履歴書の「職務経歴」はどこまで書く? シニア採用で重視されるポイント
長年、企業戦士として働いてきたあなたには、誇るべき40年以上のキャリアがあります。 しかし、いざシニア採用に向けて履歴書や職務経歴書を書こうとすると、ある壁にぶつかります。
「昭和の新人時代から全部書くべきか?」 「管理職としての実績をアピールしたいが、自慢話に見えないか?」
実は、シニアの応募書類において「書きすぎ」は「書かなさすぎ」と同じくらいのリスクがあります。採用担当者が知りたいのは、「あなたが過去にどれだけ偉かったか」ではなく、「今のあなたがうちの会社で何をしてくれるか」だからです。
この記事では、膨大なキャリアをどのように整理し、どこを強調すれば採用担当者の心を掴めるのか、シニア採用に特化した「職務経歴書の書き方」を解説します。
![]()
1. 職務経歴書は「自分史」ではなく「プレゼン資料」
まず、マインドセットを変える必要があります。 多くのシニアが陥る失敗は、職務経歴書を「自分の人生の記録(自分史)」だと思ってしまうことです。入社した1980年代の新人研修から、係長昇進、課長昇進……と、全ての異動とプロジェクトを時系列で羅列してしまうのです。
しかし、採用担当者が1人の書類に目を通す時間は、わずか数分(時には数十秒)と言われています。 A4用紙で5枚も6枚もある経歴書は、読む前に「要領が悪そう」「こだわりが強そう」というネガティブな印象を与えかねません。
職務経歴書は、「私は御社で役に立ちます」と売り込むためのプレゼン資料(カタログ)です。相手(応募先企業)が必要としている情報だけをピックアップし、見やすく加工する技術が求められます。
2. どこまで書く? 「直近10年」を厚くする法則
では、具体的に40年の歴史をどう圧縮すればよいのでしょうか。 基本のルールは「遠い過去はあっさり、直近は詳しく」です。
① 20代〜30代の頃(〜2000年代前半)
【書き方:要約・箇条書き】 新人時代や若手時代の実績は、今のあなたの能力を測る上ではあまり重要ではありません。 部署名や担当業務を1〜2行でさらりと書くに留めます。「〇〇システム導入プロジェクトリーダー」など、大きなトピックがあれば一行加える程度で十分です。
② 40代〜50代前半(管理職時代)
【書き方:実績とマネジメント経験】 ここも、羅列するのではなく「何をしてきたか」を要約します。 「部長職」などの肩書きだけでなく、「部下〇名の育成」「コスト〇%削減」といった具体的な数字を入れましょう。ただし、応募先が「現場スタッフ」を求めている場合は、管理職アピールをしすぎると「使いにくい」と思われるので注意が必要です。
③ 直近5年〜10年(定年前後)
【書き方:詳細にアピール】 ここが最重要パートです。 採用担当者は、「今のあなたに何ができるか(体力、スキル、IT適応力)」を見ています。
-
最新の業務でどのようなツール(Excel、Zoom、Slackなど)を使っていたか。
-
再雇用期間中にどのような実務を担当していたか。 これらを具体的に書くことで、「現役感」を伝えます。
3. シニア採用担当者が「本当に見ている」3つのポイント
若い世代の採用では「ポテンシャル(将来性)」が見られますが、シニア採用では全く別のポイントが重視されます。職務経歴書には、以下の3つの要素を盛り込む必要があります。
ポイント①:過去の「肩書き」より、現在の「実務能力」
「元部長」という事実は、応募先の仕事内容とマッチしない限り、プラスにはなりません。むしろ「プライドが高そう」と敬遠される原因になります。
アピールすべきは、「プレイヤーとして何ができるか」です。
-
「クレーム対応で培った傾聴力」
-
「若手社員のメンターとして相談に乗れる包容力」
-
「Word・Excelでの資料作成能力」
このように、現場で手を動かせるスキルを強調しましょう。
ポイント②:新しい環境への「柔軟性(アンラーニング)」
シニア採用で最も恐れられるのは、「前の会社ではこうだった」と自分のやり方を押し通すことです。 自己PR欄や経歴の補足として、以下のようなニュアンスを盛り込みます。
「長年の経験はありますが、それに固執せず、御社のやり方を一から素直に学ぶ所存です」 「新しいITツールなども、積極的に習得していきたいと考えています」
この「謙虚さ」と「学習意欲」が文章から滲み出ていると、採用確率はグッと上がります。
ポイント③:長く働ける「健康」と「勤怠の安定性」
シニア雇用において、健康面は大きなチェックポイントです。 持病がなく健康であるなら、それは立派なスキルです。
「過去〇年間、無遅刻無欠勤でした」 「毎朝のウォーキングを日課にしており、体力には自信があります」
こうした一文があるだけで、採用側の「すぐ休むのではないか?」という不安を払拭できます。
4. 職務経歴書の構成テクニック
40年のキャリアをスッキリ見せるための、具体的な構成案を紹介します。
冒頭に「職務要約(サマリー)」を入れる
これが一番のコツです。 経歴書の冒頭に、5〜6行程度でこれまでのキャリアをダイジェストで書きます。
【職務要約】 大学卒業後、株式会社〇〇にて38年間、主に法人営業と営業事務に従事してまいりました。 支店長職も経験しましたが、直近5年間は再雇用にて現場の若手育成と営業サポート業務を行っております。 Word、Excelを用いた資料作成や、顧客対応業務を得意としております。
採用担当者は、ここを読むだけであなたの全体像を把握できます。ここで興味を持ってもらえれば、その下の詳細も読んでもらえます。
「活かせる経験・スキル」の欄を作る
時系列の経歴とは別に、スキルを箇条書きにする欄を設けます。
-
PCスキル: Word(文書作成)、Excel(関数・ピボットテーブル)、PowerPoint(プレゼン資料作成)
-
保有資格: 普通自動車第一種運転免許、日商簿記2級
-
得意分野: 顧客折衝、新人教育、業務改善提案
このように項目化されていると、一目で「使える人材」だと判断できます。
5. 書いてはいけない「NGワード」
良かれと思って書いたことが、逆効果になることがあります。以下の表現には注意しましょう。
-
専門用語の多用: 異業界に応募する場合、社内用語や業界用語は通じません。「誰にでもわかる言葉」に翻訳して書きましょう。
-
「マネジメント経験豊富」の強調: 募集職種が「管理職」でない場合、このアピールは逆効果です。「現場の仕事はしたくないのか?」と思われます。「プレイングマネージャーとして現場にも立っていた」という書き方に変えましょう。
-
「何でもやります」: 一見謙虚ですが、主体性がないと取られます。「〇〇の経験を活かして貢献したいですが、未知の業務にも積極的に取り組みます」と、軸を持たせた上で柔軟性を示しましょう。
まとめ:経歴書は「引き算」の美学
シニアの職務経歴書作りは、「引き算」の作業です。 輝かしい過去の実績をあえて削ぎ落とし、相手が求めている「今の自分」だけを残す。 その潔さが、書類全体の風通しを良くし、「この人なら一緒に働きやすそうだ」という好印象を生みます。
あなたの40年の重みは、書類に全て書かなくても、面接での立ち居振る舞いや言葉の端々に必ず滲み出ます。 まずは書類選考という「チケット」を手にするために、シンプルで相手想いな職務経歴書を作成してみてください。
