墓じまい? 樹木葬? 永代供養? 知っておきたい「新しいお墓」の選び方
「先祖代々のお墓を、子供たちに継がせるのは申し訳ない」 「自分たちが入るお墓、もっと自然に還るような形がいいな」
少子高齢化や核家族化が進む現代、お墓に対する考え方は劇的に変化しています。かつては当たり前だった「◯◯家之墓」という石のお墓を継承していくスタイルが、現実的に難しくなっている家庭が増えているからです。
そこで注目されているのが、「墓じまい」や「樹木葬」「永代供養墓」といった新しい選択肢です。
しかし、言葉は聞いたことがあっても、それぞれの違いやメリット・デメリット、費用感を正しく理解している人は意外と少ないものです。 「安易に樹木葬を選んで後悔した」「墓じまいで親戚と揉めた」というトラブルも後を絶ちません。
この記事では、後悔しないお墓選びのために知っておくべき「新しい供養のカタチ」の基礎知識を、分かりやすく解説します。
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1. まず整理しよう! 言葉の定義と違い
よく混同されがちなキーワードを整理します。これらは対立するものではなく、組み合わせるものです。
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墓じまい(改葬): 今あるお墓を撤去・処分し、遺骨を取り出して別の場所(新しい供養先)へ移すこと。
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永代供養(えいたいくよう): 遺族に代わって、霊園や寺院が遺骨を管理・供養してくれる「仕組み」のこと。
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樹木葬・納骨堂・合祀墓: 永代供養がついたお墓の「種類(スタイル)」のこと。
つまり、「墓じまい」をして取り出した遺骨を、「永代供養」付きの「樹木葬」に移す、といった使い方が一般的です。
2. 人気No.1「樹木葬」の魅力と注意点
いま、最も選ばれている新しいお墓のスタイルが「樹木葬」です。墓石の代わりに樹木や花をシンボルにします。
メリット
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自然に還れるイメージ: 「死後は土に還りたい」という願いを叶えられます。
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費用が安い: 墓石を建てないため、一般的なお墓(150〜200万円)に比べて、10万〜70万円程度と安価です。
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継承者不要: 基本的に永代供養がついているため、子供に管理の手間をかけません。
注意点(ここが重要!)
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「土に還らない」タイプもある: 骨壷のままコンクリートのカロート(納骨室)に入れるタイプの場合、数十年経っても土には還りません。
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個別の場所は期限付き: 「最初の13年(または33年)は個別の区画、その後は他人の骨と一緒に合祀(ごうし)される」という契約が一般的です。
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場所が分かりにくい: 自然に近い形だと、数年後に「どこに埋めたか分からない」となり、お参りしにくくなるケースがあります。
3. 天候知らずで快適「納骨堂」
都市部で増えているのが、屋内にお墓を持つ「納骨堂」です。ロッカー式や、カードをかざすと遺骨が運ばれてくる自動搬送式などがあります。
メリット
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アクセス抜群: 駅近の施設が多く、高齢になってもお参りに行きやすいです。
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天候に左右されない: 雨の日でも暑い日でも、快適にお参りできます。掃除も不要です。
注意点
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建物の老朽化リスク: 数十年後に建物が建て替えられる際、どうなるのか確認が必要です。
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機械トラブル: 自動搬送式の場合、お盆などの混雑時に待ち時間が発生したり、故障のリスクがあります。
4. 費用を極限まで抑える「合祀墓(ごうしぼ)」
最初から骨壷から遺骨を取り出し、他の方の遺骨と一緒に大きな供養塔などに埋葬する方法です。
メリット
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圧倒的な安さ: 1体あたり3万〜10万円程度で済みます。
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管理の手間ゼロ: 埋葬後は完全に寺院・霊園にお任せになります。
注意点
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取り出し不可能: 一度混ざってしまった遺骨は、二度と取り出せません。「やっぱり個別にしたい」と思っても手遅れです。親族の理解を得るのが最も難しいスタイルでもあります。
5. 「墓じまい」をスムーズに進める3ステップ
新しいお墓(引越し先)が決まったら、今あるお墓を閉じる「墓じまい」の手続きが必要です。これは単なる撤去工事ではなく、行政手続きを伴います。
ステップ①:親族間の合意形成(最重要)
トラブルの9割はここで起きます。「長男の俺に相談なく勝手に決めた」「罰当たりだ」と猛反発されることがあります。 必ず関係する親族全員に、「なぜ墓じまいをするのか(維持が困難であること)」を丁寧に説明し、理解を得てください。
ステップ②:新しい受入先の確保
引越し先(樹木葬や納骨堂など)を契約し、「受入証明書」を発行してもらいます。
ステップ③:行政手続きと工事
現在のお墓がある自治体で「改葬許可証」を発行してもらい、石材店に依頼してお墓を撤去・更地にして返還します。 撤去費用の相場は、お墓の広さや立地(重機が入れるか)によりますが、30万〜50万円程度が一般的です。
まとめ:お墓は「残された人のための場所」
お墓選びで最も大切な視点は、「誰が、どのようにお参りするか」です。
「安くて手間がかからないから」という理由だけで選ぶと、「手を合わせる対象がなくて寂しい」と残された家族が後悔することもあります。逆に、立派なお墓を建てても、子供が遠方にいて誰も来なければ荒れ放題になってしまいます。
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子供たちの負担にならないか?(永代供養・立地)
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予算に見合っているか?(初期費用・管理費)
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親族の気持ちは納得しているか?(合祀のタイミングなど)
この3つのバランスを考えながら、家族みんなで話し合うことが、後悔しない「終活」の第一歩です。
