定年前の「キャリアの棚卸し」で強みを発見! 専門家が教える自己分析法

「定年後、会社の名刺がなくなったら、自分には何が残るのだろう?」

ふとそんな不安に駆られることはありませんか。 長年、組織の一員として懸命に働いてきた人ほど、自分の価値を「会社の看板」や「役職」とセットで考えてしまいがちです。

しかし、あなたの中には、会社という枠組みを超えても通用する「ポータブルスキル(持ち運び可能な能力)」や、自分でも気づいていない「強み」が必ず眠っています。

それを見つけ出す作業こそが、「キャリアの棚卸し」です。

これは単なる「職務経歴書の準備」ではありません。これからの人生を、自信を持って、自分らしく生きるための**「宝探し」**です。 この記事では、キャリアカウンセリングの現場でも使われる手法を元に、定年前の今だからこそやるべき「正しい自己分析法」を解説します。

1. なぜ、定年前に「棚卸し」が必要なのか?

「定年してからゆっくり考えればいい」と思っていませんか? 実は、在職中の今こそがベストタイミングなのです。その理由は3つあります。

① 「記憶」が鮮明なうちに記録する

人の記憶は驚くほど早く薄れます。具体的なプロジェクトの苦労話や、どんな工夫で乗り越えたかというエピソードは、現場を離れると急速に思い出せなくなります。 この「具体的なエピソード」の中にこそ、あなたの強みが隠されています。

② 「会社評価」と「市場価値」のズレを修正する

会社では「部長として部署をまとめたこと」が評価されますが、一歩外に出れば「部長」という肩書きに価値はありません。 社外で評価されるのは、「部下の不満をどう吸い上げたか」「トラブル時にどう判断したか」という個人の行動特性です。この視点の切り替えには時間がかかるため、早めの準備が必要です。

③ 自信を取り戻す(アイデンティティの再構築)

「自分は大したことをしてこなかった」と謙遜するシニアが多いですが、棚卸しをすると「私、意外と頑張ってきたじゃないか」と気づけます。 この自己肯定感こそが、定年後の喪失感(燃え尽き症候群)を防ぐ最大の防波堤になります。


2. 陥りがちな「間違った棚卸し」

多くの人がやりがちな失敗例があります。それは、「配属履歴」を羅列するだけの棚卸しです。

  • × ダメな例:

    • 1990年 営業部に配属

    • 2000年 課長に昇進

    • 2010年 総務部長に就任

これでは、ただの「社史」です。ここからは「あなた個人」が見えてきません。 採用担当者や、これから出会う仲間が知りたいのは、「あなたがそこで何を考え、どう動いたか」というプロセスです。


3. 専門家流! 強みを発掘する「2つの軸」

では、どのように書き出せばよいのでしょうか。キャリアの専門家は、経験を以下の2つの軸で分解することを勧めます。

軸①:CAN(できること・スキル)

これはさらに2つに分けられます。

  1. 専門スキル(テクニカルスキル):

    • 経理知識、プログラミング、フォークリフト免許、語学など。

    • 目に見えやすく、資格などで証明しやすいものです。

  2. 対人・思考スキル(ポータブルスキル):

    • こちらが重要です! どの業界でも通用する能力です。

    • 調整力、傾聴力、新人教育、論理的思考、ストレス耐性、段取り力など。

シニア世代がアピールすべきは、若手が持っていない「対人・思考スキル」です。 「長年のクレーム対応で培った、相手を怒らせずに話を聞く技術」などは、接客業や相談業務において最強の武器になります。

軸②:WILL(やりたいこと・価値観)

「できること」だけでなく、「やっていて楽しかったこと」を思い出します。

  • 「大きなプロジェクトを動かすより、後輩の相談に乗っている時の方が充実していた」

  • 「営業成績を競うより、顧客のための資料を作っている時間が好きだった」

この「好き」「充実感」の記憶の中に、定年後の仕事や趣味選びのヒントが隠されています。


4. 実践! 強みをあぶり出す「エピソード分析シート」

ここからは具体的なワークです。紙とペン(またはPC)を用意してください。 あなたの40年の中から、「特に苦労したこと」「頑張ったこと」を3つ選び出し、以下のフレームワークで書き出してみましょう。

【STAR分析法(簡易版)】

  1. Situation(状況): どんなトラブルや課題があったか?

  2. Task(役割): そこで自分は何を求められたか?

  3. Action(行動): 【重要】そこで具体的に何をしたか? 工夫したことは?

  4. Result(結果): どうなったか? 学んだことは?


【記入例:総務部での経験】

  • 状況: オフィスの移転プロジェクト。部署間の利害が対立し、日程が遅れそうになった。

  • 役割: プロジェクトリーダーの補佐。

  • 行動(ここが強み):

    • 反対する部署の課長の元へ何度も足を運び、愚痴を聞きながら妥協点を探った(=粘り強い交渉力)。

    • 全社員向けに、移転のメリットを伝えるわかりやすいマニュアルを作った(=情報の言語化能力)。

  • 結果: 予定通りに移転完了。「あなたがいて助かった」と言われた。

<分析結果> この人の強みは「総務の知識」だけではありません。「対立を調整する力」「相手に寄り添うサポート力」です。 → これなら、マンション管理員や、福祉施設の相談員としても活躍できそう! という仮説が立ちます。


5. 「当たり前」の中にこそ「宝」がある

自己分析をしていると、「こんなの、会社員なら当たり前だ」と思ってしまうことがあります。 例えば、「毎朝30分早く来て掃除をしていた」「納期を一度も遅らせたことがない」。

しかし、フリーランスやアルバイトの世界では、この「当たり前を継続する力(誠実性)」こそが、得難い才能として高く評価されます。

  • 誰にでも挨拶ができる → マンション管理人として最高のスキル。

  • 誤字脱字にすぐ気づく → Webライターや校正者としての適性。

  • 人の話を聞くのが苦じゃない → 傾聴ボランティアやメンターとしての才能。

自分にとっての「普通」は、他人にとっての「非凡」かもしれません。ハードルを下げて、小さなことでも書き出してみましょう。


まとめ:過去の棚卸しは、未来への「仕入れ」

定年退職は「終わりの始まり」ではなく、「新しい自分へのバトンタッチ」です。

キャリアの棚卸しを通じて、「自分にはこんな武器(スキル)がある」「こんな想い(価値観)がある」と再確認できれば、これから進むべき道が自然と見えてきます。

再雇用で会社に残るにしても、転職するにしても、あるいは趣味に生きるにしても。 「私はこれができます」「私はこれが好きです」と言える自分であること。それが、定年後の人生を豊かにする一番のパスポートになります。

今週末、お気に入りのコーヒーでも淹れて、昔の手帳を開いてみませんか? そこには、あなたが懸命に生きてきた証と、未来へのヒントが詰まっています。

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