【初心者向け】60歳からでも遅くない!少額から始める投資信託の選び方
「定年を迎え、退職金が入ったけれど、これを銀行に置いておくだけでいいのだろうか?」 「周りの友人がNISAを始めたと聞くけれど、60歳の私にはもう遅いのではないか?」
そんな不安や焦りを感じていませんか? 結論から申し上げます。「60歳からの投資」は、決して遅くありません。むしろ、これからの長いセカンドライフを豊かに過ごすために、今こそが最適なスタートラインなのです。
ただし、20代や30代の投資とは「ルール」が違います。シニア世代に必要なのは、資産を大きく増やすことではなく、「守りながら、少しだけ増やす」こと。 今回は、初心者の方でも安心して始められる、少額からの「投資信託」の選び方と運用のコツを徹底解説します。
![]()
1. なぜ「60歳から」でも間に合うのか?
「投資は時間をかけないと意味がない」とよく言われますが、60代には「時間」がないのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。
人生100年時代の「残り時間」
現在の60歳の平均余命は、男性で約24年、女性で約29年です。90歳、100歳まで生きることも珍しくありません。つまり、あなたにはまだ20年〜30年という十分な運用期間が残されています。 この期間、資産を年利0.002%の定期預金で眠らせておくのと、年利3〜4%を目指して運用するのとでは、10年後、20年後の「使えるお金」に大きな差が生まれます。
敵は「インフレ(物価上昇)」
今、私たちが最も警戒すべきは「インフレ」です。物の値段が上がれば、現金の価値は相対的に下がります。 銀行預金だけでは、資産の実質的な価値が目減りしていくリスクがあります。投資信託を持つことは、このインフレから大切な老後資金を守るための「防波堤」になるのです。
2. 60代投資の「鉄の掟」3カ条
商品を選ぶ前に、絶対に守っていただきたいルールが3つあります。
-
退職金を一括で突っ込まない これが最大の失敗パターンです。まとまったお金があっても、一度に投資してはいけません。相場が下がった時の精神的ダメージが大きすぎるからです。
-
「生活防衛資金」は確保する 向こう3年〜5年以内に使う予定のあるお金や、生活費の備えは必ず「定期預金・普通預金」に残してください。投資に回すのは、当面使う予定のない「余裕資金」だけです。
-
ネット証券を使う(銀行窓口に行かない) 銀行の窓口は親切ですが、手数料の高い商品を勧められる傾向があります。手数料は運用の敵です。少し勉強が必要ですが、手数料の安い「ネット証券(SBI証券や楽天証券など)」を利用しましょう。
3. 初心者が選ぶべき「投資信託」の条件
世の中には6000本以上の投資信託がありますが、60代の初心者が選ぶべき商品はほんの一握りです。以下の3つの条件を満たすものだけを選んでください。
条件①:販売手数料が「0円(ノーロード)」
買う時に手数料がかかる商品は論外です。今は優良な商品のほとんどが無料です。
条件②:信託報酬(持っている間にかかる費用)が「安い」
投資信託を持っている間、毎日引かれる手数料です。これが高いと利益を圧迫します。目安は「年率0.2%以下」です。
条件③:投資先が「全世界」に分散されている
日本の株だけ、アメリカの株だけ、というのはリスクが高いです。「卵を一つのカゴに盛るな」の格言通り、世界中の株に丸ごと投資できる商品を選びましょう。
4. 具体的にどれを買えばいい? おすすめの2パターン
では、具体的にどの商品を選べば良いのでしょうか。60代の方におすすめの「型」は2つです。
パターンA:管理の手間いらず「バランス型ファンド」
「株は怖いから、債券(国債など)も混ぜて安定させたい」という慎重派の方におすすめです。
-
おすすめ: eMAXIS Slim バランス(8資産均等型) など
-
特徴: 国内外の株、債券、不動産(リート)に均等に分散投資してくれます。株価が暴落しても、債券がクッションとなり、値動きがマイルドになります。これ一本買っておけば、自分で調整する必要がありません。
パターンB:シンプル最強「全世界株式」+「現金クッション」
「投資はシンプルにしたい」「インフレ対策を重視したい」という方におすすめです。
-
おすすめ: eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) ※通称オルカン
-
特徴: これ一本で、日本を含む世界中の先進国・新興国の株式に投資できます。
-
運用法: 株式100%なので値動きは大きめです。そこで、「投資額を資産の3割程度に抑え、残りの7割を現金で持つことで、全体のリスクを調整します。
-
例:資産1000万円なら、300万円を「オルカン」、700万円を「定期預金」。
-
5. 「少額」からどう始める? 新NISA活用術
60代からの投資デビューは、「新NISA(つみたて投資枠)」を活用し、毎月の積立から始めるのがベストです。
月1万円〜3万円からスタート
いきなり大金を入れる必要はありません。「月3万円」など、家計に負担のない額を設定し、毎月自動的に買い付ける設定にします。これを「ドル・コスト平均法」と呼び、高い時には少なく、安い時には多く買うことで、平均購入単価を下げ、リスクを抑える効果があります。
慣れてきたらスポット購入も
積立に慣れてきて、値動きに心がざわつかなくなったら、「成長投資枠」を使って、ボーナス時などに少し追加購入するのも良いでしょう。ただし、焦りは禁物です。
6. 意外と知らない「出口戦略(売り方)」
投資は「買って終わり」ではありません。60代の場合、「いつ、どうやって使うか」という出口戦略が非常に重要です。
「定率」で取り崩す
お金が必要になった時、または75歳などを過ぎて資産を取り崩すフェーズに入ったら、「毎月(または毎年)、資産の◯%を売却する」という方法をおすすめします。 今のネット証券には「自動売却サービス」があります。例えば「毎月、資産の0.3%ずつ自動で売って現金で受け取る」という設定が可能です。
-
株価が高い時: 少ない口数を売る(資産が長持ちする)。
-
株価が安い時: 多い口数を売る。
このように機械的に取り崩すことで、資産寿命を延ばしながら、年金への上乗せ収入を得ることができます。
結論:まずは「月1万円」の冒険に出よう
「60歳からの投資」に、大きな勇気は必要ありません。 必要なのは、正しい知識と、小さな一歩を踏み出す行動力だけです。
-
生活防衛資金を確保する。
-
ネット証券に口座を開く(新NISA)。
-
手数料の安い「全世界株式」か「バランス型」を選ぶ。
-
月数万円の積立設定をして、あとは忘れる。
これだけで、あなたの資産はインフレという波に負けない、強い体質に変わっていきます。 今日が、これからの人生で一番若い日です。豊かな老後のために、まずは少額から、投資信託という「お金のなる木」を育て始めてみませんか?
