投資詐欺に狙われるシニア世代。「元本保証」「高利回り」の甘い罠を見抜く方法

「まさか、私が騙されるなんて……」

被害に遭われた方の多くは、口を揃えてそう言います。 退職金や長年の貯蓄という「虎の子」を持つシニア世代は、残念ながら詐欺グループにとって「最大のターゲット」です。

特に最近は、新NISAのブームに便乗し、「投資をしないと損をする」「インフレで資産がなくなる」といった不安を煽る手口が急増しています。

彼らの武器は、言葉巧みな「甘い誘惑」と、最新の「デジタル技術(SNS)」です。 これらは、金融リテラシーが高いと自負している人さえも簡単に信じ込ませてしまいます。

しかし、詐欺の手口には必ず「共通のサイン」があります。 この記事では、あなたの大切な老後資金を守るために、詐欺師が使う2つのNGワードと、最新のSNS型投資詐欺の実態、そして絶対に見抜くためのチェックポイントを解説します。

1. 詐欺師が使う「2つの絶対NGワード」

投資の世界には、プロなら絶対に口にしない言葉があります。 もし、勧誘の電話やSNSのメッセージで以下の言葉が出てきたら、その時点で100%詐欺と断定して電話を切ってください。

NGワード①:「元本保証(がんぽんほしょう)」

「絶対に損はさせません」「元金は保証されています」 この言葉は、詐欺の代名詞です。

日本の法律(出資法)では、銀行の預金や国債などを除き、投資商品において「元本を保証する」と約束してお金を集めることは禁止されています。 どんなに優秀なファンドでも、株や為替で運用する以上、マイナスになるリスクはゼロではありません。

「元本保証」を謳った時点で、その業者は法律違反を犯しています。違法業者がまともな運用をしているはずがありません。

NGワード②:「月利(げつり)〇〇%」

「月利3%の高配当」「毎月5%増える」 この数字の異常さに気づいてください。

投資の神様ウォーレン・バフェットでさえ、年間の利回りは平均20%程度です。 世界中のプロが必死に運用して、年利5〜7%(インデックス投資)が平均点の世界です。

  • 月利3% = 年利36%以上(複利ならもっと)

そんな夢のような商品が実在するなら、彼らはあなたに教えず、銀行から低金利でお金を借りて自分だけで運用するはずです。 わざわざあなたに教えるのは、「あなたのお金が目的だから」に他なりません。


2. 実在しない利益を見せる「ポンジ・スキーム」の恐怖

なぜ、多くの人が騙されてしまうのでしょうか? それは、詐欺師が「最初は本当にお金を振り込んでくるから」です。

これが、投資詐欺の9割を占めると言われる「ポンジ・スキーム」という手口です。

仕組みは「自転車操業」

  1. 「高配当」を謳ってお金を集める。

  2. 集めたお金を運用せず、「配当金」と称して、他から集めたお金の一部を投資家に渡す。

  3. 投資家は「本当にお金が増えた!」と信用し、さらに大金(退職金全額など)を追加投資する。

  4. お金が集まらなくなった時点で、運営側は全額を持ってトンズラする。

あなたは「利益」を受け取っていたつもりでも、それは「自分の元本の一部」「他の被害者のお金」が戻ってきていただけなのです。 アプリ上の画面で「資産が倍になっている」ように見えても、それは詐欺師が作った「ただの数字(偽の画面)」です。


3. 最新の手口:SNSに潜む「偽の有名人」と「サクラ」

最近、ニュースで話題になっているのが、FacebookやInstagram、LINEを使った「SNS型投資詐欺」です。

手口①:有名人を勝手に使う

著名な経済評論家、実業家(堀江貴文氏や前澤友作氏など)、有名投資家の写真や名前を勝手に使い、「私の投資メソッドを教えます」「極秘銘柄を教えます」という偽の広告を出します。 クリックすると、LINEグループに誘導されます。

手口②:LINEグループでの「劇場型」勧誘

LINEグループに入ると、「先生(偽物)」と「アシスタント」、そして数十人の「参加者」がいます。 実は、参加者のほとんどは詐欺グループの「サクラ」です。

  • サクラA:「先生のおかげで100万円儲かりました!」

  • サクラB:「この投資法は本物です。感謝しています!」

このような称賛のメッセージが毎日飛び交います。 それを見ているうちに、「自分だけやらないと損だ」「この先生は本物だ」と洗脳され、指定された口座にお金を振り込んでしまうのです。


4. 騙されないための「3ステップ・チェック」

怪しい話が舞い込んだ時、あるいは「これって詐欺かも?」と思った時、以下の3つを確認してください。

チェック①:「金融商品取引業者」の登録があるか?

日本で投資の勧誘や運用を行うには、金融庁の登録が必要です。 金融庁のホームページにある「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」に名前がない業者は、すべて無登録(=違法)業者です。

「海外の証券会社だから」「これから登録する」という言い訳は無視してください。

チェック②:振込先が「個人名義」ではないか?

これが最強の見分け方です。 まともな証券会社や投資会社が、顧客からの入金を「タナカ タロウ」などの個人名義の口座に振り込ませることは絶対にありません。 また、「株式会社〇〇」と名乗っているのに、振込先が「合同会社△△(全く別の会社)」である場合も詐欺です。

「個人口座への振込」を指示されたら、100%詐欺です。

チェック③:家族や警察(#9110)に相談する

「誰にも言わないでください」「今だけのチャンスです」と急かされても、必ず一度ストップしてください。 息子さんや娘さん、あるいは警察相談専用電話「#9110」に、「こんな投資の話があるんだけど」と話してみてください。 第三者は冷静です。一発で「それは詐欺だよ」と見抜いてくれるはずです。


5. もし「振り込んでしまった」と思ったら

もし、すでにお金を渡してしまい、出金ができなくなったり、連絡が取れなくなったりしている場合。 恥ずかしがったり、自分を責めたりしている時間はありません。

  1. 振込の証拠(明細)、LINEのやり取り(スクショ)を保存する。

  2. すぐに警察に被害届を出す。

  3. 銀行に連絡し、振込先口座の凍結を依頼する(振り込め詐欺救済法)。

そして、「二次被害」に注意してください。 「騙されたお金を取り返します」と近づいてくる弁護士(偽物や悪徳業者)や探偵業者にお金を払ってはいけません。それは詐欺師がカモリストを横流ししている可能性があります。


まとめ:退屈な投資こそが「本物」である

投資の世界に、魔法はありません。 「元本保証で年利30%」のような、ローリスク・ハイリターンの商品は存在しません。

本物の投資(新NISAのインデックス投資など)は、年利5%程度を目標に、時間をかけてゆっくり増やす「地味で退屈なもの」です。 胸がドキドキするような儲け話や、スマホ一つで一攫千金の話は、すべてあなたを狙う罠です。

「自分は大丈夫」という過信を捨て、「うまい話には裏がある」という昭和の教訓を、令和の今こそ思い出してください。 あなたの大切な資産を守れるのは、最後はあなた自身の「疑う心」だけです。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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