2025年度の在職老齢年金改定でどうなる?

2025年度の年金制度改正は、働く高齢者にとって重要な変更点を含んでいます。特に「在職老齢年金制度」は、賃金と年金の合計額によって年金の一部または全部が支給停止される仕組みであるため、働き方に直接影響します。

今回の記事は在職老齢年金改定で私たちにどう影響があるか解説していきます。

年金イメージ

在職老齢年金制度とは

在職老齢年金制度は、年金を受給しながら働く高齢者について、一定額以上の報酬のある方は年金制度を支える側に回っていただくという考え方に基づき、年金の支給を調整する仕組みです。

在職老齢年金の対象者

在職老齢年金の対象者は、以下のとおりです。

  • 60歳~69歳:厚生年金保険に加入しながら、老齢厚生年金を受けている方
  • 70歳以上:厚生年金保険の適用事業所に勤務している方

なお、在職老齢年金は60歳以上から65歳未満の在職老齢年金制度である「低在老」と、65歳以上の在職老齢年金制度である「高在老」に分かれていましたが、2022年の改正で基準が統一されました。

厚生労働省が公表している2022年度末時点のデータによれば、65歳以上の在職している年金受給権者のうち16%が支給停止の対象となっています。

2025年度の在職老齢年金

在職老齢年金制度では、年金制度の改正や賃金水準などの社会情勢を踏まえて、「支給停止調整額」が年度ごとに見直されています。

支給停止調整額とは

支給停止調整額とは、年金と給料の両方を受け取っている人において、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止される基準となる金額です。

老齢厚生年金の「基本月額」と「総報酬月額相当額」が支給停止調整額を超えると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になります。

  • 基本月額:老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額
  • 総報酬月額相当額:(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷ 12

年金が支給停止される期間と支給停止額の変更時期

年金が支給停止されるのは、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が支給停止調整額(2025年は51万円)を超えている期間です。

支給停止額は、総報酬月額相当額が変わった月または退職日の翌月から変更されます。ただし、退職して1ヶ月以内に再就職して厚生年金保険に加入した場合は除かれます。

在職老齢年金の計算方法

在職老齢年金の計算方法は、「基本月額と総報酬月額相当額との合計が支給停止調整額を超えるかどうか」によって変わります具体的には以下の通りです。

  • 【基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止調整額以下の場合】
    ・全額支給(年金の減額なし)
  • 【基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止調整額を超える場合】
    ・年金額 = 基本月額 -(基本月額 + 総報酬月額相当額 - 支給停止調整額) ÷ 2

計算式の中で用いる支給停止調整額は、厚生年金保険法施行規則によって、名目賃金の変動に応じて毎年度改定されます。

在職老齢年金が廃止される?制度改正の内容と見直しの影響

厚生労働省の審議会では、在職老齢年金制度の課題として、年金受給者が働いて給料を得ると年金が減ってしまうことから、高齢者の働く意欲が失われることが指摘されています。

企業に雇用されて給料を得ている人は、在職老齢年金制度の対象になるため年金が減ります。一方で、個人事業主として働いている人は在職老齢年金制度の対象外です。このような制度上の不公平感があることも、問題点として挙げられています。

現行制度の問題点を解決するため、制度の改正が議論されているところです。また、在職老齢年金制度は経済の状況を踏まえて改正が行われることもあります。以下では、2025年度と2026年度、それぞれの在職老齢年金制度の支給停止調整額の変更点を解説します。

2025年度の変更点

在職老齢年金の支給停止調整額は、名目賃金の変動に応じて毎年度改定されます。

近年の賃金上昇を加味して、支給停止調整額は2023年度48万円から2024年度50万円へ、2025年度には51万円へ引き上げられました。

2026年度以降の在職老齢年金

2025年6月に成立した年金改正法案では、2026年度(令和8年度)の在職老齢年金の支給停止調整額が、現行の51万円から大きく引き上げられ、62万円となる予定です。

平均寿命や健康寿命の延伸により、働き続けることを希望する高齢者が増加していることに加え、人材確保や技能継承といった観点からも、高齢者の活躍を求める社会的なニーズが高まっていることが、今回の見直しの背景にあります。

なお、この「62万円」は、2024年度の賃金水準をもとに設定された「令和6年度価格」であるため、今後の物価や賃金の変動によって変更される可能性があります。

まとめ

老齢厚生年金の受給者が働いて給料を受け取ると、在職老齢年金制度によって老齢厚生年金額が減ることがあります。年金が減るのは、基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止調整額を超える場合です。

逆に、支給停止調整額を超えなければ全額を受給できるので、年金の一部または全部の支給停止はありません。

年金受給者が働いて給料を得るケースでは、在職老齢年金の支給停止調整額を超えてしまい年金額が減らないか事前に確認しましょう。

在職老齢年金制度には課題があり、制度の廃止も含めて議論・検討されています。制度に関する最新情報は、厚生労働省や日本年金機構のウェブサイトなどで確認するようにしてください。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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