銀行が教えない! 退職金定期預金の「金利優遇」に潜む落とし穴

定年退職を迎え、長年の勤務の結晶である「退職金」が銀行口座に振り込まれた瞬間。それは人生で一番、預金残高が増える瞬間かもしれません。

すると不思議なことに、普段はあまり連絡の来ない銀行から電話がかかってきます。 「退職おめでとうございます。今だけ、退職者様限定の『特別金利定期預金』をご案内しておりまして…なんと年利5%です!」

今の超低金利時代に「5%」なんて夢のような数字です。「これは預けないと損だ!」と思ってしまうのが人情ですが、ここに大きな落とし穴があります。

銀行員は嘘はついていません。しかし、「不利な真実」をあえて強調しないだけです。 この記事では、銀行が決して大声では言わない「退職金定期預金」のカラクリと、大切な老後資金を守るための正しい知識を解説します。

定年退職を迎え、長年の勤務の結晶である「退職金」が銀行口座に振り込まれた瞬間。それは人生で一番、預金残高が増える瞬間かもしれません。

すると不思議なことに、普段はあまり連絡の来ない銀行から電話がかかってきます。 「退職おめでとうございます。今だけ、退職者様限定の**『特別金利定期預金』をご案内しておりまして…なんと年利5%**です!」

今の超低金利時代に「5%」なんて夢のような数字です。「これは預けないと損だ!」と思ってしまうのが人情ですが、ここに大きな落とし穴があります。

銀行員は嘘はついていません。しかし、**「不利な真実」**をあえて強調しないだけです。 この記事では、銀行が決して大声では言わない「退職金定期預金」のカラクリと、大切な老後資金を守るための正しい知識を解説します。


1. 「年利○%」の数字マジック

まず、パンフレットに大きく書かれた「年利5%」や「年利7%」という数字。これには必ず小さな注釈があります。

「※ただし、適用期間は3ヶ月間」

銀行の金利表示は、あくまで「1年間預けた場合の利率(年利)」です。しかし、退職金プランの多くは、最初の3ヶ月(または1ヶ月)だけしかこの高金利が適用されません。

実際の受取額を計算してみよう

例えば、退職金1,000万円を「年利6%(3ヶ月もの)」に預けたとします。

  • 直感的な期待: 1,000万円 × 6% = 60万円もらえる!

  • 現実の計算:1,000万円 × 6%×3ヵ月/12ヵ月=15万円

さらにここから、約20%の税金が引かれます

15万円×(1-0.20315)≒11万9,500円

手取りは約12万円です。「あれ? 思ったより少ないな」と感じませんか? それでも12万円もらえるなら悪くない、と思うかもしれません。しかし、問題は次です。

2. 最大の罠:「セット販売」という名の“手数料ビジネス”

多くの銀行で、この高金利定期預金を利用するための条件として、以下のような「抱き合わせ販売(セット販売)」が提示されます。

条件: 退職金の50%は定期預金(高金利)に、 残りの50%は「投資信託」や「ファンドラップ」を購入してください。

これが、銀行がこのキャンペーンを行う本当の目的です。 銀行は、定期預金の金利を払ってでも、あなたに「手数料の高い投資商品」を買わせたいのです。

「金利」と「手数料」の天秤

先ほどの例(1,000万円)で、500万円を定期預金、500万円を投資信託にした場合を見てみましょう。

  1. 定期預金(500万円)の受取利息: 先ほどの計算の半分なので、手取り約6万円のプラス。

  2. 投資信託(500万円)の購入手数料: 銀行が勧める投資信託の多くは、購入時に2%〜3%の手数料がかかります。

500万円×3.3%(税込)=16万5,000円

のマイナス

【結果】

受取利息(+6万円)-購入手数料(-16.5万円)=△10万5,000円

なんと、契約した瞬間に、トータルで10万円以上の赤字が確定してしまうのです。 「高い金利でお得ですよ」と言いながら、実は右手の利益を左手の手数料が大きく食い潰している。これが退職金プランの正体であることが非常に多いのです。


3. 買わされる「投資信託」の中身が悪い

「でも、買った投資信託が値上がりすれば、元は取れるでしょ?」 そう考える方もいますが、ここにも問題があります。

このセットプランで提案される投資信託は、銀行にとって「儲かる商品」であることが多いです。つまり、「手数料が高い商品」です。

  • 購入時手数料が高い: ネット証券なら無料(ノーロード)が当たり前なのに、窓口では3%取る。

  • 信託報酬(維持費)が高い: 年間1.5%〜2%程度の維持費がかかるアクティブファンドや、毎月分配型ファンドなど。

今の投資のスタンダード(新NISAなどで推奨される商品)は、「購入手数料0円」「信託報酬0.1%前後」のインデックスファンドです。 それに比べてコストが数十倍も高い商品を売りつけられるため、運用で利益を出して手数料分を取り返すハードルは極めて高くなります。


4. 3ヶ月経った後はどうなる?

3ヶ月の優遇期間が終わると、定期預金部分は「店頭表示金利(通常金利)」に自動的に切り替わります。 現在のメガバンクの普通預金金利は0.02%、定期預金でも0.1%にも満たない水準です(※金利情勢により変動しますが、極めて低いです)。

一方、投資信託の手数料(信託報酬)はずっと引かれ続けます。 気づいた頃には、「定期預金の利息は雀の涙、投資信託は手数料負けして元本割れ」という状態になりかねません。


5. 銀行の言い分と、私たちの対策

銀行も営利企業ですから、利益を追求するのは当然です。窓口の人件費や店舗の維持費を稼ぐために、手数料の高い商品を売る必要があります。 「銀行員さんは親切だから」と情に流されず、私たちは自分の資産を自分で守らなければなりません。

正しい退職金の守り方 3選

では、振り込まれた1,000万円や2,000万円をどうすればいいのでしょうか?

① 「個人向け国債(変動10年)」を買う

元本割れのリスクを負いたくないなら、これが最適解です。

  • 国が元本保証: 銀行預金より安全性が高い(ペイオフの上限も関係なし)。

  • 金利上昇に強い: 半年ごとに金利が見直されるため、インフレ対策になる。

  • 手数料なし: 銀行や証券会社で購入できますが、購入手数料はかかりません。

② 「ネット銀行」の定期預金を使う

どうしても定期預金が良いなら、店舗を持たない「ネット銀行」を使いましょう。 特別なキャンペーンでなくても、メガバンクの数十倍の金利(0.2%〜0.4%など)を常時提供している銀行があります。もちろん、投資信託との抱き合わせ条件はありません。

③ 「NISA」で低コストなインデックス投資

資産を増やしたいなら、銀行の窓口ではなく、ネット証券でNISA口座を開設しましょう。 そこで「全世界株式(オール・カントリー)」などの低コストなインデックスファンドを購入すれば、銀行で買うよりも圧倒的に有利な条件で資産運用ができます。


まとめ:そのハンコ、押す前に計算を!

「退職金定期預金」のすべてが悪だとは言いません。 中には、「投資信託とのセット販売なしで、単純に金利が高い(ただし3ヶ月)」というプランも存在します。それなら、3ヶ月だけ預けて、満期が来たらすぐに全額引き出して他へ移す、という「ひと手間」を惜しまない人にはメリットがあります。

しかし、「投資信託とセットなら金利アップ」という提案には、断固として「NO」と言ってください。

退職金は、あなたの老後を支える命綱です。 見かけの金利に目を奪われて、入り口で手数料を引っこ抜かれることのないよう、冷静に電卓を叩いて判断しましょう。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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