【相続した不動産を売却】相続税に関する注意点を詳しく解説
親や祖父母、兄弟など家族が亡くなると、遺産の相続が発生します。
その際、遺産に不動産が含まれる場合、高額な相続税を支払わなければならないなどと不安に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は不動産を相続した場合に、相続税はどれくらいかかるかなど相続税について解説していきます。
不動産の相続税とは
・不動産を相続した人に、相続の時点でかかる税金は、ざっくり分けると、「相続税」「登録免許税」になります。
・不動産を相続し、そのまま所有する場合には、固定資産税(およびエリアによっては都市計画税)が課税されます。
・相続した不動産を売却する場合、その売却収入から必要経費(取得費および譲渡費用)を差し引いたものは譲渡所得として扱われるため、所得税および住民税が課税されます。
相続税
相続税とは、亡くなった方が生前保有していた財産を引き継ぐ際、財産の価額に応じて課される税金です。
相続税には、基礎控除と呼ばれる非課税枠があり、相続財産の総額が基礎控除額を上回った場合に相続税が課税されます。基礎控除額の計算方法は下記のとおりです。
<相続税における基礎控除額の計算方法>
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば、相続人が配偶者と2人の子であれば、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」です。この場合、相続財産の総額が4,800万円を上回れば相続税が課税されますが、4,800万円以下であれば相続税は課税されません。
登録免許税
登録免許税とは、不動産などの登記手続きを行う際に納める税金のことです。不動産を相続すると、所有者の名義を被相続人から相続人へ変更(相続登記)しなければならないため、登録免許税が発生します。登録免許税の算出方法は下記のとおりです。
<登録免許税の計算方法>
登録免許税=相続登記をする不動産の固定資産税評価額×0.4%
固定資産税(相続した不動産を所有する場合)
固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地、家屋、償却資産を所有している方に所在地の市町村から課せられる税金です。賃貸住宅の用地を含む住宅用地の固定資産税には、課税標準(税率を乗じる金額)から一定額を控除できる特例があります。
所得税・住民税(相続した不動産の売却する場合)
不動産売却の利益は「譲渡所得」に区分され、所得税の対象です。不動産の譲渡所得は、申告分離課税(他の所得と合算せず分離して税額を計算する方法)によって課税されます。譲渡所得は、次の計算式で算出します。
譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除
税率は、所有期間によって異なります。所得税率及び住民税率は以下の通りです。
所得の種類 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
長期譲渡所得 | 5年越え | 15% | 5% |
不動産相続の手続きの流れ
相続税の申告期限と納税期限は、相続開始を知った日(被相続人が死亡した日)の翌日から10ヶ月以内となっていますが、相続放棄などを希望する場合は3か月以内に手続きが必要です。
1.相続する不動産を確認する
亡くなった人が不動産を所有していたら、その不動産の状態、権利関係などを確認します。自宅などに登記事項証明書(登記簿謄本)があれば、それで確認できますが、なければ管轄の法務局で入手して調べることもできます。現在はオンラインでの閲覧や申請も可能です。
2.遺言または遺産分割協議で引き継ぐ人を決める
不動産の所有者(被相続人)が亡くなった場合、まず遺言書があるかどうか確認します。
遺言書が作成されていれば、基本的には遺言書に記載されている内容が優先され、相続の手続きは遺言書の通りに進むことになります。
遺言書がない場合は、相続人による遺産分割協議で遺産の分け方を話し合い、不動産についてもだれが引き継ぐかを決めることになります。
決めた内容に全員が合意したら、それを遺産分割協議書にまとめ、相続人全員の署名・捺印をします。
3.相続登記に必要な書類を収集、作成
不動産を相続する際には、相続登記をすることで被相続人から相続人に名義が変更されます。相続登記には、登記事項証明書など書類がいくつか必要になりますので、事前に準備しておきましょう。
4.管轄の法務局へ申請する
対象の不動産の住所地を管轄する法務局へ行き、不動産登記の窓口を探して、登記申請書と添付書類一式を提出して申請します。登記申請には登録免許税の納付が必要で、先に別の窓口でその分の収入印紙を購入し、申請書に貼り付けて提出します。
不動産の相続税評価額とは
相続税評価額とは、相続税や贈与税を計算するときに基準となる財産価値の評価額です。財産のうち、不動産の評価は、時価ではなく「相続税評価額」が用いられます。土地と建物で評価方法が異なるため、それぞれ正確に把握する必要があります。
また、一定の条件を満たすと評価額を下げることができ、相続税の負担を軽減することができます。
土地の相続税評価額の計算方法
土地の相続税評価額は「路線価方式」または「倍率方式」に基づいて評価されます。
路線価方式
相続税路線価とは、相続税や贈与税を算出するときの目安にされている「1㎡あたりの宅地の価格」のことをいいます。
そして、道路ごとに付けられた値段をもとに、土地の評価額を割り出す方法を「路線価方式」と呼びます。
路線価は毎年7月初旬頃に国税庁が「財産評価基準書」にて発表しています。
土地の相続税評価額は、土地の面積に路線価を乗じ、さらに形状や奥行きなどに応じた補正率を掛けて算出します。
土地の相続税評価額=路線価 × 土地の面積 × 補正率
たとえば、路線価が30万円、土地の面積が100㎡の場合、
30万円 × 100㎡ = 3,000万円が基本となる評価額となります。
倍率方式
郊外や地方など路線価が設定されていない地域では、「倍率方式」により評価されます。この場合は、固定資産税評価額に国税庁の定める「評価倍率」を掛けて評価額を算出します。
土地の相続税評価額=固定資産税評価額 × 評価倍率
たとえば、固定資産税評価額が1,500万円、倍率が1.1の土地の場合、
1,500万円 × 1.1 = 1,650万円が相続税評価額になります。
不動産の相続についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので参照してください。
不動産を相続したら相続税はいくらかかる?かかる場合とかからない場合はどんなケース?
まとめ
不動産を相続した後、かかるのは相続税だけではありません。固定資産税や所得税などが課税される可能性もあります。将来的に不動産を相続する(相続させる)可能性がある場合、あらかじめ対策を講じておくことは大切なことです。
相続における不動産評価のしくみなどについて知り、前もってどのような対策を講じれば負担を減ずることができるか、家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。