年金だけで安心?「長生きリスク」に備える個人年金保険とは?
人生100年時代といわれるいま、老後のお金を計画的に準備しておくことが大切です。
公的年金だけでは老後の生活費には足りない事態に備えるには、お金を貯蓄するほか、自分で任意に加入できる個人年金保険や確定拠出年金などで、年金の上乗せを用意する方法があります。
今回は、老後の備えとなりうる個人年金保険についてご紹介します。
老後資金はいくら必要になるのか?
老後というと、多くの場合は退職後にあたる60歳〜65歳からの人生をイメージされる方が多いでしょう。今の日本の平均寿命から考えると、およそ20年〜30年ほどの年数になります。この長い老後期間に、老後資金は果たしていくら必要になるのでしょうか?
総務省が毎年公表している家計調査年報(家計収支編)を参考に、必要費用をイメージしてみましょう。
老後の夫婦2人の生活に必要な費用は月額約23万7千円
65歳以上で無職(収入なし)、夫婦2人世帯の平均消費支出は、平均月額236,696円となっており、食料や光熱・水道代、家具・家事用品、保健医療費、交通・通信、教養娯楽などに使われています。これらとは別の支出となる税金や社会保険料などの非消費支出は31,812円となります。
独身の老後の生活に必要な費用は月額約14万3千円
65歳以上で無職(収入なし)、単身世帯の平均消費支出は、平均月額143,139円となっており、2人暮らし世帯と同じく、食料や光熱・水道代、家具・家事用品、保健医療費、交通・通信、教養娯楽などに使われています。単身世帯の場合の税金や社会保険料などの非消費支出は、12,356円となります。
公的年金額は、1人あたり月額約11万円〜12万円ほど
社会保障給付による収入は、65歳以上の夫婦のみの無職世帯で平均月額220,418円。65歳以上で単身無職世帯では平均月額121,496円です。いずれのケースでも、実収入のうち85%以上を社会保障給付による収入が占めています。
毎月の平均消費支出と比較すると、公的年金が老後生活の経済基盤になっている世帯が多いと言えます。しかし、年金額は、共働きかどうか、職業などによって大きく異なります。我が家は、いくら年金額があり、いくら使っているのか確認しておくことが大切です。
個人年金保険とは?
個人年金保険は、老後資金に備えるための年金保険のことで、契約時に決めた一定の年齢から年金が受け取れます。
被保険者が年金受け取り開始前に亡くなった場合は、払い込んだ保険料の金額に相当する死亡給付金が支払われることが一般的です。
保険料の払込方法には、月払いや年払いで払い込む「平準払い」のものと契約時に一括で払い込む「一時払い」のものがあります。
公的年金との違い
公的年金は、国民年金と厚生年金の2階建て構造になっています。
1階部分にあたる国民年金は、日本に住む20歳~60歳のすべての人に加入が義務付けられており、2階部分の厚生年金は、会社員などに加入が義務付けられています。
一方、個人年金保険は民間の保険会社が取り扱う保険商品で、加入が義務付けられているものではありません。
公的年金を補完するものとして私的に申込みする任意保険です。保険期間や年金額などは、保険商品により異なります。
個人年金保険の種類
個人年金保険のおもな種類は、確定年金・有期年金・終身年金の3つです。ここからは、それぞれの特徴についてくわしく見ていきましょう。
確定年金
確定年金とは、生死にかかわらず、契約時に決めた一定期間年金が受け取れる保険です。年金受取開始後に被保険者が亡くなった場合は、遺族に残りの年金または一時金が支払われます。
受給期間は5年・10年・15年等と定められるのが一般的です。
有期年金
有期年金とは、生存している限り、契約時に決めた一定期間年金が受け取れる保険です。年金受取開始後に被保険者が亡くなった場合、遺族に年金は支払われません。受給期間は、10年・15年等と設定できるのが一般的です。
また、有期年金のなかでも、被保険者の生死に関係なく、年金の受け取りが可能となる保証期間がついたものを「保証期間付有期年金」といいます。
保証期間付有期年金で保証期間内に被保険者が死亡した場合は、相続人が残りの保証期間に対応する額を、一時金または年金として受け取れます。
終身年金
終身年金は、生存している限り年金が受け取れる保険です。年金受取開始後に被保険者が亡くなった場合、遺族に年金は支払われません。
個人年金保険のメリット
老後資金に備えるための個人年金保険には、さまざまなメリットがあります。
貯蓄が苦手でも老後資金を計画的に準備できる
給与などの収入があれば、一定額を先に貯蓄へ回す「先取り貯蓄」を自動で行なう仕組みづくりをして、残った範囲内でやりくりをすることが貯蓄のコツです。
個人年金保険では自動で保険料が引き落とされる設定もできるため、老後に向けて計画的に貯蓄できます。預金のように気軽に引き出せないため、貯蓄が苦手な方でも貯めやすい点が特徴です。
個人年金保険料控除の適用を受けられる
個人年金保険料を払い込んでいる場合、通常の生命保険料控除とは別に個人年金保険料控除として所得税・住民税の優遇を受けられる可能性があります。1年間に一定額まで、払い込んだ保険料の金額に応じて税金が軽減されるため、家計の助けになります。
ただし、優遇を受けるためには、「保険料払込期間が10年以上あること」など一定の条件を満たす必要があるので注意してください。また、年末調整や確定申告での手続きが必要です。
健康状態に不安があっても加入しやすい
一般的に、個人年金保険では、保険料払込期間中に被保険者が死亡した場合、既に払い込みを終えた保険料に相当する額が死亡給付金として遺族に支払われます。重度の障害状態になった場合でも保険料の払い込みは免除されません。
よって、契約時に健康状態の告知や医師による診査は必要ない場合が多いです。終身保険など他の貯蓄型の生命保険と比較すると、健康状態に不安があっても加入しやすい保険です。
個人年金保険のデメリット
解約すると元本割れになる
個人年金保険の加入後、万一、保険料払込期間中に解約した場合、払込保険料の額に応じて支払われる解約返戻金は、払込保険料の総額よりも少なくなってしまうことがあります。このような支払ったお金(元本)よりも受け取れるお金が少ない場合を「元本割れ」と言います。
保険料の払い込みを続けるのが難しい場合は、払済保険への変更や年金額の減額などで有効に契約を続けられる場合もありますので、まずは保険会社に相談しましょう。
インフレリスクがある
定額個人年金保険の場合、インフレが起きたときに資産の価値が目減りしてしまうリスクがあります。インフレとは、物やサービスの値段が上がる現象です。
例えば、財布に1,000円を持っていたとしましょう。ジュースが1本100円だとすれば10本買えますが、1本200円に値上がりすると5本しか買えません。このように、物価が上がると相対的にお金の価値は下がってしまいます。
定額個人年金保険は、決まった利率で運用されるため、契約時に将来受け取れる年金額が確定しています。あらかじめ確定しているのは安心ですが、物価が上がっても受け取れる年金の金額は変わりません。
インフレになったときに相対的にお金の価値が減るリスクがある点を理解しておきましょう。
まとめ
個人年金保険は、加入後は特に手をかけず、コツコツと積み立てを継続して老後資金の準備をする方におすすめです。保険料の払込方法・払込期間・年金の受け取り方、商品によってさまざまですが、まずは個人年金保険料控除を利用できる商品を選ぶと良いでしょう。