賃貸アパートを生前贈与!節税効果と贈与後のリスクを徹底解説
相続税対策として、「生前贈与」が注目を集めています。
特に、賃貸アパートなどの収益物件は、相続財産の中でも大きな割合を占めることが多いため、生前贈与の対象として検討される方が増えています。
しかし、賃貸アパートの生前贈与は、単純に財産を移転すれば良いというものではありません。そこには、大きな節税効果が期待できる一方で、贈与後のリスクも潜んでいます。
ここでは、賃貸アパートを生前贈与する際の節税効果と、後悔しないためのリスク対策を徹底的に解説します。
賃貸アパートを生前贈与するメリット
贈与財産の評価額が低く抑えられる
賃貸アパートを生前贈与すると、現金を生前贈与する場合と比較すると、贈与財産の評価額を低く抑えることができます。
例えば、現金5,000万円を生前贈与する場合、贈与税の課税対象額は4,890万円(5,000万円-基礎控除110万円)となります。
しかし賃貸アパートを生前贈与する場合、5,000万円で購入したとしても、贈与時の評価額は時価(実勢価格)の50~70%となるため、贈与財産の評価額を圧縮することができます。
贈与後の賃貸収入は受贈者のものになる
アパートを生前贈与すると、贈与成立後の賃貸収入(家賃収入)は、受贈者(贈与された人)の収入となります。
例えば、親が経営していた賃貸アパートを子供に贈与した場合、そのアパートの賃貸収入は、子の収入になるということです。
仮に年間200万円の収入がある賃貸アパートである場合、生前贈与をしなければ10年後には親の資産が2,000万円増えることとなり、親の相続が発生した際の遺産総額自体が増えることとなります。
生前贈与することで賃貸収入を子のものにすることができ、親の相続が発生した際の課税遺産総額を下げることに繋がり、また、子の相続税納税資金となります。
所得を分散させることができる
アパートを生前贈与すれば、所有者である贈与者(贈与する人)の所得を、受贈者(贈与された人)の所得として分散させることができます。
賃貸アパートの所有者の所得総額が高い場合、所得税も高額になってしまいます。
贈与者と受贈者の所得金額にもよりますが、アパートを生前贈与することで所得を分散することができ、超過累進税率緩和による所得税を下げることに繋がるかもしれません。
特定の人にアパートを贈与できる
アパートを生前贈与すれば、特定の人に引き継がせることができます。
特定の人とは、相続人の誰か1人でも良いですし、相続人以外の人(内縁の妻や夫や孫など)でも構いません。
賃貸アパートを相続する場合は、遺言書がない限りは「誰が何をどれだけ取得するのか」を決める遺産分割協議をすることとなり、相続人同士でトラブルに発展することもあります。
生前贈与を選択すれば、自分が引き継がせたい人に賃貸アパートを贈与できます。
賃貸アパートを生前贈与する際のデメリット
相続時に土地の相続税評価額が高くなるケースがある
アパートを生前贈与すると、相続時に土地の相続評価額が高くなる場合があります。
アパートの建物のみを子どもに贈与した場合、土地の所有者は親のままです。子どもが親から土地を借りている状態になるため、土地は「貸家建付地」と見なされます。貸家建付地は条件を満たせば小規模宅地等の特例の対象となり、相続税の評価額が減額になりますが、親と子が生計を別にしている場合は、特例の対象とはなりません(※)。
そのため、相続時に土地にかかる相続税が増えてしまう恐れがあります。
負担付贈与になると贈与税が増える恐れがある
負担付贈与になると贈与税が増える恐れがあることも、生前贈与のデメリットです。
例えば、贈与する代わりにローンも負担する場合、負担付贈与に該当します。負担付贈与の場合、贈与税の課税対象となるのは、贈与財産の価額(時価)からローンの額を差し引いた金額です。時価は、固定資産税評価額よりも高い市場価格が基準となるため、贈与税の課税対象が増え、贈与税額も高くなってしまいます。
アパートの入居者から敷金を預かっている場合も、注意が必要です。敷金については入居者へ返還する義務があるため、アパートを生前贈与すると負担付贈与に該当します。この場合は、敷金と同額の現金を贈与すれば、負担付贈与に該当しないと見なされます。
不動産取得税が発生する
アパートを生前贈与すると、不動産取得税が発生します。
不動産取得税は、固定資産税評価額の3%です。相続の場合、不動産取得税は課されません。
また、所有権移転登記も行わなければならず、登録免許税を納める義務があります。相続の場合、登録免許税は0.4%ですが、生前贈与の場合は2%と税率がかなり高くなります。
まとめ
生前贈与という仕組みを活用すると、将来かかることになる相続税を節税できることがあります。贈与の方法には年間110万円の基礎控除がある暦年贈与と、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与に2500万円までの特別控除がある相続時精算課税制度の2種類があります。
不動産との組み合わせでさらに有利になることもありますが、注意すべき点もあるため、実際に贈与するときは専門家に相談することが必要です。