専業主婦の「第3号被保険者」制度、今後の改正議論と老後資金への影響

【専業主婦の「第3号被保険者」制度、今後の改正議論と老後資金への影響】

「専業主婦の年金がなくなるって本当?」 「パートで働いているけれど、扶養から外れるべきか迷っている」

最近、ニュースでよく耳にする「第3号被保険者制度」の見直し論。 サラリーマンや公務員の配偶者(主に妻)が、保険料を負担せずに年金を受け取れるこの仕組みは、長らく日本の専業主婦世帯を支えてきました。

しかし、共働きが当たり前になった今、「不公平だ」「時代に合っていない」という批判が高まり、制度の縮小・廃止に向けた議論が加速しています。

「廃止されたら、老後はどうなるの?」 「私たちはこれからどう働けばいいの?」

この記事では、第3号被保険者制度が直面している改正の動きと、それがあなたの家計や老後資金に与える影響、そして今から準備すべき対策について解説します。

1. そもそも「第3号」とは? その恩恵と限界

まずは現状の制度を整理しましょう。

制度の仕組み

会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養されている、年収130万円未満の配偶者(第3号被保険者)は、「国民年金保険料(月額16,980円 ※令和6年度)」を支払う必要がありません。

支払っていないにもかかわらず、将来は「老齢基礎年金(満額で月約6.8万円)」を受け取ることができます。 これが、いわゆる「専業主婦の特権」と言われる部分です。

抱えるリスク:年金が「少ない」

「タダで年金がもらえるなんてお得!」と思われがちですが、実は大きな落とし穴があります。 第3号がもらえるのは、あくまで「1階部分(基礎年金)」だけです。

  • 夫(会社員): 基礎年金 + 厚生年金 = 月額 約15〜16万円(平均)

  • 妻(専業主婦): 基礎年金のみ = 月額 約6.8万円(満額)

夫が生きているうちは良いですが、もし離婚したり、夫が先立ったりした場合、妻個人の年金は月7万円弱しかありません。これだけで老後を生き抜くのは、現実的に不可能です。


2. 迫りくる改正! 「第3号」は廃止されるのか?

政府の議論の方向性は明確です。 「第3号という区分を即座に廃止はしないが、実質的に対象者を減らしていく(空洞化させる)」という戦略をとっています。

その具体的な手法が、パート主婦に対する「社会保険の適用拡大」です。

「130万円の壁」から「106万円の壁」へ

これまで、年収130万円までは夫の扶養に入れました。 しかし、法改正により、以下の条件を満たす人は年収約106万円を超えた時点で、強制的に夫の扶養から外れ、自分で社会保険(厚生年金・健康保険)に入ることになりました。

【現在の適用条件(2024年10月時点)】

  1. 週の労働時間が20時間以上

  2. 月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円)

  3. 従業員数が51人以上の企業

  4. 学生ではない

2025年年金改正の焦点

現在議論されている最大のポイントは、上記の条件にある「企業規模の要件(51人以上)」の撤廃です。 もしこれが撤廃されれば、町の小さなカフェや個人事務所で働くパート主婦も、週20時間以上働けば社会保険加入が義務化されます。

つまり、「第3号を廃止します」と宣言するのではなく、「働く人はみんな保険料を払ってくださいね」とルールを変えることで、結果的に第3号でいられる人を「全く働いていない人」だけに絞り込もうとしているのです。


3. 扶養を外れると「損」? 老後資金への影響

「扶養を外れると、手取りが減って損をする(働き損)」 これが最大の懸念点でしょう。

確かに、年収106万円を超えて社会保険に入ると、手取りは約15%減ります(年間約15万円の負担増)。 この「手取りの減少」を取り戻すには、年収を125万円〜130万円以上まで引き上げる必要があります。

しかし、目先の手取りだけでなく、「老後資金」の視点で見ると、景色は変わります。

メリット①:将来の年金が増える(2階建てになる)

自分で厚生年金に入れば、将来受け取る年金に「報酬比例部分(2階部分)」が上乗せされます。 例えば、年収120万円で10年間働いた場合、将来の年金は「年間約6.6万円」増えます。 これが一生続くため、長生きすればするほど、支払った保険料の元は取れます。

メリット②:万が一の保障が手厚くなる

第3号にはない保障が手に入ります。

  • 傷病手当金: 病気やケガで休んだ時、給与の約2/3が支給される。

  • 障害厚生年金: 障害状態になった時、基礎年金よりも手厚い保障がある。

「目先の手取り減」は「将来への貯金&保険料」と捉えることができます。


4. 専業主婦が今やるべき「自衛策」

制度改正の流れは止められません。 「第3号」という聖域が縮小していく中で、これからの主婦(主夫)はどう動くべきでしょうか。

戦略A:あえて「扶養を外れて」働く

もし、お子様の手が離れているなら、「130万円の壁」を突き破って、年収150万円以上を目指して働くのが、老後資金にとっては最強の対策です。 「夫の扶養」という不安定な船から降りて、自分自身の年金という「エンジン」を持つことができます。

戦略B:扶養内でいつつ「iDeCo・NISA」で補填する

介護や育児などの事情で、どうしても扶養内でしか働けない場合。 そのままでは「月6.8万円」の年金しかありません。不足分は自助努力で作る必要があります。

ここで注意したいのが「iDeCo(イデコ)」の落とし穴です。 iDeCoの最大のメリットは「所得税の節税」ですが、収入のない(または低い)専業主婦はもともと税金を払っていないため、このメリットが受けられません。

そのため、専業主婦が老後資金を作るなら、いつでも引き出し可能で非課税メリットのある「新NISA(つみたて投資枠)」を優先すべきです。 夫から生活費として資金贈与を受け(※年110万円以下なら非課税)、妻名義のNISA口座で運用して「自分年金」を作っておきましょう。


まとめ:自分の足で立つ準備を

第3号被保険者制度は、今すぐになくなるわけではありません。 しかし、「働ける人は社会保険に入って支え手に回る」という流れは確実です。

「壁」を気にして労働時間を調整し、自身のキャリアと将来の年金を抑制し続けることが、本当に幸せな選択なのか。 制度改正の議論は、私たちにそう問いかけています。

老後は必ずやってきます。 そして、おひとり様になる可能性(夫との死別など)も誰にでもあります。

国の制度に守られるのを待つのではなく、「働く時間を増やす」か、「運用で増やす」か。 どちらかの方法で、自分の老後を守る盾を用意し始めてください。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

関連記事

前の記事へ

「加給年金」をもらい忘れていませんか? 年下の妻がいる人が必ず確認すべきこと

次の記事へ

60代での保険見直し。「掛け捨て」はいつまで必要? 医療保険のやめどき判断基準