シニア世代が加入できる「医療保険」はどれ? 持病があっても入れる商品比較
「定年を機に保険を見直したいけれど、高血圧や糖尿病の薬を飲んでいるから、もう新しい保険には入れないのでは?」
そんな不安を抱えているシニア世代の方は非常に多いです。 しかし、諦めるのは早いです。保険業界では今、シニア層のニーズに応えるために、「持病があっても入りやすい保険」の開発競争が激化しています。
一昔前なら断られていたような健康状態でも、条件次第で加入できる商品は確実に増えています。ただし、選び方を間違えると「保険料が高すぎて生活を圧迫する」「肝心な時に給付金が出ない」という事態になりかねません。
この記事では、持病があるシニア世代が検討すべき「引受基準緩和型医療保険」を中心に、失敗しない選び方と最新のトレンドを比較解説します。
![]()
1. 持病があっても入れる「3つの選択肢」
まず、ご自身の健康状態に合わせて、どのタイプの保険を狙うべきか整理しましょう。上から順に検討するのが鉄則です。
① 通常の医療保険(一般型)
-
特徴: 保険料が最も安い。
-
対象: 健康な人、または軽度の持病があり数値が安定している人。
-
戦略: 「薬を飲んでいる=即NG」ではありません。まずはダメ元で一般型に申し込んでみるのが賢い方法です。条件付き(特定の部位は不担保など)で入れることもあります。
② 引受基準緩和型医療保険(限定告知型)
-
特徴: 告知項目(質問)が3〜5つ程度と少なく、持病があっても入りやすい。その代わり、保険料は一般型より1.5倍〜2倍程度割高になる。
-
対象: 過去に入院・手術歴がある人、現在通院中の人。
-
★本記事のメイン: シニア世代の加入者が最も多いのがこのタイプです。
③ 無選択型医療保険
-
特徴: 健康状態の告知が一切不要。誰でも入れるが、保険料は非常に高く、持病の悪化は保障対象外になるなどの制限が厳しい。
-
対象: 緩和型も断られた場合の最終手段。
-
注意: コスパが悪いため、よほどの事情がない限り推奨されません。
2. 失敗しない「緩和型保険」選び 3つのチェックポイント
「引受基準緩和型」ならどれでも同じ、ではありません。商品によって条件は驚くほど違います。比較すべきは以下の3点です。
ポイント①:「支払削減期間」がないものを選ぶ(最新トレンド)
以前の緩和型保険は、「加入してから1年間は、病気になっても給付金は半額」という「支払削減期間(しはらいさくげんきかん)」があるのが常識でした。
しかし、最近のトレンドは「加入1年目から満額保障(削減期間なし)」です。 保険料が同程度なら、削減期間がない商品を選ぶのが圧倒的に有利です。
-
削減期間なしの例: メディケア生命、ネオファースト生命、オリックス生命、FWD生命など(※2025年時点の傾向)
ポイント②:告知項目の「期間」の壁(1年か2年か)
緩和型保険に入るには、3〜4つの質問すべてに「いいえ」と答える必要があります。特に重要なのが「過去○年以内に、入院や手術をしましたか?」という質問です。
-
A社: 「過去2年以内」の入院歴を聞く(厳しい)
-
B社: 「過去1年以内」の入院歴を聞く(緩い)
もしあなたが「1年半前に手術をした」場合、A社には入れませんが、B社には入れる可能性があります。 「直近で入院歴がある」という方は、この「1年以内」で設定しているメーカー(なないろ生命やFWD生命などにその傾向あり)を探すのがコツです。
ポイント③:先進医療特約をつける
シニア世代が保険に入る最大のメリットの一つは、公的保険が効かない高額治療への備えです。 特にがん治療などで使われる「先進医療」は、技術料だけで数百万円かかることがありますが、「先進医療特約」をつけておけば、月額100円程度の上乗せで実費(通算2,000万円までなど)がカバーされます。これは必須のオプションです。
3. シニアに人気の商品タイプ比較
特定の商品名は時期によってスペックが変わるため、ここでは「タイプ別」のおすすめの選び方を紹介します。
タイプA:コスパ重視派(メディケア生命、FWD生命など)
-
特徴: 保険料が比較的安く、無駄な特約を削ぎ落としたシンプル設計。
-
向いている人: 「とりあえず入院日額5,000円と手術代だけ確保したい」「掛け捨てで保険料を抑えたい」人。
-
注目点: 「削減期間なし」の商品が多い激戦区です。
タイプB:保障充実派(オリックス生命、メットライフ生命など)
-
特徴: 持病の悪化だけでなく、がん・心疾患・脳血管疾患(三大疾病)になった時に一時金が出る特約などが充実している。
-
向いている人: 「入院日額だけでなく、まとまった一時金で治療費の不安を消したい」人。
-
注目点: 保険料は高くなりますが、「一生涯の安心」を買うならこちら。
タイプC:持病特化派(チューリッヒ生命など)
-
特徴: 特定の持病(高血圧など)があっても、条件を満たせば入りやすい独自の基準を持つ。
-
向いている人: 他社で断られた経験がある人。
4. 契約前に知っておくべき「落とし穴」
「告知項目をクリアして加入できた! これで安心!」と思っても、以下のケースでは給付金が出ないことがあります。
告知違反はバレる
「3ヶ月前に医者から『そろそろ手術したほうがいい』と言われたけど、まだ日程は決まっていないから告知しなくていいや」 これは「入院・手術の勧め」に該当するため、告知が必要です(「いいえ」で答えると告知義務違反になります)。いざ請求した際に調査が入り、契約解除になるリスクがあります。
加入「前」から決まっていた入院は対象外
契約が成立しても、「契約日より前に医師から勧められていた入院・手術」については、たとえ契約後に実施しても保障対象外になることが一般的です。 「来月手術するから、今から保険に入ろう」という駆け込み加入は、基本的に通用しません。
まとめ:その保険、本当に必要ですか?
最後に、冷静な視点も持ちましょう。 引受基準緩和型保険は、どうしても保険料が高くなります。 例えば、70歳男性が入院日額5,000円の緩和型保険に入ると、月額1万円近くかかることも珍しくありません。
-
10年で支払う保険料: 約120万円
-
受け取れる給付金: 入院しなければ0円
もし貯蓄が十分にあるなら、「保険には入らず、その分のお金を『医療用貯金』として別口座に積み立てておく」方が、結果的に得をするケースも多々あります。 日本の「高額療養費制度」を使えば、一般的な手術・入院なら自己負担は月10万円以下で済むことが多いからです。
それでも、「貯蓄が減るのが精神的に辛い」「お守りがないと不安」という場合は、保険の出番です。 まずは複数の保険会社(乗り合い代理店など)で、「自分の持病(入院歴の時期)でも入れて、かつ削減期間がない一番安い商品はどれ?」と見積もりを取ってみることから始めましょう。
