少子高齢社会で起こる介護問題についての原因と解決策

日本では高齢者人口が急増しており、それに伴い要介護者の数も年々増加しています。
特に、65歳以上の高齢者人口の割合が増加する中で、要介護認定を受ける人々の数は今後も増加し、介護サービスの需要はますます高まると見込まれています。高齢者が増える一方、現役世代の数は増えないため、人材不足からこれまで当たり前のように受けられていた医療・介護のサービスを受けられなくなる可能性があります。

本記事では少子高齢社会が招く、介護にまつわる様々な問題と原因、解決策について紹介していきます。

介護についてのイメージ画像

高齢社会での介護問題とは

少子高齢化が進む現代の日本社会において、どのような介護問題が浮上しているのでしょうか。それぞれの介護問題について詳しく解説していきます。

①介護難民

介護難民とは、介護が必要な「要介護者」に認定されているにもかかわらず、施設に入所できないだけでなく、家庭においても適切な介護サービスを受けられない65歳以上の高齢者を指します。

家族など在宅で介護をする人がいないだけではなく、病院や介護施設でも受け入れてもらえないのが原因です。介護難民になると、要介護者の家族や親族(特に若年者)が仕事を休職もしくは退職し、介護に専念せざるを得ない状態(介護離職)になり、家族全体が経済的に困窮することになります。

②老老介護・認認介護

老老介護とは、高齢者の介護を高齢者が行うことを指します。若い家族が身近にいない、施設に入居する資金がないなど、さまざまな事情で老老介護を行っている世帯が増えています。

老老介護と同様に認認介護も問題視されています。認認介護とは、認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護している状態を指します。

老老介護や認認介護の要因には、以下が挙げられます。

・ 医療の進歩による平均寿命の延長(平均寿命と健康寿命の差の拡大)
・ 核家族化や人口減少などにともなう生活様式の変化

③高齢者虐待

近年、家庭内や介護施設における高齢者への虐待が大きな問題になっています。
特に介護施設の職員による虐待件数は年々増加しており、身体的な虐待、ネグレクト(介護放棄による虐待)、心理的虐待など、さまざまな虐待の事例が報告されています。

介護者側の場合の要因としては、介護疲れなどが、介護者のストレスを増大し、虐待の要因となることがあります。
高齢者側の要因としては、認知症による言動の混乱や身体的自立度の低さ等により、自分の要望をうまく伝えられないことが、結果として虐待の要因となることがあります。

④高齢者の一人暮らし

少子化や核家族化の影響で、一人暮らしの高齢者が増加しています。高齢者の一人暮らしは、突発的なケガや病気による孤独死を引き起こす可能性があり、実際に高齢者の孤独死の数も増加傾向にあります。

⑤成年後見人とトラブル

成年後見人とは、認知症・知的障害・精神障害などを要因とする、判断能力が不十分な方の保護や支援をする人のことです。成年後見人は、判断能力が不十分な方が安心して暮らせるように、契約などの締結や取り消し、預貯金や不動産などの財産管理を行ないます。

ただ、成年後見人に関するトラブルも増加しています。最も多いのは、高齢者の財産などの不正流用があげられます。このようなトラブルを引き起こす原因としては「成年後見人の権限が必要以上に大きすぎること」や「親族後見人などの理解不足・知識不足」といわれています。

介護問題の解決策

①介護難民の現状に対する解決策

海外人材やロボット人材の受け入れ

人材不足解消のために、現在政府は外国人留学生の支援を行い、介護という在留資格で日本に滞在することができるような制度を運用しています。
また、介護ロボットの開発にも力を入れていて、排泄や入浴、そして移動の支援をロボットが担当できるよう、実用化を進めています。

アテンダントの処遇改善

生産人口が減少を続けているなかでも質の高い介護サービスを提供することができるアテンダントを確保しようと、国は一定の基準を満たす事業所に対して「介護職員処遇改善加算」を設けています。
アテンダントの研修に力を入れていたり、能力の高いアテンダントの在籍人数が多い事業所に対して加算を支給することによって、介護業界の働き手確保を推進しています。

老老介護・認認介護に対する解決策

包括支援センターへの相談

包括支援センターは介護予防からケアマネジメントまで包括的かつ総合的な支援を担う施設で、全国の市区町村に設置されています。
地域包括支援センターには保健師、社会福祉士、ケアマネジャーといった専門職が配置されており、相談に対して具体的なアドバイスを提供してくれます。「近いうち高齢者同士の介護になる可能性がある」「親の認知症が心配」など、介護が必要になる前の段階からの相談も可能です。

介護サービスの利用

高齢者が一人で介護を続けていくのは、大きな負担がかかるもの。介護サービスを利用して負担を減らすことが、老老介護による共倒れの予防にもつながります。
介護保険サービスは、要支援・要介護認定を受けた人が受けられるサービスです。65歳以上の高齢者が介護を必要とした場合、1割負担でサービスを利用できます。

施設への入居を検討する

介護者と非介護者、双方の安全を考えると、やはり福祉施設を利用したほうが良いでしょう。すぐに入居を決められなくても、家族とともに施設の入居条件などを調べておくと、いざというときの安心につながります。

③高齢者虐待に対する解決策

高齢者虐待を引き起こす最も大きな原因は、介護職員のストレスといわれています。仕事やプライベートの悩みを抱え、誰にも相談できないままストレスが溜まり、その結果虐待に手を染めてしまうというケースがほとんどです。そのため、職員が日頃の悩みなどを相談できるような雰囲気や機会をつくることが有効な対策です。

④高齢者の一人暮らしに対する解決策

近くに住む

高齢者の一人暮らし対策として、親世帯と子世帯が近くに住む近居です。近居は、住居は異なるものの、日常的に往来が可能な範囲に住むことを指します。

見守りサービス・緊急通報システムを活用する

見守りサービスや緊急通報システムの活用も有効です。何かあった場合に家族に連絡する仕組みを構築でき、安心して暮らしやすくなるでしょう。

見守りサービスにはさまざまなタイプがあります。例えば、自宅にセンサーを取り付けるタイプでは、高齢者の動きを検知し、異常があった時に通知を発信します。

自治体や民間企業による生活支援サービスを利用する

自治体や民間企業では、一人暮らしの高齢者が利用できる生活支援サービスを実施しています。サービス内容としては、配食、見守り、買い物の代行や同行、家事代行、その他さまざまな雑務と、多岐にわたります。自治体のサービスの場合は、地域ごとに内容や料金が異なるため、ぜひ確認してみましょう。

⑤成年後見人とトラブルに対しての解決策

高齢社会の日本においては、成年後見人を必要とする高齢者や成年後見人になる現役世代は確実に増えていくと考えられます。そのため、トラブルを未然に防ぐためには、成年後見人になるための研修を受けて知識を蓄えたり、必要なときにいつでも相談できる窓口を開設したりするなど、行政がバックアップしていくことが重要です。

介護問題についてのまとめ

高齢化社会における介護問題の背景には、高齢者の増加やそれに伴う要介護認定者の増加、介護要員の不足など様々な問題があります。
その中でも最も重視されるべきなのは介護される人以上に介護する側の健康です。介護者が心身ともに健康でなければ、よい介護はできません。介護はときに重労働を強いられることがあります。いかに楽に介護ができるか。その環境を整えることは、特に介護事業者にとって大きな課題になるでしょう。

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