「iDeCo」と「新NISA」をどう使い分ける?シニア世代の節税・資産形成戦略
税制優遇を受けながら資産形成ができる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「新NISA(少額投資非課税制度)」は、老後資金の準備において非常に強力なツールです。特にシニア世代にとって、残された期間と目的に合わせてこれらをどう活用するかは、資産寿命を左右する重要な戦略となります。
この記事では、二つの制度の特性を理解し、現在のライフステージと目標に合わせた最適な使い分けと活用戦略を解説します。
iDeCoと新NISAの基本を比較:シニア世代が注目すべき点
まずは、シニア世代が「節税」と「資産形成」の観点から特に注目すべき両制度の決定的な違いを確認しましょう。
項目 | iDeCo(個人型確定拠出年金) | 新NISA(少額投資非課税制度) |
税制優遇のポイント |
|
運用益非課税 |
資金の引き出し | 原則60歳まで不可 | いつでも可能(流動性が高い) |
拠出可能期間 | 公的年金加入区分による(最長65歳まで) | 期限なし(恒久化) |
非課税期間 | 運用期間中 | 無期限 |
拠出限度額(年間) | 職業などにより異なる(年金保険料の上乗せ扱い) | 360万円(成長投資枠240万+つみたて投資枠120万) |
非課税保有限度額(生涯) | なし(掛金は年金扱い) | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円) |
iDeCoの活用戦略:「節税」を最大化し「確実に」老後資金を作る
シニア世代、特に50代の方がiDeCoを活用する最大のメリットは、その強力な節税効果にあります。
最大の魅力:掛金の全額所得控除
iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となります。これは、毎年の所得税と住民税が軽減されるという即効性のある節税効果をもたらします。所得が高い人ほど節税メリットは大きく、運用利回りとは別に、確実に手取りを増やしながら資産形成を進められます。
【戦略】現役時代の所得があるうちにフル活用する
60歳や65歳まで拠出できる期間が残されている場合、その期間を最大限に活用し、可能な範囲で掛金を拠出することで、定年までの年間の税負担を軽減できます。
ただし、原則60歳まで引き出せないため、「近い将来使う予定のない、老後資金専用の資金」として割り切って拠出することが重要です。もし急な出費に備える必要があるなら、iDeCoへの拠出額は抑え、新NISAの活用を優先すべきです。
新NISAの活用戦略:「流動性」を確保し「柔軟に」資産寿命を延ばす
新NISAの最大の特長は、運用益が非課税であることに加えて、いつでも資産を引き出せるという点(高い流動性)と、非課税期間が無期限である点です。
新NISAの強み:高い流動性
シニア世代にとって、資産形成と同時に「もしもの時の備え」を準備しておくことは重要です。新NISAの口座で運用していれば、非課税で増やした資産を、医療費や介護費用、リフォーム費用など、いざという時に非課税で引き出して使うことができます。iDeCoではこれができません。
【戦略1】iDeCoを補完する「自由な」老後資金
iDeCoで老後資金の「核」を形成しつつ、新NISAで「いつでも使える予備資金」を運用することで、柔軟な資金計画が可能になります。例えば、退職金の一部を新NISAの成長投資枠で運用し、非課税で効率よく資産を増やしながら、必要に応じて取り崩していく戦略が有効です。
【戦略2】65歳以降の「長期・無期限運用」
iDeCoの拠出期間は最長65歳まで(公的年金加入者)ですが、新NISAは年齢制限なく恒久的に運用が可能です。65歳以降も資産形成を継続したい場合や、次の世代への資産移転を視野に入れる場合、非課税期間が無期限の新NISAが主役となります。
シニア世代に最適な「iDeCoと新NISAの使い分け」戦略
シニア世代の資産形成は「残りの拠出期間」と「資金の流動性の必要性」を軸に考えることが重要です。
ライフステージ/状況 | 資産形成戦略の優先順位 | 理由と使い分け |
50代前半(現役) |
1. iDeCo優先 |
iDeCoで掛金控除による節税メリットを最大限享受し、課税所得を圧縮。新NISAは、iDeCoの拠出に回せない余裕資金で開始し、流動性を確保。 |
50代後半~60歳(定年前後) | 1. iDeCo優先 2. iDeCoの拠出停止も検討 |
iDeCoの運用期間が短くなるため、掛金控除の恩恵が薄れる可能性を考慮。新NISAの流動性を重視し、退職金などまとまった資金の運用先として活用 |
60歳以降(年金生活者) | 新NISA専念 | iDeCoは原則60歳で運用終了・受取開始。60歳以降も資産形成を続けるには、新NISA一択。無期限非課税の強みを活かし、長期的な資産寿命の伸長を目指す |
まとめ:余裕資金は「iDeCo」で節税、緊急資金は「新NISA」で運用
シニア世代の資産戦略の基本は、以下の通りです。
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「近い将来、絶対に使う予定のない」老後資金:iDeCoを活用し、節税メリットを最大限に享受する。
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「いざという時に備えたい」流動性のある資金:新NISAで運用し、いつでも非課税で引き出せる体制を整える。
二つの制度を「どちらか一方」として考えるのではなく、それぞれの強みを活かした併用こそが、シニア世代の節税と資産寿命を延ばす最も強力な戦略となります。ご自身の所得状況と、60歳までの残り期間、そして今後のライフイベントを見据えて、最適なバランスで制度を活用していきましょう。
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