遺産分割協議書が必要な場合と不必要な場合の違いとは

遺産分割協議書は、相続において重要な役割を果たします。特に親族が亡くなった後、相続手続きが始まると、家族間での意見の食い違いを避けるためにも協議書の作成が必要です。

今回は遺産分割協議書について必要な場合と不必要な場合についての解説をしていきます。

遺産分割のイメージ画像

遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、被相続人の残した財産を、法定相続人がどのように分割するかを具体的に記載した書類です。遺産分割協議書は法的に必須ではありませんが、作成することで相続に関するトラブルを未然に防ぎ、金融機関や法務局での各種手続きを円滑に進める手助けとなります。

遺産分割協議書の作成は必須?

相続が発生したら必ず遺産分割協議書を作成するのかというと、必ずしもそうではありません。遺産相続の手続きをする際に必要になることが多いですが、必ず作成しなければならないわけではないです。

相続の状況や財産の内容によって、作成が必要な場合と不要な場合があります。

遺産分割協議書が不要なケース

1.相続人が1人の場合

相続人もしくは包括受遺者が1人だけの場合はその人が全ての遺産を相続することになるため、遺産分割協議自体が不要です。手続きでは被相続人との関係が分かる戸籍謄本を提出します。

2.遺言書どおりに遺産分割する場合

被相続人が法的に有効な遺言書を残していて、遺言書に書かれた内容に沿って遺産を分ける場合は、協議書は必要ありません。ただし、相続人同士で話し合った結果、遺言通りに遺産分割しないという選択をした場合は、もちろんその内容を記した遺産分割協議書が必要になります。

3.遺産が現金・預金だけの場合

 遺産が自宅にある現金や貯金のみなど、相続手続きをしない場合は遺産分割協議書は必要ありません
 被相続人の預金口座を解約することは、協議書がなくてもできます。法定相続人全員が手続きに協力してくれれば、預金口座を解約したうえで分割することが可能です。

4.法定相続分の割合で分割する場合

法定相続割合での遺産分割では原則として協議書は不要です。ただし、実務上は不動産登記や預貯金解約の際に相続人全員の合意を示す書類として求められることが多くあります。
また、相続税申告で配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を利用するためには、遺産分割の確定証明として協議書が必要です。

遺産分割協議書が必要なケース

遺産分割協議書が必要なケースでは不要なケース以外は基本的に必要になりますが、主には以下になります。

相続人が複数名おり、遺言書がない場合

亡くなった方が遺言書を残しておらず、相続人が複数人いる場合には、どのように遺産を分割するかを話し合う必要がありますので、やはり遺産分割協議書が必要になります。ただし前述した通り、法定相続分で分割する場合には不要です。

相続登記・相続税申告等の手続きが必要な場合

相続によって土地や建物の不動産の名義変更をする場合にも遺産分割協議書が必要になる場合があります。不動産や自動車などを相続したら、被相続人の名義から相続人の名義へ変更する必要があります。名義変更をしないと売却や廃車などの手続きができません。

相続税の申告をする場合

遺産が基礎控除額(3,000万円+法定相続人数×600万円)を超える場合には、申告義務が発生します。また、法定相続分とは異なる分け方をするケースや、配偶者控除・小規模宅地等の特例の適用を受ける場合には、分割内容を証明する書類として遺産分割協議書の写しの提出が求められます。

相続人間のトラブルが想定される場合

相続では、当事者間の意見が対立するケースも少なくありません。口約束や非公式な取り決めでは、後々「聞いていない」といった争いに発展する可能性があります。
遺産分割協議書は、相続内容の証拠となるため、トラブルを未然に防ぐ効果があります。特に、財産の総額が大きい場合や相続人の人数が多い場合には、協議書を作成しておくことが重要です。

遺産分割協議書の作成に必要な書類と作成の流れ

遺産分割協議書はどのように作成するのでしょうか?作成する際の流れを解説します。

1.遺言書の有無を確認

遺産分割協議書の作成が必要かどうか判断するため、まずは遺言書を探してください。
被相続人の自宅にあるとは限らないため、弁護士や司法書士、銀行(貸金庫)、法務局や公証役場にも問い合わせてみましょう。

2.相続人の確定

次に、誰が相続人なのかを確認します。被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本を取り寄せることで、相続人を確認できるので相続人を確定してください。

3.相続財産の調査

相続人が確認できたら、次に相続財産を調査します。一般的な相続財産として家や土地などの不動産、預貯金、株式などが考えられるので、土地の権利証や金融機関の口座、有価証券の有無などを調査します。借金がある場合も相続されますので、負債の有無も確認するために被相続人宛の郵便物なども調べるようにしましょう。

4.遺産分割協議の実施

続いて、相続人全員で遺産分割協議を行います。全員参加が難しい場合は、手紙や電話、メールなどを使って協議を進めていきましょう。

5.遺産分割協議書の作成

話し合いが決着したら、最後は遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議で相続人全員が合意した内容を書面に記載し、相続人全員の署名捺印をします。
相続人の人数分を作成できれば理想的ですが、難しい場合は原本を一通作成し、他の相続人には写しを渡しておきましょう。

まとめ

遺産分割協議書は、有効な遺言書がなく、法定相続分とは異なる分割を行う場合や名義変更が必要な場合などに必要です。全員が絶対に作成すべきものではありませんが、相続内容を証明する書類となりますので、相続手続きの際には便利に活用できます。

遺産分割協議書をはじめとする相続に関する事柄で疑問が出たときは、弁護士や税理士に相談することをおすすめします。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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