持病があっても入れる「引受基準緩和型保険」。保険料が高くても加入すべき人の条件
「糖尿病の薬を飲んでいるから、保険には入れないと言われた」 「5年前に手術をした経験があるせいで、加入を断られてしまった」
健康への不安がある人ほど、万が一の備え(保険)を必要としているのに、皮肉なことに「健康でない」という理由で加入を拒否されてしまう――。 そんなジレンマに悩む方々の受け皿として、近年急速に普及しているのが「引受基準緩和型保険」、通称「緩和型」と呼ばれる商品です。
テレビCMなどで「持病があっても入れます!」と宣伝されているアレです。
「これなら私でも入れる!」と喜び勇んで資料を取り寄せると、次に直面するのは「保険料の高さ」という壁です。 一般的な保険に比べて、保険料は1.5倍〜2倍近く割高に設定されています。
「高い保険料を払ってまで、本当に入る意味があるのだろうか?」 「貯金で備えた方がマシなのではないか?」
その迷いは正解です。緩和型保険は、すべての人におすすめできるものではありません。 この記事では、緩和型保険の仕組みとデメリットを正しく理解した上で、「割高な保険料を払ってでも加入すべき人」と「加入を見送るべき人」の境界線を明確にします。
![]()
1. そもそも「緩和型」とは? なぜ持病があっても入れるのか
通常の医療保険に加入する際、私たちは詳細な「告知書」に記入し、過去の病歴や現在の健康状態を申告しなければなりません。保険会社はリスクを避けるため、少しでも懸念があれば「加入お断り(謝絶)」とします。
これに対し、緩和型保険は「告知項目(質問)」を極端に減らしているのが特徴です。 多くの商品で、問われるのは以下の「3つのYes/No」だけです。
-
過去3ヶ月以内に、入院・手術・検査を勧められたか?
-
過去2年以内(※商品によっては1年〜5年)に、入院・手術をしたか?
-
過去5年以内に、がん(悪性新生物)で入院・手術・治療をしたか?
この3つがすべて「No」であれば、持病があっても、薬を飲んでいても、原則として加入できます。 高血圧、糖尿病、うつ病、過去の手術歴などがあっても、直近の入院歴さえなければOKという、非常に間口の広い保険です。
2. 加入前に知っておくべき「3つのデメリット」
「入りやすいなら、これでいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、そこには明確なペナルティ(デメリット)が存在します。
デメリット①:保険料が「割高」である
これが最大のネックです。 持病がある人は、健康な人に比べて「入院・手術をする確率」が高いため、保険会社はそのリスク分を保険料に上乗せします。
-
一般的な医療保険: 月額 2,000円
-
緩和型医療保険: 月額 3,500円〜4,000円
年間で見れば数万円、10年で見れば数十万円の差になります。この「差額」に見合う価値があるかを慎重に判断しなければなりません。
デメリット②:加入後1年は「保障が半分」の場合も
多くの緩和型保険には、「支払削減期間」というルールがあります。 「加入してから1年以内に病気やケガで入院した場合、給付金は半額にします」というものです。
-
本来なら入院日額1万円 → 5,000円しか出ない。
-
手術給付金20万円 → 10万円しか出ない。
※最近は、この「削減期間」がない(最初から満額出る)緩和型商品も増えてきましたが、その分保険料がさらに高く設定されている傾向があります。
デメリット③:特約の選択肢が少ない
先進医療特約などは付けられますが、健康な人向けの保険にあるような豊富なオプション(特定疾病の一時金や、通院保障など)が選べない、あるいは条件が厳しいケースがあります。
3. それでも加入すべき人の「3つの条件」
では、これらのデメリットを承知の上で、あえて緩和型保険に入るべきなのはどのような人でしょうか? 判断基準は「経済状況」と「働き方」です。
条件①:貯蓄が「100万円以下」である
これが最もシンプルな基準です。 もし明日、持病が悪化して入院・手術が必要になり、差額ベッド代や食事代を含めて30万円〜50万円の請求が来たとします。
-
「それくらいなら貯金からポンと払える」
-
→ 緩和型保険に入る必要性は低いです。高い保険料を貯金に回しましょう。
-
-
「払ったら生活費が尽きる」「借金しないと払えない」
-
→ あなたは加入すべきです。 経済的破綻を防ぐためのコストとして、割高な保険料を払う価値があります。
-
条件②:自営業・フリーランスである
会社員や公務員には、「傷病手当金(給料の約3分の2が最長1年半出る)」という強力な休業補償があります。さらに有給休暇もあります。 そのため、少々の入院なら生活は揺らぎません。
しかし、国民健康保険(自営業・フリーランス)には傷病手当金がありません。 「入院=収入ゼロ」に直結します。 治療費がかかる上に収入も止まるというダブルパンチを防ぐために、緩和型保険で「入院日額」や「一時金」を確保しておくことは、事業継続のための必須経費と言えます。
条件③:「お守り」がないと精神的に不安定になる
「病気になったらどうしよう」という不安が強く、夜も眠れないようなタイプの方です。 経済合理性(損得)を超えて、「安心料」として月数千円を払うことで精神が安定するなら、それは無駄金ではありません。 ただし、家計を圧迫しない範囲の金額(日額3,000円〜5,000円コースなど)に抑えることが鉄則です。
4. 諦めないで! 緩和型に行く前の「悪あがき」
「持病がある=緩和型しかない」と思い込むのは早計です。 緩和型はあくまで「最終手段(ラストリゾート)」。その前に試すべきルートがあります。
ルートA:ダメ元で「一般の保険」に申し込む
実は、持病があっても「条件付き」で一般の保険に入れるケースは多々あります。
-
特定部位不担保(とくていぶい・ふたんぽ): 「過去に帝王切開をした『子宮』の病気は5年間保障しませんが、それ以外の病気(胃がんや肺炎など)なら保障します」という条件です。
-
割増保険料: 「少し保険料を上乗せしますが、一般の保険に入れます」という条件です。
これらは、緩和型保険に入るよりも保険料が安く済むことが多いです。 まずは正直に告知して一般の保険に申し込み、「条件付き承諾」の結果を見てから、緩和型を検討しても遅くはありません。
ルートB:「がん保険」単体なら入れるかも
「糖尿病」や「高血圧」などの持病があっても、「がん保険」なら、健康な人と同じ条件(安い保険料)で入れることがよくあります。 がん保険の告知事項は、主に「過去のがん歴」に絞られているからです。
もし一番怖いのが「がん」なら、高い緩和型医療保険ではなく、安い一般のがん保険を選ぶのが賢い選択です。
ルートC:「1年待てば」入れるかも
緩和型の告知条件に「過去2年以内の入院・手術」という項目があります。 もし、あなたの手術が「1年半前」なら、あと半年待てば、告知事項に該当しなくなります。 (※ただし、告知期間外であっても告知義務がある商品もあるため、約款の確認が必要です) 焦って今入るより、条件がクリアになる時期を待つのも一つの戦略です。
5. まとめ:保険は「損得」ではなく「生存戦略」
持病がある人にとって、保険は切実な問題です。 しかし、不安に駆られて、言われるがままに高い保険料を払い続け、日々の生活が苦しくなってしまっては本末転倒です。
緩和型保険は、素晴らしい「お助けアイテム」ですが、万能ではありません。
-
まずは「一般の保険」にトライする。
-
ダメなら「貯蓄」でカバーできないか計算する。
-
それでも経済的に危険なら、「緩和型」を最低限の保障で契約する。
このステップを踏むことで、あなたの家計と健康の両方を守る、最適なバランスが見つかるはずです。 「入れない」と諦める前に、まずは複数の保険会社(乗り合い代理店など)で、「今の健康状態で、一般の保険に入れる可能性はありますか?」と聞いてみてください。意外な抜け道が見つかるかもしれません。
