富裕層が実践する「資産管理会社」の設立。サラリーマン大家でもメリットはある?
「不動産投資が軌道に乗り、家賃収入が増えてきたのは嬉しいが、税金が高すぎて手元にお金が残らない…」 「給与収入と合算されるせいで、所得税の税率が跳ね上がってしまった」
サラリーマン大家として成功すればするほど、次に立ちはだかるのが「税金の壁」です。 日本の所得税は累進課税のため、稼げば稼ぐほど、その半分近くを税金として持っていかれる構造になっています。
そこで、多くの富裕層やメガ大家が実践しているのが、個人ではなく法人で不動産を持つ「資産管理会社(プライベートカンパニー)」の設立です。
「会社を作るなんて、自分にはまだ早いのでは?」 「維持費がかかって、かえって損をするのではないか?」
そう思われる方も多いでしょう。しかし、条件さえ整えば、資産管理会社はサラリーマン大家にとっても「最強の節税装置」となり、資産拡大のスピードを劇的に加速させます。
この記事では、資産管理会社設立の損益分岐点となる目安や、サラリーマン大家ならではのメリット・デメリットを徹底解説します。
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1. 資産管理会社とは何か? 2つのパターン
資産管理会社とは、実質的な事業活動(商品の販売など)を行うのではなく、「自分や家族の資産を管理・運用すること」を目的とした会社のことです。
不動産投資において、会社を作るパターンは大きく分けて2つあります。
① 管理受託方式(サブリース方式)
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仕組み: 不動産の名義は「個人」のまま。会社は管理業務だけを行い、個人から管理料をもらう。
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特徴: 移せる所得が少ない(家賃の5〜10%程度)ため、節税効果は限定的。手軽だが、大きな効果は望めない。
② 不動産所有方式
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仕組み: 会社が不動産を購入する(または個人から買い取る)。家賃収入はすべて会社の売上になる。
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特徴: 今回の記事で推奨するのはこちらです。 家賃収入の全額を法人でコントロールできるため、節税効果が絶大。
2. なぜ会社にすると税金が安くなるのか? 「税率の差」
最大のメリットは、個人と法人の「税率ギャップ」にあります。
個人の場合:最大約55%
個人の所得税は、給与所得と不動産所得を合算した金額に対して課税されます(総合課税)。 日本の税率は「稼ぐほど高くなる」仕組みで、住民税(10%)と合わせると、最高税率は約55%にもなります。 年収が高いサラリーマンが不動産でさらに利益を出すと、家賃の半分以上が税金で消えることになります。
法人の場合:最大でも約34%
一方、法人税の実効税率は、どんなに利益が出ても約23%〜34%程度で頭打ちになります。 さらに、年間所得が800万円以下の中小企業であれば、税率はさらに低く優遇されます。
【ここがポイント】 個人の課税所得が900万円を超えると、税率は住民税と合わせて33%〜43%のゾーンに入ります。 このラインを超えているなら、法人化した方が手残りが多くなる可能性が高いです。
3. サラリーマン大家が享受できる「4つのメリット」
税率以外にも、法人化には「経費」「家族」「相続」「融資」の面で大きな武器があります。
メリット①:家族への給料で「所得分散」ができる
個人事業主の場合、青色事業専従者給与など条件が厳しく、サラリーマンの配偶者などに給料を払うのは難しいケースがあります。 しかし法人であれば、配偶者や親を「役員」にし、「役員報酬」を支払うことができます。
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効果: 大家(社長)ひとりに集中していた利益を家族に分散することで、それぞれの税率を下げられる。
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効果: 給料をもらった家族も「給与所得控除」を使えるため、世帯全体での手取りが増える。
メリット②:経費の範囲が圧倒的に広がる
個人では認められにくい経費も、法人なら認められる範囲が広がります。
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生命保険: 法人契約の保険料を経費にできる(※以前より厳しくなりましたが、まだ活用余地はあります)。
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社宅: 自宅を社宅扱いにすることで、家賃の一部を経費化できる可能性がある。
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出張手当: 遠方の物件確認に行く際、日当(非課税)を出せる。
メリット③:赤字を「10年間」繰り越せる
不動産投資では、大規模修繕や減価償却費の関係で、帳簿上が赤字になる年があります。 個人の場合、この赤字を繰り越せるのは「3年間」だけです。 しかし法人の場合、「10年間」も赤字を繰り越し、将来の黒字と相殺して税金を消すことができます。これは長期運営において強力な武器です。
メリット④:相続税対策の切り札になる
個人で不動産を持っていると、相続のたびに不動産そのものの名義変更が必要で、登録免許税や不動産取得税がかかります。 しかし、法人で所有していれば、相続するのは不動産ではなく「会社の株式」です。 株式の評価額を引き下げる対策を打った上で株式を贈与・相続すれば、スムーズかつ低コストで資産承継が可能になります。
4. 無視できない「デメリット」と「コスト」
「いいこと尽くめ」に見えますが、法人化には明確なコストと手間がかかります。ここを理解せずに飛び込むと失敗します。
デメリット①:設立費用とランニングコスト
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設立費用: 株式会社なら約25万円、合同会社なら約10万円。
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税理士報酬: 法人の決算は複雑なため、税理士必須です。年間30万〜50万円程度かかります。
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均等割: 赤字でも、黒字でも、法人住民税の「均等割(年間約7万円)」を毎年払わなければなりません。
デメリット②:社会保険料の負担
自分や家族に役員報酬を払う場合、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務が発生します。 サラリーマン大家の場合、本業で加入しているため二重加入の調整が必要になったり、配偶者が扶養から外れて社会保険料がかかったりと、「税金は減ったけど社会保険料が増えた」という事態になりがちです。
※これを回避するために、あえて役員報酬を出さない、あるいは少額に留めるといった戦略が必要です。
デメリット③:長期譲渡所得の優遇がない
個人で不動産を売却する場合、5年超所有していれば税率が約20%に下がります(長期譲渡所得)。 しかし法人にはこの区別がなく、売却益も通常の法人税(約30%〜)がかかります。 「出口(売却)」だけで見ると、個人の方が有利なケースが多いのです。
5. 結論:法人化すべき人の「目安ライン」
では、サラリーマン大家はどのタイミングで会社を作るべきでしょうか? 一般的に言われている目安は以下の通りです。
① 不動産所得(利益)が「500万円〜600万円」を超えた時
給与所得にもよりますが、不動産だけでこれくらいの利益が出ているなら、税理士報酬や法人維持費(約50万円)を払っても、節税効果でお釣りがくる可能性が高いです。
② これから物件を「買い増す」予定がある時
すでに個人で持っている物件を法人に移すのは、税金(不動産取得税・譲渡所得税)や登記費用がかかり、コスト倒れになることが多いです。 ベストなのは、「次の物件を買うタイミング」で法人を設立し、最初から法人名義で買うことです。 規模拡大を目指すなら、早い段階で法人化しておくのが正解です。
③ 相続税対策を本格化したい時
資産規模が大きく(総資産数億円など)、将来の相続税が心配な場合は、所得税の節税メリットが薄くても、相続対策として法人化する価値があります。
まとめ:会社は「節税」と「拡大」のエンジン
「サラリーマン大家」という言葉には、副業のイメージがあります。 しかし、資産管理会社を作るということは、あなたはもう「副業投資家」ではなく、「不動産賃貸業の経営者」になるということです。
法人化には、コストも手間もかかります。 しかし、個人の財布(高い税率)から資産を守り、家族に給料という形で富を分配し、次の物件を買うための資金を効率よく貯めるためには、法人という「器」が不可欠です。
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今の不動産所得はいくらか?
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今後、物件をどこまで増やしたいか?
この2点を整理した上で、一度、不動産に強い税理士にシミュレーションを依頼してみてはいかがでしょうか。 その一歩が、あなたの資産形成を「富裕層のステージ」へと押し上げる鍵になるはずです。
