「おひとりさま」でも大丈夫!家族信託で選ぶ、あなたの財産を守る最後の砦

近年、配偶者と子どもの両方がいない、世間で「おひとりさま」と呼ばれたりする方が増えています。このような「おひとり様」には家族信託は無縁かというとそうではありません。むしろ、おひとり様にこそ家族信託が有効に活用できる場合があります。

今回は、「おひとり様の家族信託」をテーマにお伝えしていきたいと思います。

おひとりさまイメージ

おひとり様老後の問題とは?

おひとり様の老後には、経済面、健康面、生活面、そして死後の手続きなど、様々な問題点や不安が考えられます。特に、身寄りがない場合は、これらの問題がより深刻になる可能性があります。

経済面の問題

年金収入だけでは生活費が不足する可能性

一人暮らしの高齢者の場合、年金収入だけでは生活費が不足するケースが多く、貯蓄を取り崩す生活になる可能性があります。

物価上昇や医療費の増加

物価の上昇や医療費の増加に対応できず、生活が苦しくなる可能性があります。

健康面の問題

病気や怪我・介護が必要になった場合のリスク

一人暮らしだと、体調の変化に気づきにくく、病気や怪我の早期発見が遅れる可能性があります。
また、介護が必要になった際に、介護サービスを受けたり、介護施設に入居する際に、身元保証人がいないという問題が発生する可能性があります。

認知症のリスク

認知症になると、契約や手続きができなくなるだけでなく、日常生活を送る上でも様々な困難が生じる可能性があります。

死後の手続き

葬儀やお墓の手配

身寄りがいない場合、葬儀やお墓の手配を誰がしてくれるのか、という問題が発生します。

遺品整理や相続手続き

遺品整理や相続手続きを誰が行うのかなどの問題が発生します。

家族信託について

家族信託とは、自分の財産(不動産・預貯金・有価証券等)を信頼できる家族や相手に託し、特定の人のためにあらかじめ定めた信託目的に従って管理・処分・承継する財産管理手法です。認知症などにより判断能力が低下した場合にも、家族信託の目的に応じて本人の財産を柔軟に活用することができます。

家族信託のメリット

認知症による資産凍結を防げる

認知症になってしまうとあらゆる契約行為ができなくなってしまいます。

家族信託を利用することで、本人が元気なうちに子供や親族に財産管理を託せることができ、託した後に本人が認知症になってしまっても、資産凍結されることなく、息子や親族主導で、財産の管理や処分がスムーズに実行できます。

具体的には、家族信託を親が認知症になる前に組んでおくことで、親が入院・入所したために空き家となった実家(親の自宅)を適正な価格で売却できるなどのメリットがあります。

これは、家族信託によって、売却時を見極める時間が生まれるからであり、売り急ぐとどうしても買いたたかれてしまいがちな不動産も適正な価格で売却しやすくなります。

柔軟な財産管理が実行できる

家族信託は財産を預ける人(親)と財産を預かる人(家族)の契約行為です。

そのため、契約上事前に決めた内容であれば、財産を自由に管理、運営、売却することができます。

例えば、ご自宅を売却することや、売却して得た資金で財産や収益不動産を購入することもできます。また、反対に資産の売却をできなくすることもできます。

しかし、法定後見制度(説明)で財産を管理した場合、家族信託のような自由な財産管理はできません。財産を処分したい場合、家庭裁判所の許可を得る必要があり、許可が下りなければもちろん売却できません。

その点、家族信託では、本人が元気なうちに、本人の希望・方針及びそのために付与する権限を信託契約書の中に記載しておくことができるので、その希望・方針に反しない限り、財産管理の担い手になった息子や家族は、本人の希望に即した柔軟な財産管理や積極的な資産の有効活用ができます。

相続対策

本人が死亡してしまい、遺産をもらった者が既に財産管理の能力が無い場合には、成年後見制度を活用し成年後見人に財産管理を任せることになりかねません。

しかし、家族信託を活用すれば、「遺言」の機能として本人が死亡してしまった後に財産を引き継ぐ人を契約書の中で指定でき、更に本人が亡くなってしまった後も本人の生前、財産の管理を任されていた人の下で、そのまま財産の管理が可能となります。

例えば、高齢のご主人が亡くなった後に認知症の妻が残された場合、引き続き家族信託によって、ご子息や親族の方が、妻の生涯にわたる財産管理・生活資金をサポートすることができます。

財産を託せる人がいない場合はどうする?

商事信託を利用する

商事信託とは、信託銀行や信託会社等、企業に財産を託して管理や運用を依頼する形の信託契約を指します。

財産管理・財産運用のプロである信託銀行や信託会社など、金融庁から免許を受けている会社に依頼する信託契約で、手数料もそれなりに高額になります。

商事信託は家族信託と比較して委託のコストがかかること、財産管理の自由度が低いことがデメリットではありますが、先々、ご自身で財産を管理することに不安を感じる方にとっては、有力な選択肢になり得るでしょう。

家族信託か商事信託のどちらか一方と決めるのではなく、金銭は家族信託でお子さんに管理を任せ、不動産の管理は商事信託を使ってプロに依頼するという方法でもよいでしょう。

成年後見制度を利用する

もう一つの方法としては、「法定後見」や「任意後見」などの成年後見制度を利用する方法です。

こちらも月々の費用がかかる、財産管理の自由度が失われるなどのデメリットはありますが、家庭裁判所がかかわるため一定の透明性が担保された制度でもあります。

法定後見人の場合

法定後見の場合、弁護士・司法書士などの専門家が後見人に就きます。

どんな人が自分の後見人になるか分からない、専門家報酬がかかるなどの特徴がありますが、その反面、家庭裁判所から選任される後見人は国が指定する研修を受けた人物です。

また年に1回、後見人から家庭裁判所に財産状況の報告義務がある等、透明性が確保されているといえます。

任意後見人の場合

もしも依頼できる弁護士、司法書士等の法律専門家がいれば、自身の体力の低下・判断能力の低下の場合に備えて任意後見契約を締結しておくことも考えられます。

任意後見制度であれば、自分で後見人を選んでおくことができます。

まとめ

おひとり様の問題は未婚の方に限ったものではありません。配偶者と離婚または死別することによりおひとり様になることもあります。特に女性は高寿命化や男性との平均寿命との差により、おひとり様の老後を過ごす期間が長くなる傾向にあります。おひとり様の問題は想像以上に身近にあるといえるでしょう。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

関連記事

前の記事へ

急な入院、頼れる人は?「身元保証」と「任意後見」で備える安心の老後