法です。

  • メリット: 現地の生活費としてすぐに使える。資金移動の手間がない。

  • デメリット: 為替レートと送金手数料がかかる。

    • 日本年金機構から送金される際の為替レートで換算されます。

    • 振込手数料は日本側が負担してくれますが、受け取り銀行(リフティングチャージなど)の手数料がかかる場合があります。

【結論:どっちがいい?】 現地で生活費として使うなら、「海外口座での受け取り」が便利です。 日本年金機構は主要通貨(米ドル、ユーロ、ポンドなど)だけでなく、多くの国の通貨への送金に対応しています。 ただし、為替リスクを避けたい、あるいは日本に頻繁に帰るという方は、「非居住者対応の日本の銀行」をキープするのが正解です。


3. これだけはやって! 必須の「2つの手続き」

日本にいれば、マイナンバーと紐付いて手続きが簡素化されていますが、海外在住者はアナログな手続きが必要です。

① 「現況届(げんきょうとどけ)」の提出

これが最も重要です。 日本に住んでいれば、住民基本台帳ネットワークで生存確認ができますが、海外在住者はそれができません。 そのため、毎年誕生月に日本年金機構から「現況届(生存証明のようなもの)」というハガキが届きます。

これに、現地の日本大使館・領事館の証明、または現地の公証人の証明をもらって返送しなければなりません。 これを忘れると、年金の支払いが即座にストップします。

※マイナンバーを持っている人など一部例外もありますが、基本的には「毎年、生きていることを証明して送る」必要があると覚えておいてください。

② 住所変更の届出

海外へ引っ越す時、あるいは海外で引っ越しをした時は、速やかに「年金の受取人の住所変更届」を提出してください。 これを怠ると、前述の「現況届」が届かず、結果として年金が止まることになります。


4. 税金で損しないための「租税条約」活用術

「年金から20%も税金が引かれている!」 海外で年金を受け取り始めた方が、最初に驚くのがこれです。

日本国内に住所がない人(非居住者)が日本の年金を受け取る場合、日本の税法上、一律で「20.42%」の源泉徴収が行われます。 月10万円の年金なら、手取りは8万円弱になってしまいます。

しかし、多くの国と日本との間には「租税条約(そぜいじょうやく)」が結ばれています。これを使えば、日本での課税を免除(または軽減)できる可能性があります。

手続き:「租税条約に関する届出書」を出す

アメリカ、イギリス、オーストラリアなど、日本と租税条約を結んでいる国に住んでいる場合、「租税条約に関する届出書」を日本の年金事務所に提出します。

これが受理されると、日本での源泉徴収が免除され、年金が満額振り込まれるようになります(※その代わり、居住国で所得税を申告・納税する必要があります)。

  • 条約がない国の場合: 残念ながら日本では20.42%引かれます。居住国でも課税されると「二重課税」になるため、居住国側で「外国税額控除」などの手続きをして調整することになります。


5. これから出国する人へのロードマップ

まだ日本にいて、これから海外移住する方は、以下の手順で準備を進めてください。

  1. 年金事務所で相談: 「海外転出後も任意加入を続けるか(年金額を増やしたい場合)」や「受給資格期間」を確認します。

  2. 銀行口座の整理: 「海外で日本の年金を受け取るための銀行(ソニー銀行など)」を開設し、そこを年金受取口座に指定しておきます。

  3. 海外転出届の提出: 市区町村役場に転出届を出します。これで国民年金の強制加入義務はなくなります。

  4. 「住所変更届」の提出: 年金事務所に「国内から海外への住所変更」を届け出ます。


まとめ:権利は消えないが、手間は増える

海外に住んでいても、あなたが積み立てた年金を受け取る権利は消えません。 しかし、その権利を行使するためには、日本にいる時以上の「自己管理」が求められます。

  • 受取口座の確保(非居住者対応バンクか、現地バンクか)。

  • 毎年の「生存証明(現況届)」の返送。

  • 「租税条約」の手続きによる税金カット。

この3つさえ押さえておけば、日本の年金は、為替リスクのある海外生活において、貴重な「安定的収入源」としてあなたを支えてくれます。

手続きは少々面倒ですが、一度仕組みを作ってしまえば、あとは毎月(偶数月)の入金を待つだけです。 世界中どこにいても、豊かな老後を送るために、出国前の準備を怠らないようにしましょう。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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