自宅は「資産」か「負債」か?リバースモーゲージからリースバックまで、不動産活用術

多くのシニア世代にとって、自宅は長年住み慣れた大切な場所です。

一方で、老後の生活費や医療費、介護費用など、まとまったお金が必要になった際、「自宅をどう活用すれば良いのか?」と悩む方も少なくありません。

自宅は、単なる住まいではなく、現金化できる大切な「資産」です。しかし、活用方法を誤ると「負債」になりかねません。

ここでは、自宅に住み続けながらお金を手にできる、リバースモーゲージやリースバックといった不動産活用術について、その特徴と注意点をご紹介します。

リースバックイメージ

自宅を現金化する2つの方法

自宅を売却せずに、お金を工面する方法として、主に「リバースモーゲージ」と「リースバック」があります。

どちらも自宅を活用して資金を調達する点では同じですが、その内実は大きく異なります。
どちらを選ぶべきか、自分の経済事情や自宅の状況などを踏まえて検討するべきでしょう。

リースバックとリバースモーゲージの違い

リースバック

リースバックとは、自分が所有する不動産を売却した後、同じ物件で賃貸契約を結んで住み続けるサービスです。
リースバックを利用すると、不動産売却で資金調達ができるとともに、引っ越しの手間や環境変化によるストレスを避けることができます。

リースバックの大きなメリットの一つが、まとまった資金をすぐに受け取ることができる点です。また、手にした売却代金の使い道は原則として自由です。

リースバックとよく比較される商品としてリバース60といったリバースモーゲージという選択肢があります。リースバックは自宅を売却することに対して、リバースモーゲージは銀行などの金融機関からお金を借りるという点で異なります。

リバースモーゲージは支払期間中の負担が金利のみで負担が少なくなる代わりに、元本が減らない仕組みです。債務者が死亡した後に債権者である金融機関は担保物件を売却することで債権を回収することができます。

リバースモーゲージ

リバースモーゲージは、自宅を担保にした不動産担保ローンの一種で、毎月の支払いは利子のみ、債務者の死亡後に自宅を売却して元本を返済する仕組みです。自宅に住み続けながら資金調達できるので、老後資金対策として検討する人が増えています。

リバースモーゲージを利用するためには、年齢や年収、家族の同居、資金使途などに一定の制限があります。債務者に配偶者が居り、債務者が先に亡くなってしまった場合でも、自宅をすぐに売却しなければならないわけではなく、配偶者は契約を引き継ぐことで、債務者が死亡した後も引き続き自宅に住むことができます。

リースバックとリバースモーゲージの違い

リバースモーゲージとは、自宅を担保に生活資金を借り入れて自らの持ち家に継続して住み続けられるサービスです。借入人が亡くなったとき、担保としていた不動産を処分して借入金を返済します。

  リースバック リバースモーゲージ
所有権 所有権を手放して賃貸借契約を締結 所有権はそのまま
審査 不動産の価値 不動産の価値+申込者の信用力(高齢者限定)
資金の使い道 使い道は制限されない

使い道は一定のものに制限される

対象となる不動産・エリア

一戸建て・マンション

一定以上の価値が認められればOK

主に戸建て

種類や立地条件の制限が厳しい

毎月の支払い 家賃 利息分
固定資産税 不要 必要

不動産リースバックは「賃貸として自宅を借りる」ことで、若年層から高齢者まで利用できます。一方のリバースモーゲージは高齢者向けで、「自宅を担保にお金を借りる」ローン商品です。

こんな人にリースバックはおすすめ

今すぐまとまった資金が欲しい人

「借金を今すぐ返済したい」「急な病気で長期入院することになった」「事業資金が今すぐ必要」「学校の入学金をすぐに払わなくてはならない」などの理由から、今すぐまとまった資金が必要なときに、リースバックが役立ちます。

リースバックを利用することで不動産の早い現金化が可能です。またリースバックで得た資金使途に制限はありません。
売却でまとまった資金を手に入れたあと、余裕ができてから再び自宅を買い戻すことも可能です。

住宅ローンの支払いを済ませたい人

住宅ローンの支払いが終わらなければ、なかなか生活にゆとりが生まれません。リースバックの場合、住宅ローンが残っていても売却できる可能性があります。

住宅ローンの代わりに家賃を支払う必要はありますが、リースバック後の家賃が住宅ローンの返済額より小額になれば、生活費の負担を軽くできます。また、仮住まいを経ずに新居へ住み替えたいというときには、リースバックによって新居の頭金を調達しながら、仮住まいの問題を解決することも可能です。

住宅の維持費を抑えたい人

自宅を所有していると、固定資産税の負担が気になるところです。さらには、税金だけでなく住宅の管理費や修繕費もかかります。

リースバックでは家賃の支払いが必要になりますが、税金の負担や維持費を加味したとすると、月々の支出を抑えることができるかもしれません。

家を買い替える計画がある人

新居や土地の購入のために資金が必要であるため、自宅を売却しなければならないといった方にも向いています。リースバックを利用すれば、売却後も新居に引っ越すまでは住み続けられるので、スムーズに転居できます。

こんな人にリバースモーゲージはおすすめ

リバースモーゲージは借入金の使用用途を制限されることがほとんどありません。自由にお金を使えることが多いので、以下のような方に特にお勧めです。

健康面で心配な方

重たい病気にかかってしまったり、ケガにより介護が必要な生活になった時の備えとして。
年を取って怖いことの一つが、子供や孫、家族に迷惑をかけてしまうことです。

老後の生活はどうなるのかは予測できません。なので、事態が起こってしまう前に資金の準備をしておけば、家族も自身も安心して暮らす事が出来ます。

介護費用だけではなく、自宅をバリアフリーにしたりするリフォームの費用に使うことも一つの手です。

経済面で不安を感じている方

老後は、今までのように働けなくなったり収入が以前より減少してしまうケースも多いです。そうなると毎月の支払いが重荷になり、負担に感じてしまうと思います。

定年退職後の主な収入は年金です。そうなると、住宅ローンが残っていれば収支のバランスがとれるのか、死ぬまで生活していけるのか不安に思う人にもお勧めです。

リバースモーゲージは、住宅ローンの借り換えも可能です。
何より返済は利息のみですので、支払いの割合でみるとかなり軽減できると思います。

老後も余裕をもって楽しみたい方

ゆとりがあり心にも生活にも余裕を持って第二の人生を楽しみたい!と考えている高齢者の方は多いです。

例えば、今まではずっと仕事中心の生活で中々家族との時間が取れなかったりした方は、このタイミングでゆっくり旅行に行ったり、趣味の時間を満喫したり、家族との時間を大事にしたい方にもお勧めです。

老人ホーム入居を視野に入れている方

老人ホームは費用が思っている以上にかかります。

子供や家族にお金で負担をかけたくない!と思っている方にもリバースモーゲージは最適です。
老人ホーム入居の資金調達にもなるので、経済面の問題を解決でき、不安も解消できます。

まとめ

自宅は、ただ住むだけの場所ではありません。その価値を最大限に引き出すことで、豊かなセカンドライフを送るための大きな力となります。

リバースモーゲージ、リースバック、不動産信託には、それぞれメリットとデメリットがあります。ご自身のライフプランや家族構成、資産状況に合わせて、どの方法が最適かを考えることが重要です。

まずは、不動産会社や金融機関、専門家などに相談し、具体的なシミュレーションをしてみることをお勧めします。自宅を「負債」から「資産」に変える、賢い選択をしましょう。

本記事の内容は、原則、記事執筆日時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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