高齢者施設、選び方の落とし穴。後悔しないための見学ポイントと確認事項

高齢者施設は、ご本人のセカンドライフを左右する大切な場所です。

しかし、パンフレットやウェブサイトの情報だけでは見えてこない「落とし穴」も存在します。入居後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないために、どのような点に注意して見学すればよいのでしょうか。

ここでは、高齢者施設選びで失敗しないための、見学時のチェックポイントと確認事項を詳しくご紹介します。

高齢者施設のイメージ

施設の種類と特徴を理解する

まず、高齢者施設には様々な種類があることを理解しましょう。それぞれ特徴が異なるため、本人の状況や希望に合った施設を選ぶことが大切です。

国や地方自治体など公的な団体が運営する「公的施設」5種類

主に国や地方自治体など公的な団体が運営する「公的施設」は、「介護保険施設」ともよばれ、社会福祉の視点から、介護度の重い方や低所得者の保護と支援に重点が置かれています。

国の補助金を受けて設立されていることから「民間施設」よりも費用を安く抑えられるというメリットがあります。その分、人気があるため空きがなく入居待ちが長いというデメリットもあります。

種類 特徴
特別養護老人ホーム 寝たきりや認知症など、介護度の高い方が入所でき、終身利用が可能。費用が安く入居希望者が多いため、入居待ち期間が長い。
養護老人ホーム 経済的な理由で在宅サービスを受けることができない方が入所できる。介護施設ではないため介護が必要になると退去しなくてはならない
介護老人保健施設 病院退院後、在宅復帰が困難な場合に医療ケアやリハビリを受けることができる。入所期間は原則3か月。終身利用はできない。
介護医療院 医師や看護師が常駐し、長期入所や終身利用が可能。要介護や認知症の方が入所できる。相部屋であることが多い。
ケアハウス 「一般型」と「介護型」の2タイプがある。「一般型」は、家族からの支援が難しい60歳以上の方なら入居が可能。原則的に介護度や医療依存の高い方は入居できない。一方、「介護型」は専門スタッフによる介護サービスが提供されるので、入居後に介護度が高くなっても退去をせまられることはない。

民間企業が運営する「民間施設」6種類

主に民間企業が運営する「民間施設」は、高齢者のニーズを満たすことに重点が置かれ、各施設で特色をだすために、設備多種多様なサービスが幅広くあります。

「公的施設」に比べると費用は高めになりますが、その分、身体の状態にあわせて幅広い対応が可能だったり、サービスが充実し、快適な生活を送れるというメリットがあります。

種類 特徴
介護付き有料老人ホーム 一般的には介護が必要な65歳以上の方が対象の施設ですが、介護が必要ない自立の方が利用できる混合型の施設もある。入居条件も幅広く待ち期間が短く、定額のために目安もつけやすい。手厚い介護ケアが受けられる。
住宅型有料老人ホーム 食事や掃除、洗濯などといった生活援助サービスが受けられる。介護サービスは外部のサービスを受ける。介護度が高い方や医療依存度の高い方は入居できないことがある。
健康型有料老人ホーム 介護の必要がない自立生活が可能な方のための施設。そのため、介護が必要になったり、認知症を発症した場合は退去しなくてはならない。サークル活動やイベントなども充実しアクティブに暮らしたい方向き。
サービス付き高齢者向け住宅 60歳以上の方が入居できるバリアフリーの賃貸住宅。安否確認と生活相談が提供される。介護が必要になったら外部サービスを利用し生活できるが、介護度が高くなると住み続けるのが難しくなる。
グループホーム 65歳以上の認知症をもつ方のための施設。施設のある市区町村に住民票がある方のみ入居できる。専門スタッフのサポートのもと、可能な範囲で役割を持ち自立した生活を行う。少人数で環境の変化対応が難しい認知症を持つ方が穏やかに暮らせる環境が整えられている。
シニア向け分譲マンション 高齢者が住みやすいバリアフリー設計の分譲マンション。生活支援サービスを受けることができる。物件を購入することになるので、売却や譲渡、賃貸など自由に行える。富裕層向けの設備が充実した物件が多い

見学前の準備

いざ見学となったときには、

  • 見学までの流れの把握
  • チェックリストの作成

の2つを事前に準備しておくとスムーズにいきます。見学までの流れは以下のとおりです。

①資料請求をして老人ホームの概要を確認する

②見学候補を絞る

③見学内容の希望をまとめる

④老人ホームに連絡して見学予約をする

⑤見学チェックリストの作成

⑥見学当日

見学のポイント

今後長く生活することになるかもしれない老人ホームですから、見学の際には細かな部分までしっかりと確認しましょう。
老人ホームの見学ではこんなポイントをチェックしておくと、他の施設とも比較しやすいです。

施設内

・清掃やメンテナンスが行き届いているか
・専用居室スペースは十分な広さがあるか、収納スペースは十分か
・エレベーターや手すりなど生活しやすい設備が整っているか
・共有スペースの広さ、使いやすさ

周辺環境

・交通の便は良いか
・周辺に公園などの自然はあるか
・周辺にお店などがあるか
・外出しやすい環境か

スタッフ対応

・スタッフの人数やシフト体制に無理はないか
・身だしなみや挨拶
・スタッフが活き活きと働けているか

介護の体制

・看護師などの医療スタッフの配置の有無
・病院との連携体制
・緊急時の対応
・認知症や病状が進んだ場合は入居し続けられるのか

見学時に必ず確認すべき「落とし穴」

  • 追加費用の有無:月額費用以外にかかる費用(おむつ代、理美容代、医療費など)を詳細に確認。

  • 医療・看護体制:夜間の看護師の配置状況、緊急時の搬送先、看取りが可能か。

  • 退去条件:体調悪化や認知症の進行で退去を求められるケースがあるか。

  • 入居金の返還条件:途中で退去した場合、入居金がどれくらい返還されるか。

  • 入居者の男女比、介護度:本人の状況に近い方が多いかを確認することで、なじみやすさを判断できる。

  • 看取りの実績:看取りを希望する場合、看取り体制が整っているか、過去の実績を聞く。

まとめ

高齢者施設選びは、人生の大きな決断の一つです。パンフレットの情報だけでなく、必ず複数の施設を見学し、上記のポイントを参考にしながら、本人の意思や家族の状況に合った施設をじっくりと見極めてください。複数の施設を比較検討し、納得のいく施設を見つけることが、後悔しない選択につながります。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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