急な入院、頼れる人は?「身元保証」と「任意後見」で備える安心の老後
「頼れる親族がいないため、身元保証人がいない」「自分の身に何かあったときはどうしようか」そんな不安を抱えている高齢者が増えてきています。
本記事では、おひとり様高齢者が安心してできるように、身元保証や任意後見に関する重要なポイントをご紹介します。
身元保証とは?
身元保証とは、 入院や介護施設入所、賃貸契約、就職などの際に本人の身元や支払い能力を保証する制度です。
おひとりさまの老後では、医療機関や介護施設の入所などの手続きを引き受けたり保証人となってくれる人がいなかったりすると、困る場面が多くなります。
身元保証サービス
身元保証サービスとは身元保証人を代行する団体によって提供されるサービスです。サービスの内容や料金などは運営元の企業・団体によって大きく異なります。身元保証サービスの主な形態は以下の3種類です。
①入院時に病院から求められたとき
多くの医療機関は、入院時に身元保証人(身元引受人)を求めます。厚生労働省研究班による研究では6割を超える医療機関が身元保証人を必要としていると結果が出ています。なかには身元保証人がいないと入院が認められない医療機関もあります。
身元保証人の役割は入院費の支払い保証と緊急連絡先です。本人に支払い能力がなければ身元保証人が保証します。急変などが発生したら、医療機関は身元保証人に連絡します。また、本人による意思決定が確認できない状態であれば、治療方針の判断も求められます。
②介護施設に入居するとき
介護施設へ入居する際にも身元保証人が必要です。身元保証人は基本的に1人ですが、身元保証人と連帯保証人を1人ずつ決めなければならない施設もあります。
介護施設において求められる役割は緊急連絡先や治療の際の手続き、月額費用の保証です。施設利用時に体調が悪くなった場合、施設は身元保証人に連絡します。その後の医療機関とのやり取りや、入院等の手続きも身元保証人の役割です。
さらに、被保証人が月額費用を滞納した場合、身元保証人が本人の代わりに支払います。
③亡くなったとき
死後の手続きを担う人がいないと、相続や財産整理が滞り、さまざまなトラブルにつながります。銀行口座の解約や保険金の請求なども、身元保証人が遺言執行者を兼任している場合は、手続きが円滑に進みません。
葬儀や遺品整理を引き受ける人がいないと、誰が対応するのかがはっきりせず、混乱やトラブルを招きます。死後の対応をする人がいない場合、適切な手続きが行われず「無縁仏」として扱われる可能性も高いです。
任意後見制度とは?
成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の2種類があり、「法定後見」は、ご本人の判断能力が低下した後、ご家族等が家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所が成年後見人を選任します。
「任意後見」は、自分が元気で判断力があるうちに、認知症になったときに備えて、自分の代わりにお金の管理や、各種の契約をしてくれる方を選んでおく制度です。
任意後見契約はあくまで「契約」ですので、任意後見人となる側はもちろん、任意後見をお願いする側も、判断能力があるうちに、双方の合意の下で契約を交わす必要があります。
身元保証人と成年後見人の違いとは?
任意後見人と身元保証人は、どちらも高齢者の生活を支える役割がありますが、その役割と責任範囲は異なります。
任意後見人は、本人の判断能力が低下した場合に、財産管理や身上監護を行うための制度で、家庭裁判所の監督下で活動します。
一方、身元保証人は、入院や施設入所時の契約保証や緊急連絡先、身柄の引き取りなど、より幅広い範囲の支援を行います。
項目 | 任意後見人 | 身元保証人 |
役割 | 財産管理、身上監護 | 契約、緊急時対応、身柄引受 |
対象 | 判断能力が不十分になった人 | 誰でも、様々な理由で身元保証人が必要な場合 |
選任 | 家庭裁判所 | 本人との契約 |
特徴 | 裁判所の監督下で活動するため、公正性が保たれる | 柔軟な対応が可能だが、契約内容によっては高額な損害賠償責任を負う場合もある |
後見人がいれば身元保証人は不要?
成年後見人がいても、身元保証人は別途必要になることが多いです。後見人は本人の財産管理や身上監護を行う法的代理人ですが、身元保証人のように施設利用料の支払い保証や緊急時の対応を求められるわけではありません。
成年後見人が客観的な第三者として本人を法的に代理する法定代理人であるのに対し、身元保証人はご本人と同一の立場で責任を負う連帯保証人となるからです。
また、実務上、後見人の代理権は原則として本人の死亡とともに終了してしまうため、後見人では身元保証人に求められるご逝去後の身元引受や残置物の撤去に対応することはできません。
よって、成年後見人がいても、身元保証人の役割は担えないため、別途身元保証人を立てる必要がある場合が多いです。身元保証人がいない場合は、成年後見制度や身元保証サービスを検討しましょう。
まとめ
おひとりさまが老後を迎えると、入院や施設入所、賃貸契約、死後の手続きなどで保証人が求められる場面が多いです。身元保証サービスや成年後見制度、自治体の支援など、おひとりさまの老後の不安を軽減できる方法はあります。
本記事で紹介した方法を参考に、自分らしい老後を迎えるための準備を始めてみてください。