60歳以降も働く人必見の在職老齢年金とは?詳しく解説します
老後の生活が心配なので60歳以降も働きたいという方は年々増加しています。そうした方に知っておいてもらいたいのが、働きながら年金を受給できる「在職老齢年金」という制度です。
本記事では、在職老齢年金の概要についてわかりやすく解説していきます。
在職老齢年金とは?
在職老齢年金とは、年金の受給対象となった60歳以上の高齢者が会社などで働いて賃金をもらいながら受け取れる老齢厚生年金です。対象者は在職中、年金を受け取りながら厚生年金保険に加入し続ける形になります。
在職老齢年金の対象者
在職老齢年金の対象者は、以下の条件を満たす人です。
- 60歳以上
- 老齢厚生年金の受給資格がある
- 厚生年金の適用事業所に就労している
在職老齢年金は、老齢厚生年金の受給資格がある60歳以上であり、厚生年金の適用事業所で働いていることが必須条件となっています。
そのため、60歳以上であっても、自営業やフリーランスなど厚生年金保険に加入していない働き方をしていた人は、受給資格を持たないため対象外です。
在職老齢年金の支給停止期間は?
老齢厚生年金をもらいながら、かつ、厚生年金保険の被保険者である場合に、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額によって年金額が支給停止になる場合があります。
2025年度において、支給停止の条件である基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円を超えている間は支給停止になります。この支給停止中であっても、年金額は改定される場合があります。
ここでは、在職定時改定、退職時改定について見ていきます。
在職時改定
在職定時改定制度とは、65歳以上の老齢厚生年金受給者を対象に、支給される年金額を毎年10月に見直しする制度です。2022年4月から新たに導入されました。
具体的には、毎年9月1日時点での老齢厚生年金受給者の年金額については、前年9月から当年8月までの1年間の被保険者期間を算入し、毎年10月分の年金から改定されることになります。
対象となるのは65歳以上70歳未満である老齢厚生年金の受給者です。
退職時改定
厚生年金保険の被保険者となっている老齢厚生年金の受給権者が会社等を退職した場合、厚生年金保険の資格を喪失します。
退職時改定とは、年金受給者が退職した際に、その時点での加入期間や支払った保険料の額に基づいて、支給される年金額を見直す制度です。
この制度によって、これまでに支払った保険料を正確に反映した年金を受け取れるようになります。
在職老齢年金の計算方法
ここからは、在職老齢年金を計算する方法を解説します。
人によっては、年金と賃金の合計が基準額を超えてしまい、どれだけ年金が減額されるのか不安を感じている方もいるのではないでしょうか。そこで以下では、支給停止額の計算方法を解説します。
- 基本月額+総報酬月額相当額が51万円以下の計算方法
- 基本月額+総報酬月額相当額が51万円を超える際の計算方法
基本月額+総報酬月額相当額が51万円を超えるかどうかで、計算方法が異なります。それぞれの計算方法を詳しく把握して、適切に手続きを実施できるよう準備しましょう。
基本月額+総報酬月額相当額が51万円以下の計算方法
基本月額+総報酬月額相当額が51万円以下の場合、基本月額の全額が支給されます。
例えば、基本月額が10万円で総報酬月額相当額が41万円の場合、合計は51万円となるため、10万円すべてを受給可能です。
ここでいう基本月額とは、老齢厚生年金の報酬比例部分を12で割った月額のことを指します。老齢厚生年金としてもらえる金額のことを意味し、以下の計算式で求めます。
基本月額 = 老齢厚生年金の報酬比例部分(在職中の平均月収と厚生年金の加入期間をもとに計算)÷12
一方、総報酬月額相当額は、その月の標準報酬月額に直近1年間の賞与の12分の1にあたる額を加えたもののことです。主に、在職老齢年金の支給額を計算する際に用いられます。
基本月額+総報酬月額相当額が51万円を超える際の計算方法
基本月額+総報酬月額相当額が51万円を超える際の計算方法は、以下の通りです。
調整後の年金支給月額 = 基本月額 -(基本月額 + 総報酬月額相当額 - 51万円)÷ 2
例えば、基本月額が20万円で総報酬月額相当額が33万円の場合、以下のように計算します。
20 - (20 + 33 - 51) ÷ 2 = 18
まず、基本月額20万円と総報酬月額相当額33万円を合計すると、53万円です。次に、求めた53万円から51万円を引いて求めた2万円を2で割ると、1万円であることがわかります。
最後に、基本月額20万円から求めた1万円を引きましょう。結果、上記の人が受け取れる年金は19万円です。
在職老齢年金の受給手続き
年金を受給するためには、日本年金機構から送付される「年金請求書」の提出が必要です。必要事項を記入し、誕生日の前日以降に必要書類と合わせて年金事務所に届け出ることで、年金を受給できます。
年金請求書の提出に必要な書類は、以下の通りです。
- 戸籍謄本・戸籍抄本・住民票の写し
- 年金手帳・基礎年金番号通知書
- 受取金融機関の通帳・キャッシュカードのコピー
配偶者や子がいる場合は、上記に加えて以下の書類も用意しましょう
- 身分関係を証明するための戸籍謄本・住民票
- 配偶者や子供の収入を証明する書類(所得証明書・課税証明書・源泉徴収票)
また、障害状態にある子がいる場合は、医師または歯科医師の診断書も必要です。
さらに、年金受給後も状況に応じて手続きも欠かせません。給与に変動があった場合や賞与が支給された際には、その都度会社が日本年金機構に報告をおこないましょう。
まとめ
在職老齢年金は、会社で働き続けながら受け取れる老齢年金です。この制度を利用することは、年金だけでは老後の生活が心配な方や、より豊かな生活を送りたい方にとって大きなメリットになります。
ただし、賃金(ボーナス含む)と年金の月額合計が51万円を超えると年金が減額や停止されてしまうので、その点には注意が必要です。将来のライフプランを考える際は、在職老齢年金制度を利用した場合の年金受給額も計算に入れておくと、より正確に老後資金の見通しを立てやすくなります。