都内のマンションで空き家が急増中!相続したくない場合の対処法とは?
マンションを相続したくない場合、贈与や相続放棄などご状況にあわせた解決方法を検討できます。資産価値が下がると売却しにくくなるため、早期に手続きを開始することが大切です。
日本全国で社会的な問題となっている「空き家」ですが、過疎地にあるような住まいばかりが空き家になっているわけではありません。実は、不動産が高騰し人口も増加している東京都内でも、マンションの空き家は急増しています。
なぜ資産価値がある都内のマンションが空き家となってしまっているのでしょうか。その背景には「相続」があると考えられます。そこで、本記事では都内の空き家マンションに注目し、相続をしたくない理由や対処法を詳しく解説します。
都内のマンションが空き家になってしまう理由とは
地方の過疎地にある不動産と比較すると、人口の多い都内におけるマンションは資産価値が高く、相続時には大切に承継したいと考えるものです。しかし、実際には都内のマンションが空き家状態になってしまうケースが増加しています。
総務省が実施した「住宅・土地統計調査」における、令和5年住宅・土地統計調査 東京都の概要(住宅数確報集計)を見てみると、都内の空き家や建築中の住宅などの「居住世帯のない住宅」は 966,000 戸で、総住宅数の11.8%であり、そのうち「空き家」は 896,500 戸で、「空き家率」は10.9%となっています。平成30年と比較すると、「空き家」は86,600 戸(10.7 %)増加し、「空き家率」も10.6%から増加しています。
なぜ人口が多く、不動産価値の高い都内で空き家マンションが発生してしまうのでしょうか。実は相続時に、売却などの処分ができず空き家化する現象が多いと考えられています。理由は以下の3つです。
相続の際に売却や活用が困難で放置される
都内でも利便性が低い郊外や築年数の古いマンションは、購入や賃貸のニーズに合わず売却も活用も困難な状態に陥りやすくなります。相続を機会に住人がいなくなり、相続人が売却などを検討してもうまく進まず、結果として放置されてしまうケースが少なくありません。
設備が古い場合はリノベーションが必要となる場合も多く、費用負担の大きさも空き家の原因と考えられています。
思い出の住まいは売却・賃貸にしにくい
相続時にマンションに暮らす人がいなくなっても、家族の思い出が詰まった家を手放すことへの抵抗感や、管理の責任から売却や賃貸化はせずにそのまま放置してしまうケースもあります。
空き家のゆくえが決まらないまま、相続人が亡くなり所有者不明の状態に陥るケースも見られます。
遺品整理などが難航し放置される
高齢の父母の死去によってマンションを相続する際には、すでに子も高齢になっており、マンション内の遺品整理が進まないケースもあります。特に高層マンションは荷物やごみの整理に苦労を感じやすく、放置されてしまうのです。
相続後にマンションを空き家のまま放置するデメリットとは
相続後にマンションを空き家のまま放置することは、デメリットも生じることをご存じでしょうか。処分をしないと固定資産税が発生し、経済的な負担が増加してしまいます。また、法的責任を問われる可能性や、近隣住民とのトラブルに発展するリスクもともないます。以下に主なデメリットを解説します。
税負担や管理負担が増えてしまう
空き家であっても、マンションを所有している限り「固定資産税」や「都市計画税」が 課税されます。特に、適切な管理が行われていないと判断され「特定空き家」に指定された場合は固定資産税が最大で6倍になる可能性があります。
さらに、マンションの場合は居住者がいなくても管理費や修繕積立金が発生します。これらの費用も相続人にのしかかってくるため、重い負担に感じる人も少なくありません。
法的なリスクが増える
不動産の所有者には、その物件を適切に管理する責任があります。空き家の管理を怠った結果、マンションの他の住人やオーナーに損害を与えた場合、損害賠償責任を問われる可能性があります。
また、空き家が不衛生な状態になると、悪臭の発生や害虫・害獣が発生してしまい、近隣住民とのトラブルにつながる可能性も高まります。さらに、放置された空き家は不審者の侵入や犯罪の温床となる可能性も高く、法的なリスクも増えてしまいます。
資産価値が低下する
もしも相続したマンションについて、適切な管理を行わないまま放置してしまったら老朽化が進み、資産価値が大幅に下落してしまいます。管理されていない物件は売却しにくくなるため、次の相続にも影響するおそれがあります。
マンションを相続したくない!おすすめの対処法とは?
立地や築年数、管理状況によっては相続したマンションが必ずしも「おいしい」財産とは限りません。むしろ、管理費や修繕積立金、固定資産税などの維持費が重くのしかかり、空き家のまま放置せざるを得ない状況に陥るケースがあります。
マンションを相続したくないと考えているなら、放置することは決して最善の策ではありません。そこで、マンションを相続したくない場合の対処法を相続前、相続開始後に分けてご紹介します。
相続前にできる対処法
相続が発生する前に手を打つことで、不要なマンションの相続を回避できる可能性があります。
生前贈与を検討する
マンションを次の世代の家族が管理・売却をしやすくするために、生前贈与を検討します。ただし、贈与には贈与税が発生するため、相続税のシミュレーションと合わせて行うことが大切です。
贈与するマンションを賃貸化した場合、贈与後の収益は受贈者のものとなるため相続税対策の効果が高まります。
遺言書で明確な意思表示をする
相続後にマンションの管理や処分をめぐって相続人が争うおそれがある場合は、遺言書で誰に相続させるか書いておくことがおすすめです。
生前に売却・賃貸化する
自身が元気なうちにマンションを売却し、現金化しておくという方法もあります。一般的にマンションは古くなると資産価値が下がるため、早めに処分することで得られる売却益も大きくなります。また、高齢者施設への入居などのタイミングでマンションを賃貸物件化することもおすすめです。賃料が入るため、安定した収入を得られるメリットもあります。
相続開始後にできる対処法
相続が発生した後でも、不要なマンションを手放すための方法はあります。
相続放棄をする
相続放棄とは、一切の財産と債務を放棄する手続きです。マンションだけでなく、預貯金などのプラスの財産も放棄することになるため、慎重な判断が必要です。不要なマンションの管理義務や税負担から解放されるため、絶対にマンションを相続したくない人や、相続人に財産がなく、マンションも不要の際におすすめの方法です。
相続放棄をすると、基本的に相続税はかかりません。生前贈与を受けていても相続放棄が可能です。(※「相続時精算課税制度」を利用時は税理士へ要相談)
死亡保険金などのみなし相続財産は相続放棄をしても受け取れますが、死亡保険金の非課税枠の適用は受けられないため相続税が課税される可能性が高くなります。
売却する
遺言書がなく、複数の相続人がいる場合は相続人全員で合意し、相続したマンションを売却して、その売却代金を相続人間で分割する方法も考えられます。この方法は「換価分割」と言います。ただし、古いマンションは売却しにくいため、換価分割に時間を要するおそれがあります。
マンション相続時は共有名義の相続は回避しよう
相続人が誰も被相続人所有のマンションを相続したくない場合、一旦共有名義で相続し、その後、共有者間で協議してマンションの処分方法を決める方法も考えられます。
しかし、共有名義は将来的にトラブルとなる可能性が高いため、なるべく回避することがおすすめです。特に空き家状態でその後も放置する場合、管理責任が曖昧になってしまうため注意が必要です。
また、将来的に売却や賃貸物件化する場合は共有者全員の同意が必要となり、手続きが煩雑になりやすく、さらなる相続の発生で権利関係が複雑化するリスクも高くなります。できる限り共有名義は避け、早期に具体的な処分方法を決定することが望ましいでしょう。
まとめ
マンションを相続したくない場合、生前からできる対策があるためご家族が協力し合って方針を決めることが大切です。時に古い物件は売却に時間を要することが多く、早期に手続きを開始することが望ましいでしょう。
相続開始後にマンションを相続しないと決めた場合は、相続放棄などが検討できますが、被相続人の資産状況なども分析しながら決めることが大切です。
不動産には相続税以外にも、固定資産税などの税金も発生します。税負担も維持には必要となるため、早めに税理士をはじめとする専門家へ相談することがおすすめです。